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05 2017

ジェイソン・ラトゥーア&ロビー・ロドリゲス他/スパイダーグウェン

スパイダーグウェン表紙

「もうこれ以上マスクで真実を…自分を隠さなくていいならそれが一番だけど…
 マスクなしじゃ人々を助けられない。
 真実は誰のためにもならない。より強い痛みを生むだけ…
 問題は私なの、父さん。グウェン・ステイシーが問題なんだよ」

「グウェン、よく聞け。
 お前が何者になろうとどんなパワーを持とうと…お前は人間なんだ。
 人間は間違いをおかすものなんだ。
 ピーターのことで自分を責め続けているんだな。
 だが、お前を許せるのは…お前しかいないんだぞ」


🕷
ェン・ステイシー
ダーマンした

舞台は別の時間軸の世界。放射能を浴びたクモに噛まれ、ヒーローになったグウェン・ステイシー。日常生活やバンド活動、家族、友情、そして皆を守るための戦い。波乱に満ちたグウェンの冒険が始まる!


◆関連作品過去記事
【スパイダーバース】
【エッジ・オブ・スパイダーバース】
【ワールド・オブ・スパイダーバース】

◆収録作品

2014年11月:Edge of Spider-Verse #2
2015年04月:Spider-Gwen #1
2015年05月:Spider-Gwen #2
2015年06月:Spider-Gwen #3
2015年07月:Spider-Gwen #4
2015年08月:Spider-Gwen #5


◆グウェン・ステイシー=スパイダーマン!?
グウェン・ステイシーといえば正史世界……アース616においてグリーンゴブリンの手にかかり悲劇的な最後を遂げたピーター・パーカーの元恋人。
【過去記事:スパイダーマン:ステイシーの悲劇】

その死はスパイダーマンのストーリーの中でも非常に重要な出来事となり、ベンおじさん同様、グウェンは決して生き返ることのないキャラクターとして扱われ続けていました。
しかし、2015年のスパイダーマン関連のクロスオーバーイベント『スパイダーバース』において、並行世界アース65のグウェン・ステイシーがスパイダーマン……『スパイダーグウェン』として登場するという思わぬ形での復活を遂げることに!!
スパイダーバースは東映版スパイダーマンの登場が話題となっていましたが、それと同じくらいキュートで秀逸なキャラデザインも相まって『スパイダーグウェン』は日本でも結構な話題性と知名度と人気を誇っている印象。

アメイジングヤマグチスパイダーグウェン
海洋堂から美少女フィギュアが発売されたりなど日本でもどんどんキャラ人気が高まっているスパイダーグウェン

この邦訳版はスパイダーグウェン第1シリーズ……全5話のミニシリーズであり、原書では第0巻にあたる『Spider-Gwen Vol. 0: Most Wanted?』の日本語版となっています。
時系列的には前述したクロスオーバーイベント『スパイダーバース』後のお話となっているのですが、スパイダーバースの要素は大して引きずっていないのでいきなり本書から読み始めても全然OK。
スパイダーバース前日譚『エッジ・オブ・スパイダーバース』に載っていたスパイダーグウェンのオリジン回も本書に再録されているので無問題です。
事前知識がほぼ不要なのはエルスワールド物の強みだと常々思う。

この世界ではグウェン・ステイシーが放射線を浴びたクモに噛まれてスーパーパワーを獲得、『スパイダーウーマン』(正体がグウェンであることは世間には秘密であるため、『スパイダーグウェン』はあくまでタイトル名です)として活動し、その一方でいじめられっ子だったピーター・パーカーはグウェンに守られてばかりの自分を変えるため、薬物を投与して怪物リザードに変貌してしまうが暴走し、スパイダーグウェンと交戦した後になんらかの事故が起きて死亡。
デイリー・ビューグルのJ・ジョナ・ジェイムソンのネガティブキャンペーンにより、「ピーターを殺したのはスパイダーウーマン」という誤解が広まってしまった……というのが基本設定。
父親のジョージ・ステイシーはジェイムソンの命でNY市警の警部としてスパイダーウーマンを追っていたがその正体が自分の娘である事を知り、ヒーローとして活動する事に否定的ではあるもののこっそりと協力してくれる立ち位置となっています。

父ジョージと娘の会話

このアース65は単にグウェンがスパイダーマンと化しただけでなく、色々な設定が正史と食い違っているのが本作の魅力の一つでもあります。
例えばグウェンは普段の顔はガールズバンド『メリー・ジェーンズ』のメンバーでありドラム担当、他のメンバーは正史世界ではピーターの恋人であるエム・ジェイがボーカル&ギターを担当しており、同じく正史世界ではデイリー・ビューグルの同僚であるグローリーがキーボード担当、正史世界ではこれまたデイリー・ビューグルで秘書を勤めていたベティがベース担当になっていて、ピーターと関わりのあった女の子たちが設定を変えて勢揃い。
あと正史世界では『ライノ』としてスパイダーマンの前に立ちはだかってきたアレクセイがこの世界ではコスチュームに身を纏うことなくギャングの用心棒となっていたり、ピーターが死亡したこの世界では命を落とすキッカケが無くなったためにベンおじさんが生存していたりなど実に様々。

面白いのが正史世界ではヒーローであった人物の立ち位置の変化。
処刑人『パニッシャー』として活動していたフランク・キャッスルはこの世界では海兵隊を経てNY市警の警部となった設定。強引な捜査手法で名を上げてきた少し危ない人物です。妻子は喪っていないようですが別居中だとか。切ない。
特殊犯罪本部の責任者としてスパイダーウーマンを追うというポジションで登場し、お馴染みのドクロマークを纏って襲い掛かってきます。

衝撃的なのが正史世界では『デアデビル』として活躍していたマット・マードック。
エッジ・オブ・スパイダーバースでもちらっと登場していましたが、この世界ではNYを牛耳るギャング、キングピンの右腕として働く悪徳弁護士であり、忍者集団ザ・ハンドの一員でもあるヴィランになっています。
キングピンを逮捕したステイシー警部への報復を、そしてスパイダーウーマンをキングピンの傘下に引き入れるために動き出す冷酷な危険人物。本作ではスパイダーウーマンの宿敵ポジションに収まっているため、マードックとの戦いの行方にも注目です。

容赦なく拷問するマードック
キングピンが目を付けていた事を知らずにスパイダーウーマンに襲いかかったバルチャーを拷問するマードック
人心掌握にも長けている“マット・マーダードック”の異名は伊達ではない

◆感想
「もしグウェン・ステイシーがスパイダーマンになったら?」という設定だけ見ると一発ネタくさいのに、色々面白い感じに正史世界から設定をアレンジして全く新しいスパイダーマン像と世界観を丁寧に形作っており、単に新鮮なだけじゃなく先が気になるストーリーになっている実に魅力たっぷりな一作。
親友のピーター・パーカーを自身の目の前で喪ってしまい、ずっと心の中に闇を抱え続けているグウェンの姿や、ピーターを失いつつも何とか立ち直ろうとしているベンおじさん、そしてピーターが抱えていた苦しみに気づけず悩み、ピーターが憧れていたスパイダーウーマンの活動を調べ、彼女の事を理解しようと努めているメイおばさんの姿、そしてグウェンとの会話は本書屈指の名シーンだと思う。

グウェン・ステイシーとメイおばさん

あと各登場人物のビジュアルがいちいちツボなのだ……主人公のグウェンひとつ取っても正史とはまた違うダウナー系美女だったりしますからね。
ちなみにスパイダーグウェンは2015年12月に第2シリーズがスタートし現在も連載中。

ぶっちゃけこの第1シリーズの『Most Wanted?』編は読者に世界観を把握させる程度に留まっており、これからストーリーが大きく動き出しそうな所で終わっているので、是非とも続きの邦訳を出してほしいところなんだけど本書の解説書にはこの後のストーリー展開のざっくりとしたあらすじが記載されているんですよね……今のところ続きの邦訳を出す意志は無さそうな感じ。
まあホントにざっくりとしたあらすじでしかないので、邦訳希望の声が大きければ続刊の可能性も無くはない……のかな?

   
本格連載である第2シリーズの単行本(原書)

第2シリーズもかなり高評価みたいだし、本書の時点では名前しか出なかったノーマン・オズボーンが登場したり、『アルティメット・スパイダーマン』のマイルズ・モラレスと共闘したり、『Mr.マーダーハンズ』というコードネームで活動するローガンがグウェンに襲い掛かってきたりなど目を引く要素がこれまた多めなのでこの後のストーリーもやっぱり日本語で読みたい!
個人的にこのアースのマットやフランクのキャラが非常に好みで動向が気になるのだ。
 
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