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17 2018

スコット・スナイダー&ジョン・ロミータJr.他/オールスター・バットマン:ワースト・エネミー

オールスターバットマンワーストエネミー 表紙
「頼む、ブルース…かつて父が演説で話していた。
 ヒーローとは…自分の意志よりも、全員の意志を優先する存在だと」
「…そしてヴィランは、自分の欲望を最優先するってな。
 覚えてるぜ。もしそれがホントなら、バッツ、
 今回の悪役はてめえってことになるんじゃねえか?」
「さあ、ブルース、やってくれ。
 私、この男、他のあらゆる人間…全員が望んでる。
 ヒーローになるんだ」

バットマンを待ち受ける長く険しいデスロード

トゥーフェイスの凶行がまたもやゴッサムシティを震撼させ、バットマンはこの大物犯罪者の身柄を拘束し、アメリカの辺ぴな片田舎にある隠れ家まで護送することになった。謎めいた目的地には、バットマンがハービー・デント(トゥーフェイスに残された善良な人格)と協力して用意した“ある物”が隠されていた。それさえあれば、トゥーフェイスを永遠に消しされる──ただし、生きてそこまでたどり着けたらの話だ!
バットマンが先を急ぐ一方で、ハービー・デントとトゥーフェイスという二つの人格が主導権を巡って争い、相手の計画を探り、阻止しようと死力を尽くす。バットマンとハービーは信じていた──自分たちならトゥーフェイスの先手を打ち、目標を達成できると。しかし、二人の行く手には、想像を絶する困難が待ち受けていた……。


◆収録作品

2016年10月:All-Star Batman #1
2016年11月:All-Star Batman #2
2016年12月:All-Star Batman #3
2017年01月:All-Star Batman #4
2017年02月:All-Star Batman #5


◆最悪の敵
ニュー52にて再スタートを切ったバットマン誌の第2シリーズを担当し続けたライター、スコット・スナイダー。
しかしDCユニバースが『DCリバース』と呼ばれる新展開に突入し、各誌はライターとアーティストをほぼ一新した新体制に入ることになり、新たに始まったバットマン誌も例に漏れず、第3シリーズのライターはトム・キングに交代する事となりました。

しかし、スナイダーのバットマンはまだまだ終わらない!!
今度のスナイダーはDCリバースにて新創刊された新たな作品『オールスター・バットマン』誌を担当する事となったのです。
本作のコンセプトは、『5年に渡り担当し続けた第2シリーズで使っていなかったバットマンの主要ヴィランを用い、彼らを掘り下げたストーリーを書いていく』というもの。
ちなみにかつて存在した『オールスター』ブランドと本作は一切関係ありません。単なるタイトル被り。
【オールスター:スーパーマン】
【オールスター:バットマン&ロビン ザ・ボーイ・ワンダー】

『オールスター・バットマン』の第1巻となる『ワースト・エネミー』の主要ヴィランは、確かに第2シリーズではカメオレベルの登場しか果たしていなかったトゥーフェイス!!
そしてアートを担当するのは、マーベルで長らく活躍し、2014年にDCに移籍してきた迫力ある線が特徴的なアーティスト、ジョン・ロミータJr.だ!!

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薄汚れたコスチュームを身にまとい、チェーンソーを手に持つバットマン。鎖で腕を拘束され、憎憎しい表情をあらわにしているトゥーフェイス。そして背景に広がる荒野……これはジョン・ロミータJr.による#1のバリアントカバーなんですが、本作のストーリーが下地になっているこのカバーアートに惹かれる物を感じた人であれば、この作品は確実にハマるはず。

あ、ちなみに本作、スナイダーが手がけているといっても『第2シリーズを読んでいないと楽しめない』といったことはない作りです。事前に第2シリーズを読んでいれば、本作でがっつり活躍するバットマンの新サイドキック、『デューク・トーマス』に多少なり思い入れができるんじゃないかってくらいかな。バットマン第2シリーズが初出のキャラなので。
本作ではデュークが「サイドキックとしてはまだ修行中の身」として描写されているので、時系列的には『バットマン:ブルーム』ないし『バットマン:エピローグ』の直後あたりかもしれない。

お次は本作のあらすじをば。

***

トゥーフェイスは二重人格を患っているヴィランである。善なる人格の、ブルースの親友であるハービー・デント、心の闇に身を任せる、バットマンの宿敵であるトゥーフェイスが数ヶ月単位で入れ替わるのだ。しかし、トゥーフェイスが現れる感覚が日に日に短くなっており、このままでは『彼』が進めようとしている犯罪計画が実現してしまう。それを危惧したハービーはブルースにある頼み事をする。
実はハービーはトゥーフェイスを永遠に駆逐できる治療薬を仲間に作ってもらっており、それをブルースとハービーだけが知っている『例の家』に隠しているというのだ。
しかし、トゥーフェイスは既にデントの精神も侵食しつつある。これはバットマンを始末するための罠の可能性も否定できない。
それでもバットマンは親友であるデントを信じる方に賭ける事を決意し、その後ゴッサムで大事件を引き起こしたトゥーフェイスの移送役をバットマンが買って出た。全てはデントを救うために。

だが、トゥーフェイスもこの事態を静観しているわけではなかった。ゴッサムを離れ、二人が目的地に到着した瞬間、ゴッサム市民が抱えている『秘密のネタ』が白日の下に晒される仕掛けを施していたのだ。
それだけでなく、バットマンを倒して自分……トゥーフェイスを解放した者には、ゴッサムの組織犯罪の主張連合……『ブラック&ホワイツ』から金を奪い、足の付かない形で手渡すとニュース番組を用いて触れ回ったのである。

かくしてバットマンは『トゥーフェイス』の策により金に目がくらんだヴィラン達の猛攻を掻い潜りつつ、『ハービー・デント』を守りながら無事に目的地までたどり着くという、距離にして800kmに渡る長く険しいデスロードを走破しなければならなくなる……

二人仲良く死の旅路へ

***

……どうでしょうか。なんというかめちゃくちゃワクワクしてくる掴みじゃないでしょうか。
『オールスター』のタイトルの名に恥じず、ファイヤーフライにキラーモス、ブラックスパイダーにアミグダラ、チェシャーにカッパーヘッドなど、豪華(?)ヴィランが盛りだくさんでバットマンを襲ってくる絵面もまた堪らないんだこれが。
もちろん梟の法廷も襲いかかってくるし、初登場が1966年という大ベテランなヴィランチーム『ロイヤル・フラッシュ・ギャング』あんまり過ぎる扱いには笑うし涙するしかない。

そして、ゴッサムの組織犯罪の主張連合『ブラック&ホワイツ』のペンギン、ブラックマスク、グレート・ホワイトの3人が金を出し合い、バットマンとゴッサムで勢力を強めているトゥーフェイスの二人を始末するために最強の殺し屋『ビースト』を差し向けるという展開でさらに状況が混乱してくるというのがワクワクする。
『敵の敵は味方』というのもあり、一瞬とはいえ図らずもバットマンとトゥーフェイスが共闘するのは熱い。

野獣と化したビーストが二人を襲う!
旧ソ連で育成された伝説かつ最強の殺し屋『ビースト』ことアナトリ・クナイゼフ
『KGビースト』というダジャレみたいな名前の方が有名だが、ソ連が崩壊し、
かつてアメリカ政府が仕事を依頼し強化手術を施したこともあって名前から『KG』が取れた模様

◆感想
ストーリーの掴みや、様々なヴィランが矢継ぎ早に襲いかかってくるシチュエーションは最高に盛り上がるんだけれども、そこまで引っ張って引っ張っての幕引きがやや味気なかったりする。まあ正史世界を舞台にしている上、バットマンの本筋に影響を与える事を考えると、どうしても思い切った展開にはできないのかもしれないけど……ラストだけはちょっと肩透かしだったかな~、な一作でした。

それとキラークロックがニュー52以前を思わせるただの脳筋ヴィランと化し、金を得て闇社会のトップに立つために普通にバットマンに襲いかかってくるのには「あれっ!?」となりました。
(プライムアースのキラークロックはゴッサムの地下世界でワケアリの子供たちを保護し、また若手ヒーロー、アーセナルの良き理解者であるなど義理人情の強いキャラとして描かれており、バットマンもある程度彼に理解を示し積極的に捕まえるような事はしていなかった。これはきちんと各ライターの間で共有されている設定)
『バットマン:エターナル』ではスナイダーはちゃんと上記の設定を踏襲してキラクロを登場させていたんで、なぜ本作でこういう事になってるのかは地味に謎。プライムアースのキラクロの設定はすごく好きなんで、この辺の描写はもっと大事にしてほしかったぜ……

しかしトゥーフェイスというヴィランを、そしてブルースとデントの“かつての友情”についてとことんまで掘り下げた内容は一見の価値アリだし、巻末に収録されている、デューク・トーマスを創造したスナイダーによる『デュークがメインの短編』が収録されているのも見どころなので、スナイダーバットマンを追いかけてきた人にも十分勧められる一作です。
それに結末こそあっさり気味だったけど護送モノとして、ロードアクションとして見るとやはり面白いし楽しい。

ブルースとハーブかつての友情

あとこれは些細な部分なんですが、ニュー52に突入してからは顔を見せていなかった懐かしいバットファミリーの一人、ハロルドが本作で初めてプライムアース版のキャラとしてお目見えするのもニヤリとさせられました。
【Harold Allnut (New Earth) | DC Database | FANDOM powered by Wikia】
(※ニュー52以前の正史世界……『ニューアース』でのハロルドについて纏められたwikiの記事)

邦訳だと『ノーマンズ・ランド』『バットマン:ハッシュ』に登場していましたね。正直まさかの復活キャラで驚いた。『オールスター』の名を冠するだけのことはある。

本シリーズはとりあえず第2巻までは邦訳が決まっているのですが(まだ発売日は未定)、このシリーズは全14話……全3巻で完結しているので、なんとかラストまで刊行しきってほしいところ。
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