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24 2019

インフェルノ

インフェルノ1980予告編インフェルノ
【原題】Inferno(Dario Argento's Inferno) 1980年【伊・米】


ニューヨーク。若く美しい女流詩人ローズ・エリオットは、近所の骨董屋で「三人の母神」という本を見つける。その中に彼女が今暮らしている古いゴシック風のアパートに関する記述を見つけ、大いに興味を抱くようになる。この「三人の母神」はヴァレリという幾世紀前の建築家によって書かれた日記で、彼は3人の魔女のために家を建てたという。場所はドイツ・フライブルク、ローマ、そしてニューヨーク・・・。ローズはまさにその魔女(暗闇の母)のために建てられた館に住んでいたのだ。身に迫る恐怖を感じた彼女はローマで音楽を学んでいる弟マークに事の次第を書き送ると共に、好奇心から自宅の地下室を調べ始めるのだが、やがて水没した地下室でローズが腐乱死体に襲われて殺される異常事態が発生。ニューヨークにやって来たマークは姉の死に疑問を持ち調査を始めると、意外な事実を知っていくことになる……。

***

ダリオ・アルジェント監督が手がけた前作『サスペリア』から続く、『魔女3部作』の第二作にあたるホラー映画。
今回は前作に登場していない魔女、暗黒の母(マーター・テネブラルム)がストーリーに絡んでくる……といっても内容的には独立しているので本作単体でも楽しめます。

……いや、楽しめると書いちゃったけど、映画としては前作『サスペリア』以上に難解というか支離滅裂な作り。
前作同様ストーリーは深く考えず、ダリオ・アルジェントによるグロテスクさとアート風味な映像美、そしてホラー映画らしからぬ壮大な劇伴を楽しめればいいと思っていたんですが、主人公まわりの登場人物が殺されていく理由がよく分からないまま話が進行していくという展開には困惑。
多分ストーリーのキーアイテムである「三人の母神」という本に関わろうとしたから殺されてるんでしょうが、作中ではそういう描写があまりちゃんと明示されずに殺されてる人がちらほらいるので、本当に考えなしに撮りたいと思ったスプラッタシーンを盛り込んだ結果、ストーリーの辻褄合わせを放棄したんじゃないかと思うレベル。

骨董商を営む老人に至ってはネズミの大群に襲われてる最中にホットドッグ屋の親父がいきなり登場し、彼の包丁で首を切って殺害してその後親父は一切登場しないという意味不明過ぎる死亡シーンであり、監督の頭の中ではこれはちゃんと筋の通った脚本になっているのかどうか真剣に気になったし、あまりにシュールな光景過ぎて笑ってしまった。
『「三人の母神」という本に近づく者は内容の秘密保持のために殺されてしまっている』という展開なんですが、そういう読まれて困る本が各地に点在しているという設定のチグハグさも謎。これに限らず脚本のツッコミどころは非常に多いです。

色々提示される意味ありげな描写は何も判明することなく謎のままだし、ラストシーンの魔女の登場は死ぬほど唐突。
彼女が死神の姿に変貌する場面ではそのビジュアルが1980年という時代を考えてもチープであり、恐怖感がなさ過ぎてまた笑ってしまう。
ダリオ・アルジェント監督はセンスのある映像を作られる方なんだけど、一方で脚本制作のセンスは本当に皆無なのかもしれない、と思わされた一作でした。ただまあ映像と音楽自体はサスペリア同様、『雰囲気は良い』の一言で、原色感強めな赤と青の不気味で美しい映像はやはり堪らない。ホラー系PVを見るようなノリで楽しむのが吉なんじゃないかなぁと。

ちなみに1988年にテレビ東京で放送された『木曜洋画劇場』の吹替版では、ラストシーンのセリフを改変する事で独自に辻褄を合わせるという荒業がなされていたとか。こちらは『HDリマスター・パーフェクト・コレクション』に収録されていて現在でも拝めるらしいので、機会があれば見てみたい……。

『木曜洋画劇場2000回記念スペシャル:テレビ東京』より。
数ある「木曜洋画劇場」作品で、最も衝撃的な作品の一つ。とはいっても、内容ではなく、その“吹き替え”が衝撃的なのだ。
本作は、ダリオ・アルジェントの『サスペリア』(77)の続編にあたる作品で、魔女の館で奇怪な殺人が連続するというオカルト。だが、内容的につじつまが合わないところが多く、最後まで観ても魔女の目的はよく分らない。本作の放送の数年前に、TBSの深夜で放送された吹き替え版でも、原語に忠実な翻訳だったため、狐につままれたような印象だった。しかし「木曜洋画劇場」では、新たに吹き替えを制作しなおし、放送界の奇跡を成し遂げた! ラストのヴァレリー(魔女の館の設計者)と魔女のせりふをわずかばかり変更することで、ストーリーのつじつまをすべて合わせてしまったのだ。これぞ「木曜洋画劇場」イリュージョン!! 観終わった後は、視聴者の心に疑問点を残すことなく、一本のホラーを観たという充実感のみを与える素晴らしさ。これを奇跡と呼ばずに、何と呼ぶのか? オリジナル版のラストでは、魔女は炎とともに滅んだように見えるが、「木曜洋画劇場」版では、魔女に高笑いをさせることで「実は滅びていない」という余韻を、"強制的"に与えている。凄すぎ!


【Inferno 解説】「DARIO ARGENTO GEOMETRY OF HORROR」様。
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