ツルゴアXXX

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13 2018

マーク・ミラー&スティーブ・マクニーブン他/ウルヴァリン:オールドマン・ローガン

オールドマン・ローガン 表紙

「あんた、何てザマだ。ガッカリしたぜ。
 爪を出さないって誓いでも立てたのか?すっかり平和主義者に宗旨替えかよ?」

「最初からそう言ってるだろうが」
「あぁ、けど信じてなかった。連中に何をされた?」
「オレは壊れたんだ。だから死なずにいる」


THE WORLD WON'T HAVE HIM ALONE!

ヒーロー達が姿を消した未来。
全米はスーパービランの手で支配されていた。

そんな時代、カリフォルニアの寒村に、
妻と二人の子供に囲まれ慎ましく暮らす一人の男がいた。

名はローガン。

過去は捨てたと語る男の生活は、
ある旧友の訪問をきっかけに急変する……。

ヒーロー達の身に、そして、ローガンに何が起きたのか。
禁断の歴史が紐解かれる時、あの最強の狂戦士が蘇る……。

名作『シビル・ウォー』を生んだマーク・ミラー、スティーブ・マクニーブンコンビが贈る衝撃のバイオレンス巨編!


◆収録作品

2008年08月:Wolverine Vol.3 #66
2008年09月:Wolverine Vol.3 #67
2008年10月:Wolverine Vol.3 #68
2009年01月:Wolverine Vol.3 #69
2009年02月:Wolverine Vol.3 #70
2009年05月:Wolverine Vol.3 #71
2009年06月:Wolverine Vol.3 #72
2009年09月:Wolverine: Old Man Logan Giant-Size


◆UNFORGIVEN
エルスワールド物は予備知識がほぼ不要で、なおかつ正史世界ではありえない設定や展開、なによりそれ単体で話が完結している作品が多いのが魅力!!
最近あんまりマーベル系の邦訳に手を出さずにいたら急に無性に1冊読みたくなったので、映画『ローガン』の原案となったウルヴァリンが主役のエルス物、『ウルヴァリン:オールドマン・ローガン』を読了しました。
タイトルにある通り、すっかり歳を取って白髪が目立つようになったウルヴァリンが主役の本作……どんな内容なのかさっそく紹介したいと思います。

***

物語の舞台は並行世界である『アース-807128』
この世界は昔、各地に居るビラン達が一斉蜂起してヒーローチームを完膚なきまでに叩き潰し、その結果多くのヒーローが死亡するか姿を消して全米が完全にビランの手に落ちてしまったという荒廃した未来。

ウルヴァリンも“とある理由”から完全に戦うことを辞め、『ウルヴァリン』という名前も捨てて『ローガン』となり、カリフォルニアの寒村で農夫となり、今ではすっかり年老いてハルク・ギャングが支配する土地で日々の取り立てに苦しみながら愛する妻と息子、娘の4人で慎ましく暮らしているという状態。
取り立てにきたハルク・ギャングの面々に無残に殴られても何の抵抗せず、支払うメドが立たない家賃の捻出に苦しむローガン。

そんなある時旧友のホークアイがローガンの元を訪れ、東海岸のニューバビロンまで“ある荷物”を一緒に運ぶ仕事の手伝いを頼まれる。
ホークアイのナビをするだけで500ドルの報酬が得られるという事で、家族のために2週間、ローガンはホークアイと共に、スパイダーモービルを駆って5000kmの旅に出発するのであった……という物語。

どことなくロードムービー的な味わいがあるシチュエーションですが、ストーリー中で起こる道中でのエグい出来事やかつて活躍したヒーロー達の死に関する描写がどんどん挟まれていくため、物語の展開は非常に暗く、そして重い。

ヒーローの復帰を祈る宗教が盛んな街
キングピンの縄張りであるネバダ、ハンマーフォールズ
ここではヒーローの復帰を祈る宗教が盛んであり、
またヒーロー絡みの土産物が売られている随一の観光都市でもある
もちろん死んだはずのスーパーヒーローが復帰するなどこの世界ではありえない

道中、「ヘル・サイクル」を乗り回すバイカー集団『ゴーストライダーズ』に襲撃されたり、支配者であるキングピンを討ち果たすために仲間のデアデビルとパニッシャーと協力して抹殺を図ったものの、囚われの身となってしまったホークアイの娘、アシュレイの救出に向かう展開や、地震に巻き込まれて穴蔵に落ち、人を喰らう怪物、モーロイドの群れに襲われる展開など様々な苦境に立たされるものの、それでも無抵抗を貫くローガン。
たまにかつての迫力を思わせる態度を見せる事があるとはいえ、そこに最強の狂戦士であった『ウルヴァリン』の面影はまるで無い。

一体彼に何があったのか。彼が無抵抗主義となる、戦いから一線を退いたきっかけとなった壮絶な過去の事件は第5話でとうとう明かされるのですが、その内容は実に壮絶。
ウルヴァリンが泣きわめき、自分の人生に絶望した過去については本編を読んでその目で確かめてみてほしい。

過去のトラウマをホークアイに吐露するウルヴァリン

◆感想
面白かった!!!
マーク・ミラーが執筆する絶望的でやるせない世界観や過激な作風、そして明確すぎる善と悪の対立という物語はやはりこういうエルスワールド物で輝くと思う。『アルティメッツ』とか『スーパーマン:レッド・サン』とかね。

それ相応の理由があり、読者に同情させる形で描かれているとはいえ、物語終盤に差し掛かるまで殆ど戦闘をパートナーのホークアイに頼りっきりな本作のローガンの姿はかつてのヒーローとしての強さをまるで感じさせず、正直情けない印象を与えている。
それだけに徹底的に無抵抗を貫き続けた男が物語の最後の最後、50年ぶりに『ウルヴァリン』に戻った場面での衝撃と迫力は凄まじい。
『ウルヴァリン』がその実力を存分に発揮した時の恐怖を、スティーブ・マクニーブンのアートがフルに演出してくれている。
最終話での『ウルヴァリン』のその戦いっぷりは格好の良いスタイリッシュな物ではなく、ただただ暴力的で恐ろしいものとして描写されています。

怒れるウルヴァリン

エルスワールド物とはいえウルヴァリンが好きな人……それでなくてもハードボイルドな物語を好む人は是非読んでみてほしい。
正史世界との違いがどうこう以上に一つの物語として本当に完成度が高いので……!
ただまあ……多くのキャラの扱いが本当に容赦ないんで、ウルヴァリン以外のヒーローに強い思い入れがある人は注意な内容ではありますけども。

ちなみに『オールドマン・ローガン』の物語はこれでキリ良く終わっているものの、この後も色々なコミックでオールドマン・ローガンが登場していたりします。
実はオールドマン・ローガンの歴史的初登場は『ファンタスティック・フォー』第1シリーズ#558-562で展開された『デス・オブ・インビジブルウーマン』編であり、こちらでは本作での出来事の後、『ニューディフェンダーズ』というヒーローチームを結成し、『フーデッドマン』を名乗って活動している様が描かれています。ちなみにライターは本作と同じくマーク・ミラーが担当。

フーデッドマン登場

そして『オールドマン・ローガン』終了後に発刊されたミニシリーズ『ファンタスティック・フォース』第2シリーズにも登場し、さらに2015年のクロスオーバーイベント『シークレット・ウォーズ』にも登場。
『オールドマン・ローガン』の単独誌も制作され、色々あって正史世界アース-616にオールドマン・ローガンが移ってからは長期連載のオンゴーイングシリーズとして、『オールドマン・ローガン』の第2シリーズが現在も展開中となっています。

もともとエルス物の存在でありながら、オールドマン・ローガンは現在のマーベルユニバースにおいて欠かすことのできない、かなりの存在感を醸し出すヒーローに成長しているわけなんですねー。
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2 Comments

久仁彦  

これメチャクチャ面白かったですねー。
マーク・ミラーの作風は露悪的なところが大分苦手なんですが、そもそもの世界観や展開が
容赦ないお蔭でその辺を気にせず楽しめました。

第二シリーズは最初の方しか触れていませんが
別世界とは言えかつての仲間との再会やら若い(幼い)頃の妻との再会やら
アンドレア・ソレンティーノのべらぼうにカッコいいアートやらで
こちらも日本語で読んでみたいですね。

2018/08/14 (Tue) 14:20 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>久仁彦さん
マーク・ミラー作品は当たり外れが激しいイメージを持ってるんですが、本作はかなりのヒットでした!ってか第2シリーズのライターって途中まではジェフ・レミアが手がけてるんですね。気になる……

2018/08/15 (Wed) 10:01 | EDIT | REPLY |   

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