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26 2017

ガース・エニス&ダリック・ロバートソン他/ザ・ボーイズ BOOK ONE

ザ・ボーイズ1巻表紙

「どうしたよ?来るとは思ってなかった?」
「おやおや」
「隠れられると思ってるのか?俺たちを脅して、チームを潰したくせに、
 顔を合わせる度胸はないのか?」

「ハハ」
「おまえらが誰か、どうして俺たちを潰そうとしたのかは知らないが、
 ここで終わりにしてやる。
 俺たちはティーンエイジ・キクス。この名は病院から退院しても忘れられないぞ」

「ハハ…ワハハハハハ」
「今こそ俺たちは…クソッタレ!いったい全体おまえは何を笑ってるんだ!」
「アハハハハハハハ。なんてこった。よーし、ボーイズ。
 お仕置きにケツを叩いてさしあげようぜ」


THIS IS GOING TO HURT

『誰がウォッチメンを見張るのか?』という古くからの問いに答えた作品、
それがこの『ザ・ボーイズ』だ
  ――サイモン・ペッグ


コスチュームを着たヒーローが空を飛び、マスクをつけたヴィジランテ(自警団)たちが夜を徘徊する世界では、
彼らがヤリすぎないよう誰かが見張っていなければならない。スーパーヒーローの中には、“正義の味方”とは言えないような、やっかいな連中も存在するからだ。そこで登場したのが「ザ・ボーイズ」。ある意味、地上で最も危険な能力を持つスーパーヒーローに対抗するため、CIAが招集したのは、やっぱり危険でクレイジー、一筋縄ではいかないやっかいなヤツらだった。ビリー・ブッチャー、ウィー・ヒューイ、マザーズ・ミルク、フレンチマン、フィーメール、彼らは今日も“スーパーヒーローどものご乱行”に目を光らせる!

「Get Some」では、闇の復讐者テックナイトとその元パートナー、スインギングは、問題を抱えていた。ひとりは自分の過剰な性欲を抑えることができずに悩み、もうひとりは殺人者に…?「ザ・ボーイズ」のヒューイとブッチャーが問題解決に乗り出した!
「Glorious Five Year Plan」では、「ザ・ボーイズ」一行は味方のラブ・ソーセージのいるロシアへ。敵がマフィアと組んで、多くの人命を脅かす陰謀を企てていたのだった…


◆収録作品

2006年10月:The BOYS #1
2006年10月:The BOYS #2
2006年11月:The BOYS #3
2006年12月:The BOYS #4
2007年01月:The BOYS #5
2007年02月:The BOYS #6
2007年05月:The BOYS #7
2007年07月:The BOYS #8
2007年08月:The BOYS #9
2007年09月:The BOYS #10
2007年10月:The BOYS #11
2007年11月:The BOYS #12
2007年12月:The BOYS #13
2008年01月:The BOYS #14


◆THE NAME OF THE GAME
マーベルでは『パニッシャーMAX』、以前『犬溶接マン』というヒーローが大きく話題となったDCの『ヒットマン』などを手がけてきたアンチヒーロー物を得意とする鬼才ライター、ガース・エニスがかつて発表したオリジナル作品『ザ・ボーイズ』の邦訳版がまさかの刊行と相成りました!

この作品、英ウィキペディアによるともともとはDC傘下のワイルドストームレーベルから刊行されていたのですが、エニスの描く本作のアンチヒーロー色が強すぎた事が原因で#6まで発売した所で続きの刊行が突如キャンセルされたというエピソードがあったりします。凄まじいな!
『ウルヴァリン:エネミー・オブ・ステイト』にエニスが寄せたヒーローアンチ全開な序文を急に思い出した。

ガース・エニス「普段の私は、スーパーヒーロー・コミックを読むくらいなら、ジタバタ暴れるイカを顔面に釘付けされたほうがマシだと思っている。
好きじゃないんだ。昔からそうだ。超能力、タイツ、言葉遣い、態度、各キャラクターにつけられた名前そのもの。それについて考えることすら面倒くさい。たしかに『ウォッチメン』や『ミラクルマン』や『トップ10』といった傑作はあるだろう。だが、これらは例外と言える。大手出版社のスーパーヒーロー物?吐き気がするね。」


止む無くその後は『ダイナマイト・エンターテイメント』という出版社に移籍し、無事続きの#7の刊行がスタート、全72号と3つの短編作品『Herogasm』『Highland Laddie』『Butcher, Baker, Candlestickmaker』を発行して完結したとの事。
で、この邦訳本は全12巻の原書TPBのうち第1巻と第2巻を合本化したボリュームたっぷりな一冊に仕上がっております。

本作は危険なスーパーパワーを持ち、傲慢な振る舞いを行うスーパーヒーロー達のお目付け役兼始末屋として活動する“ザ・ボーイズ”の活躍を描くコミック。
そういう内容だけあって、本作に登場するスーパーヒーローの多くは強力な力と手にした権力にあぐらをかいた、モラルも低いロクデナシばかりが登場。
作中では最も偉大なヒーローチーム、『セブン』に新メンバーとしてスターライトことアニー・ジャニュアリーという女性が加入する一幕があるのですが、チームリーダーであるホームランダーに最終テストとして『しゃぶる』事を要求されるとてつもない画が飛び出したり、世間に愛されているとは言い難い若手ヒーローチーム『ティーンエイジ・キクス』は建物を借り切って乱交パーティーに興じていたりなどまあ本作で描かれるヒーローの姿は大体ろくでもない。

理想と現実のデカすぎるギャップに苦しむスターライト
憧れのヒーローチーム『セブン』に加入したものの、
世間に見せている顔とあまりに違いすぎる彼らの姿に苦しむスターライト

そもそもこの作品はスーパーヒーロー達はまともに戦闘訓練をこなしてきたわけではなく、ヒーロー活動自体も自分で勝手にやると決めただけの、本来何の免許も権限も持っていない素人の一群なのだ。
そんな奴らなのに一般市民を巻き込んで死に追いやる事故を起こしても、警察やホワイトハウスや軍隊ですら傍観して奴らの好きにさせている……なぜかと言えば、それは強大な力を持つヒーローが怖いから。

そこで動き出したのが『ザ・ボーイズ』。解散状態にあるチームだったが、リーダーであるビリー・ブッチャーが動き、ダコタ・ボブ大統領の指示を受けてかつてのメンバーであるマザーズ・ミルク、フレンチマン、フィーメール、そして新たにスカウトしたウィー・ヒューイを加えてチームを再結成し、ヒーロー達の“お目付け役”として活動を再開する!……というお話です。

個人的お気に入りエピソードはバットマンとロビンのパロディキャラが登場する「Get Some」。表の顔は大富豪ロバート・ヴァーノン、その正体は闇の復讐者テックナイト!しかし彼は異常なまでに性欲が強く、セックスする事を止められない悩みを抱えていた……という掴みがもうホントどうかしてる一編。
空からの偵察任務の帰りの最中、仲間のマインドドロイド(男)の尻を眺めているうちにムラムラ来てしまってその場で襲って停職を喰らい、それからはどんどん悪化して牛肉や姪っ子、果ては秘密基地であるテックケイヴの壁の穴にまで欲情してしまうようになってしまったのだった。

やけどの薬を持ってないか?
この後彼はこのままではマズイと相棒のロビン…じゃなかったラディオを冒険の旅に出したり、
ムラムラが限界に達して執事に手を出した事で逃げられとうとう一人ぼっちになってしまう

これだけ書くとこのテックナイトが終始ムラムラしてるのを見せつけられるだけのエピソードっぽいですが、話のメインは「とある同性愛者の青年スティーブン・ルービンシュタインの死にヒーローが関わっているかもしれない」と考えたザ・ボーイズのブッチャーとヒューイの二人が調査に乗り出すという内容です。
ブラックなギャグも多いけど、最後に判明する事件の真実となんとも言えない後味がたまらなくて好き……
そしてエピローグがクソ最低で大笑いしたのでこれはもう実際に読んでみて欲しい。

◆感想
最っ高に面白かった!!
もうね、ガース・エニスの得意とする渋いアンチヒーローな作風と、ガース・エニス自身のヒーローアンチっぷりが合わさって爆発してる一作でしたねこれは。ブラックユーモアだけでなく、エニスらしい渋カッコイイハードボイルド要素もふんだんに盛り込まれていてもう……
あとこの『ザ・ボーイズ』、クソ最低な性格のヒーローとそいつらを始末するザ・ボーイズとの戦いというシンプルな構図が続くのかと思いきや、読み進めていく内にもっと大きな存在の陰謀が隠されている事が判明していきます。

そもそもこの作品のヒーロー達が力を得たのは何かしらの事故などで偶発的に手にしたわけではなく(建前上は皆何かしらのオリジンがあってスーパーパワーを得たかのように語られているのですが)『化合物V』と呼ばれる薬品を服用して身体組織を強化しているのです。ザ・ボーイズの面々もスーパーヒーローと渡り合うため当然全員服用しています。

この薬品を研究開発しているのが『ヴォート・アメリカン』というアメリカの会社であり、様々なスーパーヒーローを勧誘して“ある人物”をトップに立たせようと目論んでいる。
『ザ・ボーイズ』の核となるこの設定は本書ラストのエピソード「Glorious Five Year Plan」で判明。思っていた以上に濃いストーリーになりそうで、今後の展開が実に気になる……!
あとチームの良心ともいえる『ザ・ボーイズ』のヒューイと、ヒーローチーム『セブン』のこれまた唯一の良心であるスターライトの二人が出会った事がこの後のストーリーにどう影響していくのかも楽しみ。

『ヒットマン』とは違ってこっちは下ネタもド直球に描写してるうえにバイオレンス描写も全開なんでリアル知り合いに勧めるのはキツイ本なんだけども、ネットでなら声を大にしてオススメと言えるからブログやってて良かったと思えてる。
ちなみに邦訳第2巻は今年の夏に刊行予定とのこと。順調にいけば全6巻に収まるはずなので、最後まで刊行されて欲しいぜ!応援してる!

俺はいつも弟がほしいと思っていた

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2 Comments

久仁彦  

『ザ・ボーイズ』最高でしたねー。
マトモな人が全編3人ぐらいしか出てこない世界が最低で最高でした。
そんな世界でもテックナイトは(趣味と実益を兼ねて)ヒーローだったんだ…。

完訳は難しそうと勝手に思っていますがガース・エニス作品の英語は訛りやスラングが難しかったり
台詞量自体も多かったりで原語だと一苦労ですし、『ヒットマン』も全巻邦訳することだし是非お願いしたいですね。
それにしても椎名ゆかりさんは最近イロモノを訳しすぎだと思う。

2017/02/26 (Sun) 19:45 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>久仁彦さん
ザ・ボーイズの世界にはろくでもないヒーローが多い中、テックナイトは間違いなく真のヒーローでしたね…あんなカッコイイ巨大隕石ファ◯クは見たことがない!(そもそも前例がない)

2017/03/02 (Thu) 22:12 | EDIT | REPLY |   

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