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20 2018

トム・キング&デイビッド・フィンチ他/バットマン:アイ・アム・ベイン

バットマンアイ・アム・ベイン表紙
「俺はジョークじゃない。謎解きでもない!鳥でも猫でもペンギンでもない!
 案山子かかしとも植物とも人形とも違う!
 心が折れた友人とも、恥ずべき師匠とも違う!おとぎ話なんかじゃない!
 お前を感心させ、怖がらせるサーカス芸人でもない!
 月に向かって吠える変人と一緒にするな!
 違うぞ…俺は…俺は仮装ごっこをする金持ちのガキじゃない!
 破滅ベインだ!

バットマン、ベインとの最終決戦に臨む──

彼はジョークじゃない。謎解きでもない。鳥でも猫でもペンギンでもない。案山子でも、植物でも、人形でもない。
彼はベイン。破滅をもたらす男。ゴッサムシティに現れたベインの目的はただ一つ──バットマンを再起不能にすること。
その前に、彼はダークナイトが愛する者と……憎む者を残らず排除するつもりだ!
ロビンの系譜に連なる若きヒーローたち、警官、犯罪と戦う正義の味方がバットマンのもとに結集する。さらにアーカム・アサイラムに巣食う異常者、怪物の力まで借りなくては、バットマンは恐るべき挑戦者を退けられないだろう。
ベインとバットマンは知っていた。二人の最終決戦で舞台から降りられるのは、どちらか一人だと……。


◆関連作品過去記事
【バットマン:アイ・アム・ゴッサム】
【バットマン:アイ・アム・スーサイド】

◆収録作品

2017年01月:Batman Annual Vol.3 #1
2017年04月:Batman Vol.3 #16
2017年04月:Batman Vol.3 #17
2017年05月:Batman Vol.3 #18
2017年05月:Batman Vol.3 #19
2017年06月:Batman Vol.3 #20
2017年07月:Batman Vol.3 #23
2017年08月:Batman Vol.3 #24


◆Every Epilogue Is a Prelude
トム・キングバットマンの邦訳第3巻にして『アイ・アム3部作』の完結編、『バットマン:アイ・アム・ベイン』がついに発売!!
第2巻の『アイ・アム・スーサイド』が邦訳されたのが去年の11月なのでかなり待ちに待った感がある。

今回は第1巻と同じく筋骨隆々なアートに定評のあるアーティスト、デイビット・フィンチが本編を多く担当しており、バットマンとベインの迫力ある肉弾戦をこれでもかと言わんばかりに堪能できるページが目白押しとなっています。

俺は破滅だ
依存症を抑え込むために自身にかけていたサイコ・パイレートの精神操作が使えなくなったため、
筋肉増強麻薬『ヴェノム』を再度打ち込んでゴッサムシティに現れたベイン

もちろん注目は戦闘シーンだけでなく、ストーリー構成の巧みさや演出が抜きん出ているトム・キングの脚本ももちろん注目点!印象的なセリフ回しや今後の展開に関わる伏線も数多く張られるため、テンポ良く物語が進む一方で一コマ一コマが見逃せない作りになっている。本当に無駄が無いんだよな……
というわけでさっそく第3巻のあらすじを。

***

恐怖に支配されたゴッサムガールの精神を救うため、ベインが統治する法治国家『サンタ・プリスカ』からサイコ・パイレートを奪還し、1日1回、全部で5日。パイレートの精神操作能力を用いた治療を始める事にしたバットマン。
ベインは当然、サイコ・パイレートを奪ったバットマンを許しはしない。
手段を選ばずパイレートを取り返しに来るであろうベインを警戒し、バットマンは犠牲者を出さないためにも、バットファミリーにゴッサムから離れるよう警告する。

そのバットマンの警告を聞き入れず、ファミリー達はゴッサムに残って戦うことを選択する。
だがその考えはあまりに甘く、ベインは自身の配下を使ってバットマンの仲間たちを次々に襲撃し、その身柄を抑えていく。
サイコ・パイレートと人質を交換するという、バットマンとの取引の材料にするためだ。
ゴッサムシティに乗り込み、ついにバットマンの前に姿を表わすベイン。

ベインはさっそくバットマンに人質とサイコ・パイレートの交換を持ちかける。
しかしバットマンの返事は……「断る」の一言であった。

***

本作ではバットマンとベイン、二人の境遇を交互に描く演出が挿入されるのですがこれが実に印象的。
大切な親を喪い、孤独な少年時代を過ごし、犯罪者を憎み、死を恐れない男になったというかなり似通っている二人なのに進む道が大きく異なっていったその理由を彼らの人生を比較しながら描くことで浮き彫りにするその構成がかなり心に刺さる作り。何よりこれを戦闘パートの流れで急に挟んでいくセンスが堪らないのだ。

ブルースとベインの過去

◆感想
めっちゃくちゃ面白かった……!!
なんか毎回こう叫んでる気がするけどこうとしか書けないんだもの……
多数のキャラやヴィランを登場させて見せ場を与えるエンタメ的な要素を出しつつも、単なるファンサービスに終わらずしっかりストーリーに絡ませていく形にしているから凝っている。

それと『アイ・アム3部作』のラストに相応しく、第1巻『アイ・アム・ゴッサム』から続くゴッサム&ゴッサムガールの物語を締めくくり、第2巻の『アイ・アム・スーサイド』を想起させるヴィランとの共闘展開を盛り込んだ集大成的な内容にもなっていて、単に完結させるだけでなく前2巻の物語の要素まで組み込んでいるのだから秀逸というほかない!

あと僕がトム・キングのバットマンで好きな部分として、「結構コミカルなシーンを挟んでくれる」というのもあるんですよね。基本的に『超』がつくくらいシリアスな物語なんですが、「フフッ」となる場面をさりげなく挿入してくれるのが本当好き。

ロビンらと一緒にハンバーガー屋で食事
デューク、ディック、ジェイソン、ダミアンと共に『バットバーガー』なるハンバーガー屋で食事をするブルース
「ロビンらはアルフレッドのキュウリサンドに飽きている」という切ない事実が明らかになったり、
ジェイソンが「ジョーカー味」というブラックすぎるジョークなフレーバーのポテトを好んで食べてたり、
ジェイソンがダミアンに髪の生え際をイジられたり、
ブルースがハンバーガーをナイフとフォークで食べている事をイジられたりなど、
ブルースが結構大事な話をする一場面でありながらやたら和む

これ以外にも色々あるんですが、『Batman Annual Vol.3 #1』収録の一編、『忠犬』というバットハウンドことエースの物語も面白い。
ちなみにエースは歴史的には1955年の『Batman #92』でデビューとかなり古株のバットファミリーなんですが、プライムアースでは本作が初登場だったり。

エースは以前ジョーカーが仕事の為に使うだけ使って捨てていった狂犬。その後エースを引き取ったゴッサム動物保護センターは「面倒が見きれない」という理由で処分しようとしていたところをアルフレッドが引き取り、屋敷で飼うことにするというお話。
その狂犬っぷりにブルースも救うことを諦めており冷たく接していたんですが、アルフレッドが献身的にしつけ続けた結果だんだんとその性格に改善が見られて……
エースに対するブルースの手のひらの返しっぷりとオチのアルフレッドの皮肉っぷりに笑う。

本書ラストには、あの『スワンプシング』とのチームアップ回『勇者と沃土よくどが収録されています(Batman Vol.3 #23)。これは個人的に結構サプライズな要素だった。
とある高層ビルの84階に住んでいた男、ロイド・バーナード・マッギンが頭部に2発銃弾を受けて殺された。
実はこの男はスワンプシング……アレック・ホランドの実の父親であり、幼い頃に母と離婚して去っていった人物であった。
親を失っても気落ちすることなく冷静なスワンプシング。だが彼は自分でも理由がわからない感情に支配され、ブルースの元を訪れていた。
ブルースはバットマンとしてスワンプシングと協力し、この殺人事件の犯人の行方を追う……という物語。

バットマンとスワンプシング車

このエピソードではミッチ・ジェラッズという方がアートを担当しているのですが、これがまた魅力的な絵!!
実の親を喪う悲しみは誰よりも理解できるバットマン。だからこそ熱を入れて事件解決に向けて奔走しており、スワンプシングへの接し方も自分からジョークを飛ばしたりと心なしか柔らかい。
しかし物語の結末は壮絶で、かなり何とも言えない気持ちになる読後感が残る一編です。
1話完結の短いエピソードなのに、作品としての魅力が詰まりすぎていてもう……これは本当に読んでみてほしい。

続く第4巻、『バットマン:ウォー・オブ・ジョーク&リドル』10月18日に発売予定!!
第2巻、そして本巻で触れられるもその詳細は不明だった過去の事件、“ジョークとリドルの戦争”がいよいよ明らかになる……?
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