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08 2017

トム・キング&デイビッド・フィンチ他/バットマン:アイ・アム・ゴッサム

バットマンアイアムゴッサム表紙

「このほうがいいのかもしれない。
 これこそあるべき姿かもしれないじゃないか。
 僕はすべてを犠牲にした…すべて捧げた!
 僕の街を…ゴッサムを救うために!
 それなのに…救おうとしたのに…手ひどい仕打ちを受ける。
 メチャクチャにされる!自分の…すべてを…台無しにする!
 ゴッサムには、いつも怪物どもがやって来るんだ」


ダークナイト決断の時が迫る──

ゴッサムシティに2人のヒーローが現れた。
スーパーマンと同様の能力を持った覆面の2人組だ。彼らはお互いを「ゴッサム」「ゴッサムガール」と呼び合う。
かつてバットマンに助けられ、彼から多くを学ぶ2人のメタヒューマンだ。
しかし、もし彼らが悪に染まったらどうなるのか?そしてその責任がダークナイトに押しつけられるとしたら……。今、ヒーローの心を歪ませ、悪へと引き込む邪悪な力が解放された。
バットマンと仲間たちには、決断の時が刻一刻と迫っていた。


◆関連作品過去記事
【バットマン:ゼロイヤー 暗黒の街】
【バットマン:エンドゲーム】
【バットマン:ブルーム】

◆収録作品

2016年08月:Batman: Rebirth
2016年08月:Batman Vol.3 #1
2016年09月:Batman Vol.3 #2
2016年09月:Batman Vol.3 #3
2016年10月:Batman Vol.3 #4
2016年10月:Batman Vol.3 #5
2016年11月:Batman Vol.3 #6


◆I am Gotham. She is Gotham Girl. This is our city. We are here to save it.
スコット・スナイダーのバットマン第2シリーズが完結し、バットマンは新シリーズへ!

DCユニバース全体が『DCユニバース:リバース』を通して新展開に突入したことで、多くの作品がライターとアーティストを一新!新たなシリーズを創刊したのでした。
そしてバットマン第3シリーズのストーリーを手がけるのは新進気鋭のライター、トム・キング!
以前には邦訳も一巻だけ刊行されている『グレイソン』、マーベルではまさかのサスペンスホラーな作風で話題を呼んだ『ヴィジョン』第2シリーズなどを担当した方でもあります。

仕切り直しを図った新シリーズなので事前知識もほぼ不要といった感じ。『関連作品過去記事』に3タイトルほど挙げていますが、これは本作からバットマンの新たな相棒としてサポートしてくれる『デューク・トーマス』という青年がどういう人物なのかあらかじめ読んでおくと把握しやすいってなぐらいであり、読んでなくても本書の解説でフォローされているので大丈夫。

スナイダーバットマンとは当然地続きな世界観なので作中で前シリーズの要素に若干触れられることはあるけども、前シリーズの要素が色濃い内容かといわれれば別にそんなことはないのでこの第3シリーズから読み始めるのも全然問題ないと思います。
というわけでさっそく内容紹介。

本書はまず本編の第0話ともいえる『Batman: Rebirth』からの収録となっています。こちらはトム・キングとスコット・スナイダーの共作な模様。
アーティストはミケル・ハニンであり、何気に『グレイソン』を手掛けたコンビだったり。

『ウェイン家の資産が差し押さえられてしまった』という前シリーズでの展開の後始末も兼ねており、ルシアス・フォックスが動いてくれたことで政府の差し押さえから解放される場面があったり、新パートナーとなるデューク・トーマスに専用のスーツを与えたりなど、本編開始前の準備段階といったエピソードです。
ただ個人的に注目してほしいのは、プライムアース版カレンダーマンの登場でしょうか。

ニュー52版カレンダーマンとの対決

初登場時は記念日ごとに合わせたコスチュームを身に纏って犯罪を行うというB級ヴィランだったのですが、『バットマン:ロングハロウィーン』ではレクター博士を思わせる不気味で物静かな新解釈のヴィランとしてリデザインされて登場していました。

そして本作から登場するカレンダーマンはまたもこれまでとは趣の違ったヴィランに変貌しており、『季節とともに身体が老いていき、冬に一度死んだ後は脱皮して若返り復活する』という特殊能力持ちの男になっています。
この脱皮というのが比喩表現とかではなく、本当に自分の古い肉体を捨てて抜け出てくる上に、その描写が絶妙に気持ち悪くてインパクト抜群でした。
この第1巻ではこのエピソードでちょろっと出てくるだけですが、今後のエピソードにもちょくちょく関わってくるようなので、この新解釈のカレンダーマンがどう絡んでくるのか期待してる……結構好きなヴィランなんで……

で、このエピソードの次からいよいよ本編『アイ・アム・ゴッサム』がスタート!
アーティストは『ダークナイト:姿なき恐怖』『フォーエバー・イービル』などを担当してきた、重厚な絵柄が特徴のデイビッド・フィンチだ!

***

ストーリーは狂信的なテロ集団である『コブラ教団』が放った地対空ミサイルが民間のジェット旅客機に当たり、ゴッサムに墜落せんとしている、といういきなりクライマックスな状況からスタート。

バットマンは生身で直接旅客機に張り付き、機体を安定させるための装置を取り付けて湾に不時着させる作戦を取るが、この方法では数多くの命と街を救うことは出来るが、不時着の衝撃を直接その身に浴びるバットマンは無事では済まない。
残された皆に渡す手紙が入った金庫の暗証番号をアルフレッドに伝え、命を捨てる覚悟を決めたその時!

突然『ゴッサム』『ゴッサムガール』と名乗るスーパーパワーを持った謎の二人組が現れ、バットマンの窮地を救うのであった……

***

ゴッサムとゴッサムガールとバットマン

……というわけで、この謎の二人組を軸に展開するのが本書『バットマン:アイ・アム・ゴッサム』の物語。
謎の二人といっても彼らはかつてバットマンに命を助けられた過去を持つ若者であり、バットマンのような正義のヒーローに憧れ、スーパーパワーを手にしたことをきっかけにゴッサムの守護者として活動を始めたという混じりっ気のない善人です。
バットマンを慕い、バットマンに近づくために「正しい戦い方」を師事してもらい、皆でゴッサムのために戦う……
ゴッサムとゴッサムガールはスーパーパワーを持っているのもあって活動の幅も広がり、「これでゴッサムも安泰だな!」と思われたのですが、ゴッサムには怪物が潜んでいる。

政府の秘密機関タスクフォースXの手駒であったビランのヒューゴ・ストレンジとサイコ・パイレートが裏切り脱走。そして彼らはゴッサムに現れた新ヒーローの二人に目をつけ、街を混乱の渦に陥れる大惨事を引き起こすのです。
またそれだけでなく、元は単なる一般人だったゴッサムとゴッサムガールが、そもそもどういう経緯でこのスーパーパワーを手に入れたのか?という問題もある。
どんどんと深い闇を突き進むような展開に発展していくため、とにかく目が離せない……!

ストレンジ教授とサイコ・パイレート

ちなみにヒューゴ・ストレンジとサイコ・パイレートが脱走したのはスーサイド・スクワッドの司令官であるアマンダ・ウォラーがポカしたせいなんだけど、そこでバットマンを利用して再捕縛を目論み、その目的がバットマンにあっさりバレてもなおバットマンとの取引の中で優位に立とうとする姿勢には腹立たしくなること請け合いです。
スーサイド・スクワッド本編でもそうだけどほんと憎らしいおばさんだなこの人!
邦訳スーサイド・スクワッド1巻の頃にちらっと家族思いな姿が描かれたりしてたけどそんなんで僕はほだされたりは……ほだ……ほだされ……

ちなみにニュー52開始時のアマンダはスリムな美人に描かれていましたが、実写映画で旧来のビジュアルが採用された影響なのか本作ではいつの間にか太っておりました。
せっかくダイエットに成功してたのにちょっと可哀想。

◆感想
面白かった!!!!!
前シリーズのスナイダーバットマンは終始一貫して結構重めのシリアスな作風だったけど、このトム・キングバットマンはシリアスではあるけど何気に合間合間にクスっと来るギャグシーンも入ってたりするのが特徴的でした。
個人的にツボだったのは、現場に急行中のブルースに頼まれて時間稼ぎをするために、代わりにバットマンのスーツを身に纏って敵を困惑させるアルフレッドの姿ですね。

アルフレッドバットマン「ご安心を!ダークナイトの帰還です!」
敵「いや誰だよお前……バットマンじゃないだろ……何してんの……」

迷場面すぎるので是非実際に読んでみてほしい。

全編通して感じられる奇妙な雰囲気と、その雰囲気を壊さない、エッセンス程度に加えられるギャグシーンとのバランスが実に絶妙であり、かなり好きな作風ですトム・キングのバットマン。
そして本書のサブタイトル、『アイ・アム・ゴッサム』に込められた意味が判明する第5章の下りは最高に痺れる……!
スナイダーバットマンはあまりスーパーパワーをストーリーに絡めず、ある程度理屈付けした能力を持ったキャラを多く出していましたが、このトム・キングバットマンは結構スーパーパワー要素を色々盛り込んでいるのが印象的。

本作は「アイ・アム三部作」の第一部にあたるエピソードであり、この後の2巻「アイ・アム・スーサイド」が第二部、3巻「アイ・アム・ベイン」が最後の第三部になるとのこと。
現時点で早くもアイ・アム三部作は完訳が決まっているどころか、その後に始まる新エピソードである第4巻『The War of Jokes and Riddles』がまだ向こうでもTPBが発売前であるにも関わらず邦訳決定済み!
相変わらず小プロはバットマンを全力で追いかけてくれるみたいなので、今から刊行が楽しみです。
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4 Comments

No Name  

No title

アメコミ更新嬉しい…嬉しい…

改めてみると脱走組のメンバーがヤバすぎる。精神攻撃耐性相当無いと発狂確実なのではこれ

2017/11/08 (Wed) 22:15 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>No Nameさん
>精神攻撃耐性相当無いと発狂確実なのではこれ
単に強い力を持っているヴィランよりも数段恐ろしい相手ですよね…

2017/11/10 (Fri) 14:42 | EDIT | REPLY |   

くすたたけおみ  

No title

アマンダさんのポカですが、ヴィラン逃しただけでもアレなのに部下の一般兵が行ったお礼参りも中々にヒデェと思いました。
ヴィランどころか部下の管理もできてないがな。

個人的にはサイコパイレートはクライシス的なあの設定が残ってるのか、終盤のゴッサムガールの不穏なモノローグが気になりますかね。
後者はバットマンなのでなんかシレっと何とかなりそうな気もするんですが。

2017/11/11 (Sat) 10:42 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>くすたたけおみさん
ゴッサムガールが今後どのような活躍をするのかもかなり気になるところですねー。
ラストのずっと「ハンクと会話している」彼女を見てると不安になる…

2017/11/12 (Sun) 20:23 | EDIT | REPLY |   

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