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19 2017

ガース・エニス&ジョン・マクリア他/ヒットマン Volume3

ヒットマン3巻表紙

「俺ぁ今まで楽してたから気をつけようぜってだけだよ。
 なんだ、おまえ善行ってのは」

「わからんが。最初の一歩ってやつだ」
「ふぅん。なぁおまえは世界で一番の親友だし死ぬ日まで背中を守ってやるけどよ…
 にしても時々お前の偽善には吐きそうになるぜ」


正義の味方から超人、ギャング―etc
ゴッサムに争いの火種は絶えない!!


◆関連作品過去記事
【ヒットマン Volume1】
【ヒットマン Volume2】

◆収録作品

1998年02月:Hitman #23
1998年03月:Hitman #24
1998年04月:Hitman #25
1998年05月:Hitman #26
1998年06月:Hitman #27
1998年07月:Hitman #28
1998年08月:Hitman #29
1998年09月:Hitman #30
1998年10月:Hitman #31
1998年11月:Hitman #1,000,000
1998年12月:Hitman #32
1999年01月:Hitman #33
1999年02月:Hitman #34
1999年03月:Hitman #35
1999年04月:Hitman #36


◆銃と煙草をもってヒットマンが帰ってきた!
2012年9月、『犬溶接マン』という奇妙なヒーローがツイッター上で話題となり、その流れで犬溶接マンの所属するこれまた奇妙なヒーロー達で構成されたヒーローチーム『セクション8』に注目が集まり、ライター、ガース・エニスが手がけた元ネタであるDCコミックスの作品『ヒットマン』という作品の知名度が日本で急激に上昇。
その勢いのまま翌年2013年の8月にヒットマンの邦訳本1巻発売という、当時の邦訳アメコミ界隈では物凄くビックリな出来事がありました。
(この頃はまだまだ日本で知名度が高めなバットマンやアベンジャーズ関係の邦訳が主であり、日本ではマイナーなヒーローの作品の邦訳はなかなか出なかった。『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』の邦訳刊行もこの年)

そのまま矢継ぎ早にセクション8が再結成するエピソードを収録した邦訳第2巻も刊行。ガース・エニスのハードボイルドとブラックユーモアが絶妙に合わさったヒットマンの評判は日本でも上々。このまま安定して3巻も刊行されて完訳に繋がるかと思われたのですが……
なんと3巻以降の刊行がストップ。原書TPBで言えば4巻相当分まで訳したところでストップ。

「やはり邦訳アメコミの価格設定は興味を持った人を遠ざけてしまうのでは」「結局ネットでちょっと話題になっただけではたいして売上に繋がらなかったのでは」など、刊行停止について様々な憶測が流れる始末。
ヒットマンは短編&数話完結の中編がメインなので刊行が止まってもストーリー的にはあまり問題がなかったとはいえ、やはり最終話まで日本語で楽しみたかったのが人情というもの……
いつまで経っても邦訳3巻のアナウンスは現れず、邦訳でヒットマンを楽しんでいたアメコミファンは続きの刊行を諦める事となったのでした……

しかし昨年の2016年12月、唐突にエンターブレイン公式サイトの発売予定欄にヒットマン3巻~5巻の文字が出現!
突然の完訳決定に加え、3巻から最終巻である5巻までを同時発売というややもすればトチ狂ったかのような邦訳刊行に全ヒットマンファンは沸き返りました。
ほんとに……ほんとによかった……!!

俺たちゃいつでも戻ってくるぜ

◆TOMMY'S HEROES
ヒットマン1巻の#5でトミーが披露したバカ話を覚えているだろうか?
湾岸戦争で知り合ったトミーとナットが見張り番中、イギリスのSASの斥候をイラクの特殊部隊と勘違いしてぶち殺してしまい、大事になる前に二人で必死に死体を埋めたというあの盛大なやらかし話
SASからすれば、「SASを殺してものうのうと生き延びられる」と敵味方に思われてはメンツが立たない。

あの話がまさかの伏線として生きており、ゴッサムのギャングの親玉『男子便所のルーイ』への襲撃に動いている最中のトミーとナットがSASの人間に命を狙われ、面倒な三つ巴の戦いに発展してしまうというエピソード『WHO DARES WINS(勝利は危険の先に)』から始まるのがこの第3巻です。
戦闘のプロであるSASの襲撃を受け、「あれは不幸な事故だったんだ!」と情けなく言い訳して逃げ惑うことしかできなかったトミーとナット。

この出来事を通して“マジヤバなワル気取り”だったトミーとナットは自分の小ささを思い知る。
そんな中、第三世界問題機関に所属しているというマーチンデイルという男から発展途上国であるティナンダの傭兵として雇われ、革新派を一掃する仕事の依頼を受けるのだが、偽善とはいえ少しでも善行を積んでいこうという考えに至ったトミーは罪もない村人を容赦なく殺害するティナンダ側に付いて革新派の人々を倒すことに疑問を持ち始め……というのが『TOMMY'S HEROES(トミーの大作戦)』というエピソード。

ティナンダ共和国のキジャロ大統領の護衛である超人『スカル&スカーレットローズ』が村人たちに対して行った蛮行を見て仕事を放棄することを決めるシーンや前述したSASのメンバーの一人と親しかったという好人物、ボブ・ミッチェルとの対話など、とにかく名シーンが多い一編です。“ヒットマン”という作品のテーマが詰まっているエピソードなのは間違いない。

お前はそういう人間じゃねえ

さらに本巻ラスト2編の『Katie(ケイティ)』というエピソードでは、なんとトミーの姉であるフランシス・モナハンが登場。
自分の出生の過去を知り、さらに母親を追い詰めて殺害した歪んだ性格の父親、トム・ドーソンの存在を知り……と、読了後の虚しさが大きい一作で締めくくられます。
1巻と2巻はわりとギャグ寄りだった分、この第3巻のストーリーはシリアスの密度が濃くて読み応えが凄い。

◆感想
面白かった!!!!!
この第3巻はトミーという男の掘り下げにかなりのページを割いていて、なかなかシリアス寄りな一冊に仕上がっていました。
重要エピソードが詰まりまくっている見逃せない内容になっていたと思います。
本巻は殺し屋物というより、トミーの過去に絡めた軍人物的な一冊だったのが印象的。

あとね……この第3巻には1999年のアイズナー賞でベスト・シングル・イシューを獲得した『Hitman #34』も収録されてるんですよ……

スーパーマンとの語らい

新聞には載らないだろうが大きな失敗を犯し、ひとり考え事をするためにゴッサムのとある屋上にふらりと立ち寄ったスーパーマン。
そこで偶然トミーと出会い、スーパーマンは自身の失敗について語る……というエピソード、『Of Thee I Sing(君に捧げる歌)』
世間から外れた生き方をしている殺し屋と、常に完璧を求められる世界最高のヒーローの対話。
ガース・エニスはスーパーヒーローアンチなイメージが強い……っていうか実際アンチ気味な作風なんだけど、「こういう視点からのスーパーマンを書くことも出来るんだ……!」と感動し、エニスのライターとしての実力に改めて感服した一編でした。

ただシリアス寄りとはいえいつものブラックユーモアもしっかり用意!
アホのハッケンは相変わらずシリアスの中の清涼剤ないし癒やし枠として動いてくれますし、クロスオーバー企画『DCワンミリオン』という通算100万号を迎えるであろう853世紀に刊行された(という体)の『Hitman #1,000,000』はヒットマンのストーリーがなぜだか正義のヒーローのお話として伝わってしまっているという完全にギャグ一辺倒なエピソードでした。

やっぱりガース・エニスの作品は面白いな……全話邦訳というこの機会に広く読まれてほしい。
それじゃあ俺第4巻読みに戻るから。
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2 Comments

No Name  

>2巻以降の刊行がストップ

以降 だと2巻も含まれますので、“3巻以降の刊行がストップ”が正しいです

2017/05/20 (Sat) 13:58 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>No Nameさん
こういう間違いが一番恥ずかしいヤツなんやで…(他人事のような発言)
ご指摘ありがとうございます。修正しました!

2017/05/20 (Sat) 21:21 | EDIT | REPLY |   

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