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17 2019

ダン・ジャーゲンス&ジェフ・ジョーンズ他/アクションコミックス #1000

アクションコミックス1000表紙
「父さんは?もう時間だよ?」
「きっと忙しいのよ、ジョン」
「どこに?誰と?」
「知らないわ。けど来る」
「無理だよ、母さん。父さん、こういうの嫌いだから」
「今回は別だわ。クラークはきっと来る。絶対にね」

アクションコミックス#1000
スーパーマン生誕80周年を記念する特大号!
2018年全米最大のヒット作を早くも邦訳!

1938年春、一冊のコミックブックが創刊された。表紙に車を頭上に掲げた快男児の姿が踊るそのコミックは、やがてアメリカンコミックスの歴史そのものを塗り替える事になる……元祖スーパーヒーローであるスーパーマンを産んだ『アクションコミックス』が、ついに#1000に到達!その偉業を称えるべく、ジム・リー、ジェフ・ジョーンズ、スコット・スナイダー、トム・キングら、DCコミックスが誇るトップクリエイター陣が集結した記念号は、2018年最大のベストセラーとなり、かの鋼鉄の男の伝説に新たな一頁を加えた。その全コミックファン注目の話題作が、今は亡きカート・スワンの未発表原稿、スーパーマンのデビュー作『アクションコミックス』#1まで収録した、究極のデラックスエディションで早くも登場!


◆収録作品

1938年06月:Action Comics #1
2018年06月:Action Comics #1000


◆MAN OF STEEL TURNS 80!
弾丸より速く、力は機関車よりも強く、高いビルディングも一っ飛び……1938年の『アクションコミックス』#1でデビューした元祖スーパーヒーロー、スーパーマンは2018年に生誕80周年を迎えました。
それと同時に『アクションコミックス』誌も#1000に到達!!

それを記念して刊行された本作『アクションコミックス #1000』は、DCコミックスを代表するトップクリエイターたちが様々な短編や記念イラストを発表。それらを収録したこの一冊が早くも刊行されたのは本当にありがたいと言う他ない!
本書のカバーを見ての通り、1000号到達を機にニュー52以降コスチュームから消えていた赤いパンツも復活したスーパーマン!さっそくその内容を紹介していきたいと思います。

***

多くの著名なクリエイターが参加している本作は、どの短編も『スーパーマン』というキャラクターそのものの魅力に迫った内容に仕上がっております。
最初のエピソード『From the City That Has Everything(満ち足りし街より)』は、90年代のスーパーマン誌を担当してきたダン・ジャーゲンスがライターとペンシラーを手がけており、スーパーマンを讃える感謝式典にて、彼に救われてきた多くの市民がその思い出と感謝を述べていくという内容のお話。
ただスーパーマン本人は好戦的な異星人クンド達の襲来が気がかりで、妻のロイスや息子のジョンがいくら勧めてもこの式典に参加するのは気が乗らない模様で……?

次のエピソード『Never-Ending Battle(終わりなき戦い)』はライターがピーター・J・トマシ、アートがパトリック・グリーソンという、スーパーマン第4シリーズコンビが手がけているお話。
ヴィランのヴァンダル・サベッジが用いた“ハイパータイム”という兵器により、過去や並行世界を彷徨い生きる事になってしまったスーパーマン。それでもスーパーマンは各時代で戦い続け、サベッジの野望を打ち砕くために行動する……・という内容。
各時代のスーパーマンの物語をたどるような構成であり、またパトリック・グリーソンのアートが構図や色使いがどれをとっても素晴らしい仕上がりとなっていて、コミックというよりは描き下ろしの一枚絵の数々を堪能していくような作りです。
本書後半に収録されているトマシのスクリプトでは各ページの元ネタも掲載されており、こちらも必見。

その次は『An Enemy Within(内なる敵)』というエピソードで、こちらはなんとマーベル、DCで幅広く活躍する古参ライター、マーヴ・ウルフマン96年に逝去されたアーティスト、カート・スワンの未使用原稿を用いて制作した全5ページの一作。
オリジナルの原稿は巻末に収録されているのですが、残っていた4ページまでの時点ではスーパーマンも登場せず、どういうストーリーが展開されようとしていたのか不明なため、スクリプトをいじって『ビランであるブレニアックが人類を精神操作しようとしていたが失敗した』という物語に改変し、ラストにスワンが手がけた『Superman: The Secret Years #2』からスーパーマン登場シーンを流用するという力技で完成させております。

そして次はライター、ジェフ・ジョーンズ、アートはオリビア・コワペルが担当する、あのスーパーマンデビュー作『アクションコミックス#1』の80年ぶりの続編エピソードとして作られている注目の短編『The Car(ある車)』

スーパーマンとプッチ
最初期のスーパーマンのコスチュームもなかなかカッコいい

アクションコミックス#1でスーパーマンが退治したチンピラ、プッチの前に再度スーパーマンが姿を表し、悪党である彼の今後の生き方に道を指し示してやるという話に仕上がっており、現在の『悪党であっても救える相手は救う』というスーパーマン像を盛り込んだスープスの姿、そして一発キャラに過ぎなかったプッチの人物像の掘り下げに注目な一編です。

次はライター、スコット・スナイダー、アートはラファエル・アルバカーキによる『The Fifth Season(フィフス・シーズン)』
ビランであるクロナスの発明品「時の鋏」、そして同じくビランのコーターの武器「コーターの眼」をルーサーが盗み出した事を突き止めたスーパーマンは彼の居場所を突き止め、その目的を問いただす。
ルーサーの目的は、深宇宙を覗き、時空の層を分断して、かつて宇宙と交信しようとした自分の過去の姿を見せる……という内容。
ちょっとこれは説明するよりも実際に読んで浸って欲しい一作。スナイダー先生はホント……ヒーローと宿敵の関係性を描くのが好きなお方やね……!(信頼できる)

ライター、トム・キング、アーティスト、クレイ・マンが手がける『Of Tomorrow(明日の…)』という作品は、地球が寿命を迎える50億年後を舞台にした短編で、現在もおそらく別の惑星で家族と共に生き続けているスーパーマンが、滅亡寸前の地球に墓参りに訪れるというしんみりさせられるエピソード。たまに忘れそうになるけどスーパーマンって長寿設定があるんですよね。
『スーパーマン:アンチェインド』でもこの設定を拾った描写がある)

次はまたもベテランコンビ!ライターがルイーズ・サイモンソン、アートはジェリー・オードウェイが手がけている『Five Minutes(5分間)』という短編。
残り5分で記事を仕上げなきゃいけないのに各地で様々な事件が起こっている事に気づき、急いでスーパーマンは事態の収拾に向かうって内容で、クラーク・ケントとしての日常とスーパーマンとしての活動の両立の大変さをコミカルに描いた一作です。

その次は『Actionland!(アクションランドで!)』という、ライターが92年のアニメ版バットマンなどのシリーズを送り出してきたポール・ディニで、アートはこれまた70年代から活躍しているベテランアーティストのホセ・ルイス・ガルシア=ロペスという豪華コンビが描くエピソード。
スーパーマンの人生を遊園地のアトラクション形式で辿っていくという内容なんですが、アートの中にスーパーマン関連の小ネタもちらほらあってなかなか楽しいお話。

お次はライターはブラッド・メルツァー、アートはジョン・カサディが手がける『Faster Than a Speeding Bullet(弾丸よりも速く)』というエピソード。
タイトル通り、スーパーマンの代名詞的なフレーズである『弾丸よりも速く』が作品のテーマになっていて、強盗に人質に取られている女性が頭に拳銃を押し付けられており、“このままでは全速力でかけつけても間に合わない”という切迫した状況が描かれています。
この話、シンプルな作りながら緊迫した極超音速の世界での思考の描写と、ラストシーンでの会話も含めてすごく好きな短編です。
ブラッド・メルツァーは『アイデンティティ・クライシス』のダーク過ぎる作風の印象が強かったんだけど、こういう系統の話も他にあるならちょっと読んでみたいな……。
基本的にマーベルで仕事をしている印象があるジョン・カサディ(実際DCでの仕事は多くない模様)の写実的なアートも迫力があって良い!

その次はブライアン・マイケル・ベンディスがライターを、ジム・リーがアートを担当する『The Truth(真実)』という短編が始まるのですが、これはアクションコミックス#1000の翌月に刊行されたミニシリーズ『The Man of Steel』第2シリーズの幕間的なエピソードであり、時系列的には#4の途中にあたるとの事。
急にロゴル・サーという謎のビランにスーパーマンが窮地に追い込まれているという話が始まるので普通に面食らったし、お祝い感皆無な内容で困惑した(本音)。
あと市民がスーパーマンの赤パンツにやたら言及する雑談が多く、ベンディス会話はDC移籍後も健在でした。

そして!本書のラストを飾るのは!
72年にDCに入社して現在はDCの重役となっているポール・レビッツがライターを務め、アートは60年代後半から70年代にかけて大活躍した大ベテラン、ニール・アダムスが担当している短編エピソード、『The Game(ザ・ゲーム)』
本作は元々は『Action Comics: 80 Years of Superman』というスーパーマンの80周年記念のエピソード集に描き下ろしで掲載されたものだとか(その後#1000のデジタル版に再録され、本邦訳版の底本であるデラックス・エディションにも収録された)

スープスとルーサーのチェス勝負

『互いに心を開く』という目的のため、ルーサーの元を訪れてチェス勝負を持ちかけるスーパーマン。
ルーサーはその勝負を当然受け、レックスコープの屋上で顔を突き合わせながらチェスで対戦する……と、それだけの内容なのにクラルサ要素が強すぎるお話。
「今回はチェスにしたいと思うが、いいかね?」「再び打ち負かしてやるとも」と、この短いやりとりだけで「結構普段からゲームで対戦してんのかよ!」と妄想を捗らせるやり口が実に上手い。オチの流れも完全にいちゃついてるようにしか見えなかった。
このエピソードが今回収録された短編の中で一番好きです。

◆Action Comics #1
アクションコミックス第1号のスーパーマン
『赤ん坊の肉体が、我々の数百万年先を行っているとは知る由もない職員達は、
 その子の馬鹿力に腰を抜かした。
 やがて成人した時、彼には驚くべき力が宿っていた。
 例えば…幅跳びなら200m、20階建ての摩天楼も一っ飛び…
 力は正に千人力…走れば特急列車を追い越す始末…
 しかも、炸裂する砲弾でもなければ、その肌には傷一つつかないのだ!
 こうしてクラーク・ケントは心に決めた。
 自分のこのとてつもない力を人々の為に役立てるのだと。
 こうして生まれたのが、誰であろう…SUPERMAN!スーパーマン!
 虐げられた者達の味方!
 この驚異の偉丈夫は、助けを求める人の声に全身全霊で応えるのだ!』

***

本書にはなんと、スーパーマンがデビューを果たした記念すべきコミック『Action Comics #1』も同時収録されております。
実は本作、かつてマーベリック出版から刊行された月刊誌『月刊スーパーマン』の第25号に翻訳が載るはずだったのですが、雑誌が休刊の憂き目に遭ってしまい幻に。意外なことにスーパーマンのデビュー作は今日まで一度も翻訳された事が無かったエピソードだったりします。

本編では無実でありながら死刑を迫られている女性を救うために深夜、スーパーマンが知事の家に不審者扱いも厭わず正面から強引に入って直談判していたり、チンピラ達を相手取る時の行動や言動が少々荒っぽかったりなど、現在のスーパーマンのキャラクター像よりもやや人間臭さが強調されていて今見ると新鮮。この時代はスーパーマンの故郷についての設定やケント夫妻に育てられたといった設定などが無かったりして、現在との差異を比べるのも楽しい。
新聞記者クラーク・ケントとしての姿はやたらと気弱で、気の強いヒロインであるロイスに片思いするも彼の気弱過ぎる性格があまりお気に召していないために態度が基本的にそっけなかったりと、80年も昔の作品でありながらコミックとして普通に面白い描写が豊富です。

ちなみに本作、第1話からさっそく続き物のエピソードなので「この後どうなっちゃうの!?」なところで終わっているんですが、後の展開については解説書の方で説明されているのでご安心を。

◆感想
面白かった!!!!!
本作は短編だけでなく、様々なアーティストによるピンナップやバリアントカバーも大量に収録されており、アートブック的な楽しみ方も出来る一冊になっております。ホルヘ・ヒメネス先生の描く『顔が良すぎる』スープスの絵を是非見てくれ……!

ホルヘ・ヒメネススープスの顔が良い

沢山のクリエイターが様々な切り口からスーパーマンの魅力を描き出しているこの本は控えめに言ってマストバイだと思います。
短編&イラスト集という作りの本なので多くの邦訳で求められる事前知識的なものもいらないですし、解説書はニュー52からDCリバース以降の現在のスーパーマンに至るまでの流れを簡単に解説していたり、『アクションコミックス』関連のトリビアが色々掲載されているなど読み応え十分な内容に仕上がってます。
特に『スーパーマン第1話』が制作されるまでの経緯と、『スーパーマン』というネーミングに関する解説はディープな内容となってて必見。

兎にも角にも、スーパーマンの邦訳に興味を持った方が最初に手を出す一冊としてもオススメな作品がまた一つ増えたといった感想を抱きました。
『アクションコミックス#1000』、イチオシの一冊ですよ!!!!!

式典中違和感に気づくスープス

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