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ガース・エニス&ジョン・マクリア他/ヒットマン Volume5

ヒットマン5巻表紙

「昨日の晩にな、変な夢見たんだ。お前と俺でヌーナンに入るとさ」
「おまえのくだらん夢に出演するなんて俺も暇だな」
「そうそう、お前が戸口に詰まらなかったから夢だってわかったんだよな。
 とにかくいつもみたいに入ったらな、みんないたんだ。
 とにかく大勢いてすごく盛り上がってた。
 煙草の煙がもうもうでな、大声出さないと聞こえない。
 バーの向こうにはショーンがいて、昔みたいに10人分の仕事してた。
 パットもいた、リンゴもな。楽しそうだった。
 ボブ・ミッチェル、イギリスの空挺部隊のやつもいたし、俺の姉のフランシスまでいた。
 みんなこっちを向いて急に静かになった。笑顔で俺たちを迎えてくれる。
 ショーンが言うんだ。『店のおごりだ。看板はなしだ』」

「だが銃は戸口に置いてってくれ」


ゴッサムシティきってのヒットマンに訪れる
最終審判
The final reckoning
殺し屋稼業の容赦ない現実。
トミーは逆境に打ち勝つことはできるのか――。


◆関連作品過去記事
【ヒットマン Volume1】
【ヒットマン Volume2】
【ヒットマン Volume3】
【ヒットマン Volume4】

◆収録作品

1999年02月:Superman 80-Page Giant #1
2000年07月:Hitman #51
2000年08月:Hitman #52
2000年09月:Hitman #53
2000年10月:Hitman #54
2000年11月:Hitman #55
2000年12月:Hitman #56
2001年01月:Hitman #57
2001年02月:Hitman #58
2001年03月:Hitman #59
2001年04月:Hitman #60
2007年11月:JLA/Hitman #1
2007年12月:JLA/Hitman #2


◆CLOSING TIME
邦訳ヒットマンはこの第5巻が最終巻。
最終巻という事は当然ストーリーも畳んでいくわけで……これで終わりというのは寂しいけれども、有終の美を飾るにふさわしいエピソードばかりで構成されている一冊でした。

まず『Superman 80-Page Giant #1』というスーパーマン誌の特別号に収録されていた短編『HOW TO BE A SUPER-HERO(スーパーヒーローになろう!)』
ヒーローチーム『セクション・エイト』の飲んだくれのリーダー、シックスパックがメトロポリスに立ち寄ってスーパーマンと一緒に街をパトロールする……という夢を見るエピソード。
ルーサーを見るなり証拠も無しにいきなり殴りかかったり、刑務所に放火して囚人をまとめて焼き殺そうとしたりなど考えなしに行動するシックスパックを毎度止めて諌め諭すスーパーマンとの息の合わないコンビプレーが楽しいギャグ回です。
ヒーローとしては大分アレだけど、正義を愛する心だけは間違いなくスーパーヒーローなシックスパック。

お次はそんな彼のメイン回であり、久々のセクション・エイト登場回でもあるエピソードが『SUPER GUY(スーパーガイ)』
月に一度メンバー全員が集まり、ヒーローチームとして様々な議題について語り合うセクション・エイト。
しかしメンバーの一人であるフレンドリーファイアーは、自分含めただの社会不適合者の集まりが毎月変な格好して下水の糞溜まりで話だけして、実際にはろくすっぽ活動しないこの現状にいい加減嫌気がさしていた。
そんな最中、ゴッサムに異次元からの悪魔が召喚され、ゴッサムどころか世界の危機が訪れる。
セクション・エイトは異次元から現れた最悪の強敵に勇敢にも立ち向かうが、その圧倒的な実力差の前に為す術もなくやられていく……
本作はセクション・エイトが、そしてシックスパックが最高にカッコ良いスーパーヒーローしている傑作エピソードです。
これまでのエピソードではいつもヌーナンのバーで飲んだくれてるろくでもない姿ばかり描かれていたけど、本エピソードのシックスパックは間違いなくスーパーヒーローだったぞ……!

それがスーパーヒーローってもんだろ

そしてヒットマン本編のラストエピソードがこちら、『Closing Time(終わりの時)』
前巻にも登場したマギー・ロレンゾが、2巻以来の登場となるトルーマンが先導しCIAが密かに研究しているスーパーヒーロー生産計画の人体実験に使われた人間の成れの果てを目撃してしまい、機密が漏れる事を恐れたCIAに命を狙われる事となってしまった。
マギーはトミーを頼り、トミーは彼女を守るために全身全霊を尽くす事を誓う。

そこに義憤からトルーマンの元を離れ、彼の計画を食い止めるためにトミーに協力を頼みに来たエージェント、キャサリン・マカリスターも登場。
トミーがスーパーパワーを持つきっかけとなったクロスオーバーイベント『ブラッドラインズ』がここにきて重要な役割を果たし、トミーとナットの少年時代や海兵隊時代の回想などを織り交ぜつつ物語は終局に向かっていきます。

俺たちがそう言うからだ

ヒットマン本編は『Closing Time』で完結ですが、巻末には2007年に発表された全2話のミニシリーズ『JLA/Hitman』も収録!
時系列的には第3巻収録の『Of Thee I Sing』以降、第4巻収録の『FOR TOMORROW』までのどこかに入る感じでしょうか。
でもヒットマン本編のアフターストーリー的な部分もある一作です。
スーパーマンが語るトミー・モナハンという男の人物観は必見。

こちらもブラッドラインズが絡むエピソードであり、『ブラッドライン事件』に登場した寄生生物を調べているジャスティス・リーグがバットマンの提案でブラッドライン計画の生き残りであるトミーをサンプルとしてウォッチタワーに召喚。
だがそこに寄生生物らの襲撃を受け、ジャスティスリーグはトミーと共闘して事態の収集にあたる事に……というお話。
本エピソードでは第2巻の時に少々こき下ろしすぎたグリーンランタン(カイル・レイナー)への露骨なくらいなフォローが入ってるのにちょっと笑う。
でもゴッサムでとんでもない目にあっていた事実が判明してやっぱり可哀想な扱いだったり。

カイル君はブエノさんに…

◆感想
面白かった!!!!!!!!!!
……と同時に渋く物悲しいストーリーの締めくくりに泣いた。
普段は要所要所で過激なブラックユーモアを盛り込んでくるくせに泣かすところでは本気で泣かしにかかるのがズルい。
トミーは決してヒーローではない、スーパーパワーを持ちこそすれ多くの人々の畏敬を集められるような存在ではないただの殺し屋なんだけど、死んだパットがヌーナンに対して語った「いつかトミーは何かすごいことをやる」って発言が事実になったというのがもうね……

あと3巻で色々迷いが出ていたスーパーマンをヒーローではない殺し屋のトミーだからこそ、彼が思っても見なかった視点から慰めることができた上、本巻巻末収録の『JLA/Hitman』での出来事を通して、ゴッサムの片隅で生きていた半端な善人である殺し屋のトミーは最も偉大なスーパーヒーローであるスーパーマンの心に留まる存在になれたってのがまたグッとくる。
この5巻の背表紙のキャラがスーパーマンだったのが初見では不思議だったのだけれど本編を読んで納得した。
殺し屋という道を外れた稼業で食べているのに悪人以外は殺さないという妙なポリシーを持っていて、なおかつ情けない一面を見せる事も多いトミーの姿は最高にカッコ悪くて最高にカッコ良い。

会社が続く以上正史世界のストーリーは(基本)延々と続いていくのがアメコミだけども、ヒットマンってゴッサムシティの片隅を話の舞台として借りつつも登場人物はほぼほぼオリジナルであり、かなり独立性の強いストーリーを展開し続けてきたのもあって様々な伏線もきっちり回収してすごく綺麗に話が完結してるのね。おかげで読みやすく、かつしっかり面白いってのが本当に素晴らしい!

近年完訳されたデッドプール第3シリーズホークアイ第4シリーズモリソンバットマンとかあの辺の人気キャラのコミックはなんだかんだで次に続けるための伏線を貼ったり完全決着とはいかない形で終了してしまってましたから、正史世界でありながらそういう大人の事情的なアレを受けていないのは本作の大きなオススメポイント。
予備知識が全く要らないので、本作をきっかけにアメコミに手を出してみるのも充分ありだと思う。っていうか本作は登場人物やストーリー展開に魅力がありすぎるのでもっと広く読まれてほしい。

いやしかし邦訳続刊を諦めてたヒットマンがここにきて完訳されるなんて思わなかったなぁ……
ありがとう、エンターブレイン!!

ヒットマン最終カバー

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