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12 2019

ダン・スロット&ジュゼッペ・カムンコリ他/スーペリア・スパイダーマン:ノー・エスケープ

スーペリア・スパイダーマンノー・エスケープ表紙

『ピーター・パーカーの精神を
 死に瀕した自分の体に幽閉した時は究極の勝利を得たと思った。
 だがやがて、私自身も幽閉されているのだと悟った。
 奴の生活に…数え切れない限界やしがらみに。
 奴の記憶を疑似体験してしまった今、
 スパイダーマンの力に伴う責任から逃げる事はできない。
 ただし、パーカーの戦い方まで踏襲する理由はない。
 奴は自己嫌悪の念から、無益な苦行に耽っていた。
 それはある種、利己的な行為だったと言える。
 私は頭脳の片隅に残っていたパーカーの人格を消去し、
 不合理な戦い方を見直して万事を効率化した。
 数千のスパイダーボットを量産し、
 私独りでは目が届かない街の隅々まで常時監視させている。
 そして、何十人もの市民を殺戮する凶悪犯罪者に対しては断固たる措置を執った。
 当然の事だ。今の私は、以前のパーカーとは違う。
 より優れたスーペリアスパイダーマンだ。束縛はされない』


THE AMAZING, THE SUPERIOR, THE EXTREME SPIDER-MAN!

不倶戴天の宿敵スパイダーマンことピーター・パーカーの肉体と記憶を奪ったオットー・オクタビアスは、ピーターの高潔さに打たれ、スパイダーマンの任務を引き継ぐことを決意する。

だが、自らの優位性を示さずにはいられないオクタビアスは、より優れたスーペリアスパイダーマンとして、冷徹なまでの過酷さで犯罪撲滅に邁進する。

スパイダーマンの変貌に周囲が戸惑う中、かつての“宿敵”である現ニューヨーク市長、J・ジョナ・ジェイムソンは急速にスパイダーマンとの仲を深めていくが……。

ヒーローとビランを区別するものとは何なのか?シリーズ第3弾!


◆収録作品

2013年08月:Superior Spider-Man #11
2013年08月:Superior Spider-Man #12
2013年09月:Superior Spider-Man #13
2013年09月:Superior Spider-Man #14
2013年10月:Superior Spider-Man #15
2013年10月:Superior Spider-Man #16


◆関連作品過去記事
【スーペリア・スパイダーマン:ワースト・エネミー】
【スーペリア・スパイダーマン:トラブル・マインド】

◆GOBILIN FALLS
あのDr.オクトパスことオットー・オクタビアスがスパイダーマンに成り代わってしまう衝撃シリーズの邦訳第3巻!!
前巻でオクタビアスは自身の意識の底にピーター・パーカーが未だ残っている事をとうとう察知し、精神世界でパーカーと対決。そしてパーカーの記憶と人格を完全に消し去る事に成功する。
これで完全にオクタビアスはピーターの体を自分のものにしたわけで、もうピーターが無意識下に働きかけて彼の行動を抑えてしまうという事も無くなってしまった。
言うなれば、この第3巻が真の意味で『スーペリア・スパイダーマン』の物語のスタートともいえる内容です。
それじゃあ、ますます過激さを増していくスーペリア・スパイダーマンの本書の内容をそろそろ紹介。

前半は表題にもなっている『ノー・エスケープ』というエピソード。
J・ジョナ・ジェイムソン市長の妻マーラをも殺害した死刑囚のビラン、スパイダースレイヤーことアリステア・スマイスが最高警備収容施設ラフトにてついに刑を執行されるというところから始まります。
(マーラが死亡したのはスーペリア・スパイダーマン誌ではなく、『アメイジング・スパイダーマン』誌#652-654の頃のお話)

ジェイムソンはスパイダースレイヤーは確実に脱走を企てると予見し、スパイダーマンを呼び出しラフトでの執行に立ち会わせる。
そして案の定スパイダースレイヤーは脱走を実行したため、オクタビアスはジェイムソンや同席した人々を守りながら事態の収集に動き出す……という内容です。

オクタビアスにより瀕死の重傷を追ったブーメランや、下顎を完全に砕かれたスコーピオン視力を奪われ全身に創傷を追ったバルチャーと、スパイダーマンに強い恨みを持つに至ったビラン達との再戦が盛り込まれているのもポイントですが、それ以上に凄まじいのが、妻を殺された恨みからジェイムソンがスパイダーマンに正当防衛以上の事を要求し、オクタビアスもこの言葉が出てくる事を期待していたというシーン。
また、人質を助けるためにスパイダースレイヤーの脱走を許すか、人質を見捨ててでも二度とスパイダースレイヤーが罪を犯せないようこの場で始末するべきかという選択を迫られた時でも『即始末を選択する』という冷徹さも見逃せない。

人の命と悪人の処刑選択するのは

ここからさらに一捻りを加えた展開が入り、この事件解決の際にオクタビアスが取った行動も、全てスーペリア・スパイダーマンの時代を作るための足がかりに過ぎないというのが空恐ろしい。
次のエピソード『見えざる目』では『ノー・エスケープ』編を通してジェイムソンとの強いパイプを持つに至り、『市当局の援助』を受けて巨大ロボといった強力な兵器、そして忠実な私兵『スパイダーリングズ』たちをも手に入れて、ピーター・パーカーがスパイダーマンだった頃にはありえない手段でどんどん犯罪の中枢部となる場所を叩き潰していく。
オクタビアスをヒーローとして突き動かす原動力は結局のところ強すぎる自己顕示欲にすぎないのだけれど、少なくとも街の平和にはきちんと繋がっているのがまたなんとも。

そして最後に収録されているエピソードは『逃げろ、ゴブリン!』
前々からちょこちょこ登場していたビランの7代目ホブゴブリン、フィル・ユーリックととうとう対決する展開です。
ちなみにフィルはデイリー・ビューグルの記者として昔から顔を出しているあのベン・ユーリックの甥っ子でもあります。
このフィルはどうにも小悪党気味なキャラクターで、ホブゴブリンとして活動しつつ、ジャーナリストとしてデイリー・ビューグルで使える映像を撮影していたり、初代ホブゴブリンに名前と装備を使わせてもらっている分の上納金や、装備の修理を営むティンカラーからの請求に苦しんでいたり(犯罪を犯すのもこれらの資金繰りに悩んでの行動だったりする)と、なんとも哀愁を感じるビランだったり。

しかもフィル、1995年にコミックでデビューした時はヒーローであり、すぐさまオンゴーイングシリーズとなる『グリーン・ゴブリン』誌まで与えられていたというのだから驚き。なんつう高待遇……!!
【Green Goblin Vol 1 | Marvel Database | FANDOM powered by Wikia】

しかし結局キャラとしての人気は出ずシリーズはすぐに終了。その後は『ランナウェイズ』誌に登場するも反響は得られず、久々に『アメイジング・スパイダーマン』誌に登場した頃にとうとうビランになっちゃってたりで色々散々な扱いではある。
本作ではキングピンの右腕として働いていた経歴が仇となり、キングピンに対して恨みを持つ技術者の悪人タイ・ストーンにハメられてスーペリア・スパイダーマンの標的になってしまい、彼の手によって街中の人々に正体を晒されるという最悪すぎる追い詰められ方をするのだから見ててちょっと辛くなった。

フィル=ホブゴブリンである事を街中に知らせる

何度も罪を重ねてきたビランであるオクタビアスが今や街中の人々から支持されるヒーローとなり、一方でヒーローとして活動してきたはずなのに(リアルに不人気なキャラ)という事でビランに落ちぶれてしまったフィル。
なんとも対象的で皮肉めいた構図となっており、『スーペリア・スパイダーマン』でダン・スロットが書く物語は本当に尖りつつも惹きつけられるものがありますね……。

◆感想
めちゃくちゃ面白かった!!!!!
結果だけ見ればオクタビアスは間違いなくヒーローとしてちゃんとした功績を残しているのだけれど、彼のその心の内や行動の裏側を読者だけは知っていて、改めて『ヒーローがヒーローたる条件とは何なのか?』というテーマを突きつけてくる脚本が実に上手い。
「大いなる力には大いなる責任が伴う」というスパイダーマン永遠の名言をオクタビアスなりの解釈で描いていく本シリーズは、ピーターが主役でないのにもかかわらずスパイダーマンのコミックとして高水準の面白さを保っているのだから、ダン・スロットの筆力には驚かされる。

悪人は決して善人に心変わりしない

……ただ、残念なことに『スーペリア・スパイダーマン』の邦訳はこの第3巻でストップしているんですよね……。
本シリーズは全6巻で完結しているので、なんとしてでも残り3巻分も邦訳してほしいところ。
ピーターの周囲の人間、そしてアベンジャーズが現在のスパイダーマンに再度疑念を抱き始めてたりと、相変わらず続きが気になる要素が多いのだ。
そしてスーペリア・スパイダーマンの最大の敵となるであろうグリーン・ゴブリン率いる地下ビラン集団『ゴブリン・アンダーグラウンド』との戦いは、この第3巻の時点では未だ仄めかされるだけで終わっているのでどうにもキリがよくない。

  
未邦訳の原書単行本

ただ本作の邦訳は元々かなりのスローペースなので(第1巻が2016年9月、第2巻が2017年5月、そして本書が2018年4月に発売)、もしかしたらまた忘れた頃に続きが出るかもしれない。希望は捨てないでおこう。

余談ですが、スーペリア・スパイダーマン誌はシリーズ完結後にクロスオーバーイベント『スパイダーバース』にて#32-33が追加エピソードとして制作されていて、そっちは邦訳『エッジ・オブ・スパイダーバース』に収録されています。
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2 Comments

No Name  

ヴィレッジのマーベル翻訳がシークレットウォーズに突入しそうなので早いとこ完結してほしいですね
欲を言えばスーペリア後の翻訳(せめてクローンコンスピラシー、ヴェノムインクのクロスオーバーイベントだけでも)出してほしいですけど

2019/05/13 (Mon) 16:37 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>No Nameさん
マーベルユニバースの大筋を追う流れもかなりのところまで邦訳で進んでますね…(すっかり刊行ペースに追いつけなくなってマーベル関係があまり買えてない)
スパイダーマン関係ももっと邦訳が充実すると嬉しいというのは同意です。バットマン関係くらい新旧問わず色々なタイトルが出てほしい…!

2019/05/13 (Mon) 18:52 | EDIT | REPLY |   

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