ツルゴアXXX

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31 2019

チャック・ディクソン&スコット・ビーティー他/ジョーカー:ラスト・ラフ

ジョーカーラストラフ表紙

「お笑い以外に、俺様はこの世に何を残せる?
 俺がくたばったら、誰が後を継ぐ?時間がねぇ。
 みんなが聖夜の贈り物を返品する頃にゃあ、俺はポケモン並みに過去の遺物になってる。
 腫瘍は人を待たずっていうだろ。こいつは俺様の最高の笑い。最後の演技だ。
 どんなに努力しても、生き残る奴はいる。俺の仕事を誰が続ける?」

「オレたちがいますぜ!ボスが死んでも、オレらが暴れる!」
「お前はいい奴だ。クソったれの差別主義者だが、いい奴だよ」
「えへへ」
「だが、所詮赤の他人だ。血が繋がってる後継者が欲しい。俺の子供が」


冗談の通じねえ奴だ
死ぬのは簡単だが、コメディは難しいといわれる。
では、その二つを組み合わせたらどうなるのか……
末期がんの宣告を受けた“犯罪界の道化王子”ことジョーカーは、
犯罪史上最大のパフォーマンスをしようと決意する。
ジョーカーが死ぬのなら、他の奴らも全員巻き添えだ!
DCユニバースの全ヒーローが力を合わせても、彼の笑いを止めることなどできるはずはない……
さあ、オチはどうする?


◆収録作品

2001年12月:Joker: Last Laugh #1
2001年12月:Joker: Last Laugh #2
2001年12月:Joker: Last Laugh #3
2001年12月:Joker: Last Laugh #4
2001年12月:Joker: Last Laugh #5
2002年01月:Joker: Last Laugh #6


◆ジョーカーは最後に笑う……。
脳腫瘍を患い、余命幾ばくも無いという事実を医者から聞かされたジョーカーは、全員を巻き添えにする史上最大の犯罪計画を企てる……ライター、チャック・ディクソンとスコット・ビーティーによるジョーカーをフィーチャーした2001年のクロスオーバーイベント『ジョーカー:ラスト・ラフ』の邦訳が刊行!!
ここ最近の小プロのDCコミックスの邦訳はリバース以降の作品が中心だったので、ニューアース時代の古めなタイトルが邦訳されたのはなかなか嬉しい。

死ぬ前に盛大なジョークを披露するため、ジョーカーはヴィランたちを扇動してスラブサイド刑務所から脱獄し、加えて自家製の毒でヴィラン達全員をジョーカー化。
各地でジョーカー化したヴィラン達が大暴れし、ヒーロー達は事態の収拾にあたるという物語であるため、それに伴って数多くのタイインも刊行されていたのですが、本書は本編エピソードのみの収録にとどまっています。
とはいえ解説書に各タイインのあらすじは記載されていますし、本編のみでも楽しめるように物語が作られているのでそこまで気にする必要はないかも。
(実際のところほとんどのタイインが『ヒーローがジョーカー化した○○と戦う』という内容ばかりなので)
【Joker's Last Laugh Tie-Ins】

ちなみに本クロスオーバーは2ヶ月という超ハイペースで刊行されていたみたいで、アーティストがエピソード毎にころころ変わるのも特徴。レトロ風味でオシャレな絵柄が魅力であるアーティスト、マルコス・マーティンが担当しているパートもあります。

『表紙がブライアン・ボランドのアートによるバットマンとジョーカー』『ジョーカーが死ぬ前に大勝負をしかける』というお膳立てがありながら、意外な事に本作はバットマンの出番が非常に少なく、バトジョ感全開な展開は無に近い。
物語の主役となるのはジョーカーと深い因縁があるオラクルことバーバラ・ゴードン、そして当時恋人でもあったナイトウィングことディック・グレイソンだったり。

ジョーカーに銃で撃ち抜かれた事で下半身不随になったバーバラはジョーカーに対して強い復讐心を持っており、本作では『ジョーカーは例外的に殺害した方が多くの人々の命を救うことに繋がるはずだ』という考えに取り憑かれそうになる危なっかしさが強調されているのがミソ。
「ヒーローは不殺を貫くべきか否か」というのは永遠のテーマですね……

ジョーカーは殺すべきと主張するバーバラ

そしてもう一つは、かつてミスター・ミラクルとして活動していたこともあったスラブの警備主任、シャイロ・ノーマンとメタヒューマン対策部門に所属する司法省の捜査官、ダイナ・ベルがコンビを組んで活躍するパート……この二つのコンビを主役としながら物語が展開していきます。
特にダイナは2019年3月現在、本作『ラスト・ラフ』を含めて7回しか登場していない超レアキャラなので、活躍を拝めること自体が貴重だったりする!
【Dina Bell (New Earth) | DC Database | FANDOM powered by Wikia】

あとレアキャラの登場でいうと、グリーンランタン・コァのガイ・ガードナーの実の兄、ミリティアことメイス・ガードナーが活躍しているページがあったりするのも注目ポイントかもしれない。今は全然見ない……というかこの時代の一時期にしか活躍していないキャラがまあまあ前に出ているのは本作の魅力の一つかも……?
【Mace Gardner (New Earth) | DC Database | FANDOM powered by Wikia】

ミリティアの活躍シーン

◆感想
結構面白くできそうなコンセプトの物語なのに、実際読むと色々と物足りない部分が目立つ作品でありました。

単純にジョーカー化した数多く登場するヴィランたちのヴィジュアルを楽しんだりとか、シャイロとダイナが後半、結構面白い人選であるヴィランと手を組んで事態を解決しようとする下りとか、見どころ自体はちょくちょくあるんですけどもね。表紙から受けるイメージとは裏腹にバットマンの出番はかなり少なく脇役に徹しており、基本的に他のメンバーがジョーカーの罠に対峙していく展開も新鮮かな?
ナイトウィングに『ある意味で』大ダメージを与える結末も、ハッピーエンドとはいかない内容でちょっぴり意外性はありましたけど!

それと、『ジョーカーによる最後のジョーク』というテーマを押し出しているというのもあってか、深刻なストーリーのはずなのに結構ドタバタ劇感が強めなノリだったりするのも独特な味わいがあります。『どうせ死ぬのであればみんなをジョーカーにして世の中をハチャメチャにする』という行動は実にジョーカーだと思いますし、終盤バットマンが入手したジョーカーの『やるべきことリスト』の内容なんて行動が無軌道で面白い。

ジョーカー将軍とランカー

しかし後半で判明する脳腫瘍の真実がくだらなすぎる……!!あんまりな展開すぎて思わず「雑ゥー!」と口に出して突っ込んでしまった。良くも悪くもジョーカー中心のストーリーらしい展開ではあるけれども!
オラクルがちょくちょく口にする「ジョーカーを殺せば多くの人を救えるのに」という問題提起にも特に答えが出ないまま終わるってのがまたアレな部分で、かつて邦訳された『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』の方ではこの問題に対して秀逸な回答を描いていただけに(作品としてはこっちの方が後発ですが)どうしても比較してしまう。

どうも解説書によると当初はこの作品はもっとダークな内容だったみたいで、チャック・ディクソンとスコット・ビーティーによる初期の構想ではジョーカーがヒーローのエロンゲイテッドマンを殺害し、それに怒り狂ったスーパーマンがジョーカーを殺害してしまうというかなり過激な展開だったとか。
そして本編ではジョーカーの側近として頻繁に登場していたヴィランのランカーが二代目ジョーカーとなる……という物語であり、『ラスト・ラフ』というタイトル通りジョーカーの最期を描く内容になるはずだったのですが編集部の認可を得られなかったため、本作のような物語に変更されたとのこと。
相当露悪的な内容だけど、初期案の方が話としては面白かったのかも?

……というか『インジャスティス』を思い出す脚本だな!
あっちはジョーカーの罠によってスーパーマンが幻覚を見せられて妻のロイスを殺害してしまい、トドメにメトロポリスも消滅させられた事でブチ切れてジョーカーを手に掛けるという『よりエグい展開』でしたけれど。当然エルス物の作品です。
ちなみですが、本作『ラスト・ラフ』でのジョーカーの『やるべきことリスト』にも「おせっかいなロイス・レーンを殺す。スーピーがキレそう」という一文があったり……。
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