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27 2017

宇宙人王(ワン)さんとの遭遇

宇宙人王さんの遭遇宇宙人王(ワン)さんとの遭遇
【原題】L'arrivo di Wang 2011年【伊】


ローマに住む中国語翻訳家のガイア宅に一本の電話がかかってきた。今から緊急で通訳をして欲しいというのだ。
2時間で2000ユーロという高給につられガイアは承諾するが、迎えの男、イタリア秘密警察のキュルティは彼女に目隠しを強要、辿りついた場所は厳重に閉鎖された真っ暗な地下室であった。彼はガイアに暗闇の中で王(ワン)と名乗る者の通訳をしろというのだ。
キュルティは「目的は!?何かを企んでいるのは判っているんだ!!なぜ中国語なんだ!」と王を激しく攻め立てていく。それに対し、王の「地球で一番使われてる言語だし、たくさんの人とコミュニケーションがとれた方がいいと思って……」という不思議な発言に不審感を抱いたガイアは、「表情が見えないと正しく通訳できない」とキュルティに掛け合い、ようやく地下室の電気を点けてもらうことに。
だが机の向こう側に居たのはなんと、脚を縛られた状態のイカにそっくりな宇宙人だった!
拷問を持さない構えのキュルティと、執拗な取調べにも寂しげな顔をしつつ真摯に対応する王さんの間に入ったガイア。
通訳を続けていくうちに段々と王さんに同情する気持ちが沸いてきた彼女は、王さんを世界最大の人権団体アムネスティに保護してもらおうとこの地下室から脱出する計画を練るが……

ベネチア国際映画祭で創造産業賞を受賞するなど、各国映画祭で称賛を集め、ついでに物議も醸した異色のイタリア製SFサスペンス映画。邦題はどことなくコメディ映画風だけどシリアスです。
終始密室でストーリーが進行していくシチュエーションの面白さと、中国語を話す紳士的な物腰の宇宙人・王のどこか愛嬌のあるデザインが魅力の一作。

宇宙人の王は「地球にやってきたのはあくまで平和的な異文化交流のためである」と主張し続けるんだけど、秘密警察は彼の言い分を全く信じず、有るのかどうか分からない真意を吐かせようと高圧的に接したり、挙げ句の果てには拷問まで行っていく。
礼儀正しい態度の宇宙人に対して秘密警察の連中は敵意を持って彼に当たり散らすので、必然的に主人公のガイア同様宇宙人側に感情移入してしまうように作られている。これが実に上手いというかしてやられるというか……
宇宙人の王は真実を語っているのかそうでないのか?二つに一つしかないだけに展開は予想しやすいかもしれないけれども、それでも終盤の展開には強く引き込まれました。

ちなみに原題では「宇宙人」という事は伏せられており、原語版の予告編も王さんが宇宙人である事は隠されていたため、邦題と日本語版予告編はそういうサプライズを壊しちゃっているんですが、まあ彼の正体が宇宙人という展開は映画開始から20分程度で判明する要素なので個人的にはそこまで目くじらを立てるほどの事でもないかな……と思ったり。どちらかと言うと日本語版予告編が結末までほんのりネタバレしてる事のほうが問題な気がする。

まさにB級映画って感じの展開で、タチの悪すぎるオチと最後の一言の衝撃は中々のもの。秘密警察のセキュリティがガバガバ過ぎたり、「制作費の殆どは宇宙人に費やされているのではないか?」って思うくらいにチープな画作りなんだけど、ストーリーの面白さで十二分に楽しめました。物議を醸したってのはオチの展開と、宇宙人の王が中国語を話しているのが「そういうメタファーになってるんじゃないか?」と思わせてしまう部分にあったのかなやっぱり……

映画公式サイト「INTRODUCTION」より一部引用。

ローマに不時着した一見可愛らしく友好的な宇宙人が「中国語」を話すことから不信感を強く持ったイタリア秘密警察がその宇宙人を拷問する。果たして宇宙人は白か黒か?という設定が物議を醸したのだ。
この映画に対し最初に反応したのは、米ウォール・ストリート・ジャーナル。記事の中で「この映画は中国の経済力と世界における影響力が強まり、西側に困惑と誤解をもたらしたことを示している。」 と評論。

これに、北京の夕刊 『法制晩報』 が反応する、「ストーリーには象徴的な意味がある。 通訳は王さんの到来を平和目的だと理解するが、中国語や宇宙語がわからない政府の役人たちは、王さんを侵略者だと決めつけた。 (中略) そして安全を理由に王さんを暗室に閉じ込める。 秘密警察はこの宇宙人をもともと理解したくなかったのだ」 とし、映画に中国人の外国進出を重ね合わせた 『ウォール・ストリート・ジャーナル』 への反論ともとれる主張を載せる。

これに多様な媒体が追随「台頭する中国への西側社会の不信。」「中国人差別を助長する。」「できるものなら中国で公開してみたらいい。」などと追随、論戦は国際問題にまで発展する。
一方、イタリアで公開されると映画ブロガーたちは『普通に王さんがキモ可愛い。』『ネタバレだけどラスト鬼!』『今年一番おもしろい!』『王さんの拷問シーンに泣いた。』などと別方向で盛り上がり、大ヒットを記録。未だかつて無いイタリア映画史上に残る話題作となった。


前述した通り、本作の公式日本語版予告編は結末の映像まで含めてしまっている作りなので、映画が気になった人はあんまり内容を調べずに直接本編を鑑賞することをオススメします。

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