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02 2017

ダン・スロット&ライアン・ステグマン他/スーペリア・スパイダーマン:ワースト・エネミー

スーペリアスパイダーマン表紙

『さらばだ、ピーター・パーカー。
 お前は去ったが…お前の名を引き継いだ者は悪党ではない。
 誓うぞ。スパイダーマンになる。
 この比類なき頭脳と…果てしなき大志で…
 お前を超えた、これまで以上のスパイダーマン…』

より優れたスーペリアスパイダーマンにな!」

INTRODUCING AN ALL NEW SUPERIOR SPIDER MAN!
IS HE HERO OR MENACE?

スパイダーマンの宿敵として、幾多の死闘を重ねてきたDr.オクトパス。

病に侵され、死を覚悟した彼が選んだ最後の手段とは?

スパイダーマンことピーター・パーカーの身に生涯最大の危機が降りかかる!

100以上のスパイダーメンが集結した「スパイダーバース」において、最も異彩を放ったスーペリア・スパイダーマンの待望のシリーズが登場!

「スーペリア・スパイダーマン」5話に加え、その前日譚である「アメイジング・スパイダーマン」の<ダイイング・ウィッシュ>編、全3話も特別収録。

新たなるスパイダーマンの歴史が、今ここに幕を開ける!


◆収録作品

2013年01月:Amazing Spider-Man #698
2013年02月:Amazing Spider-Man #699
2013年02月:Amazing Spider-Man #700
2013年03月:Superior Spider-Man #1
2013年03月:Superior Spider-Man #2
2013年04月:Superior Spider-Man #3
2013年04月:Superior Spider-Man #4
2013年05月:Superior Spider-Man #5


◆FAR BEYOND THOSE OF MORTAL SPIDER-MEN
2012年12月、50年以上続いてきたスパイダーマンのメインシリーズである『アメイジング・スパイダーマン』誌がとうとう完結を迎えました。
698号から始まった『ダイイング・ウィッシュ』編は余命幾ばくもない宿敵、Dr.オクトパスとの最終決戦ともいえるエピソードであり、スパイダーマンことピーター・パーカーはこれまでにない危機に陥ってしまうのですが、そこはもう完結が近いのだし、大ピンチを乗り越えてこれまでの戦いや大切な人達との思い出を振り返る大団円になるのだろうな……とか思ってたらまさかのスパイダーマン完全敗北。

ピーター・パーカーはその肉体をDr.オクトパスに奪われ、最後の最後まで肉体を取り返せないまま死亡してしまい、そのまま宿敵Dr.オクトパスが新主人公『スーペリア・スパイダーマン』となって新シリーズがスタートするという衝撃的とかそういうレベルじゃない最終回となったのでした。ウッソだろお前!
あまりに衝撃展開なのもあって日本でもネットニュースで話題になるほど。そりゃ50年以上続いてバッドエンドなのだから話題にならないハズがない。
【「スパイダーマン」第700巻で死亡 「安らかに眠れ」と哀悼ツイート続々】

ただ、この『ダイイング・ウィッシュ』編は結末だけ聞くとバッドエンド……いや実際バッドエンドなんだけれどもスパイダーマンの最終話としては普通に高水準な作りなんです。

***

Dr.オクトパスと精神を入れ替えられ、死にかけのオクトパスの肉体に押し込まれたピーター・パーカー。一方スパイダーマンことピーター・パーカーの健康な肉体を手に入れたDr.オクトパス。
ピーターは息も絶え絶えにオクトパスの装備を使い、肉体はマトモに動かせずとも知恵を使って自分の身体を取り戻そうと様々な策を練っていく。
だが長年の宿敵であるDr.オクトパスはピーターの手の内を知り尽くしており、尽く策を潰していく。

ピーターは最後の一線を越える覚悟を決め、オクトパスの使役ロボット『オクトボット』を用い頭蓋に直接攻撃を加えようとしたのだが、オクトパスは自分の頭蓋を超合金カーボナディウムで強化しており、最後の攻撃も失敗に終わってしまった。
ピーターを始末しようとするDr.オクトパス。しかし、突然彼の脳裏に覚えのない記憶が現れる。
Dr.オクトパスは頭蓋をシールドで覆ったために完全な精神交換は行えなかったが、脳にピーターの思考パターンだけは上書きされていたのだ。
Dr.オクトパスはピーター・パーカーの、そして彼がスパイダーマンになってからの人生を一気に追体験していく。

一気に不幸展開を追体験するドクオック
スパイダーマン誌で50年以上続いてきた不幸展開も当然ガッツリ体験してしまうドクオック
その絶望的な記憶に押しつぶされそうになるが……

スパイダーマンの肉体を奪いはしたが、こんな記憶を得ることまでは望んでいなかった。
Dr.オクトパスは死にかけているピーター・パーカーに問いかける。どうやってこんな戦いを続けてこれたのかと。
ピーターは答える。

「必要だからさ。大いなる…力には…」
「大いなる責任が伴う、か…」

Dr.オクトパスはピーターの最後の願い……「ニューヨーク市民のみんなを守ってくれ」という約束を聞き入れた。
彼は己の全てを掛けて世に尽くしてきたピーターへ畏敬の念を抱き、スパイダーマンとして人々を守るヒーローとして戦う事を誓うのであった……

***

……と、アメイジング・スパイダーマン誌のラストエピソードを『スーペリア・スパイダーマン』という新ヒーローのオリジンに費やした『ダイイング・ウィッシュ』編。
主役交代劇としてはなかなかに読み応えのあるエピソードでした。途中ピーター・パーカーが死にかけた際、ピーターがこれまで救えなかった人々とあの世で再会していくという展開もあるのですが、そこで再会する両親やベン伯父さんとの会話は涙腺に来るものがあるので是非実際に手にとって読んでみてほしい。

この邦訳版はアメイジング・スパイダーマン第1シリーズ単行本最終巻である原書TPB「Spider-Man: Dying Wish」と、当時マーベルが行った現行誌の大規模リニューアル企画、『マーベル・ナウ!』を受けてスタートした「Superior Spider-Man, Vol. 1: My Own Worst Enemy」の合本版となっています。おかげで非常にボリュームのある一冊。
ダイイング・ウィッシュ編が読めただけでも満足感があるんだけども、本書のメインは『スーペリア・スパイダーマン』第1巻だからね!こっから本編スタートですよ。

ヒーローとしての使命に目覚めたDr.オクトパス。しかしやはりというか性格までは変わらないようで、ピーター以上に冷静に行動し、様々な自作ガジェットを駆使して悪党を追いつめていくのですが、「死ななければ問題ない」とばかりに残忍な面を見せるあたりにゾクリとする。

ただダークな展開と同時に意外とコミカルなシーンも多く、MJを寝取ろうとしてもどうにも上手く事が運ばなかったので、気晴らしにピーターがMJと愛し合っていた時の記憶を再生してニヤつく気持ち悪さを見せつけたり、ピーターが実は経歴を詐称しており、論文を提出せず博士号も取得していなかった事を知ってわざわざ大学に入学し直したり、マーラ・ジェイムソン記念棟の備品を取り返した事をきっかけにJJJがスパイダーマンを支持するようになるというピーターがずっとなし得なかった事をあっさり成し遂げちゃったりと、ダイイング・ウィッシュ編のシリアスさに反してギャグ要素が結構強め。
Dr.オクトパス自身もピーターを演じてはいるものの、ちょくちょく……というかわりと言動に「素」が出ており、傲慢気味な口調になってんのがもうね!

で、ピーター・パーカー本人はDr.オクトパスの一挙一動にイライラハラハラしつつ毎度ツッコミを入れる幽霊として姿を見せてくれます。
あんなしんみり来る交代劇を見せておきながらツッコミポジに収まって普通に登場するとは思わなんだ。
あと霊体だから誰にも認識はされないんだけど、オクトパスがやり過ぎそうになると彼の無意識下に働きかけてある程度ストッパーになるという事ができちゃうみたいです。

やたらツッコミを入れるピーター

◆感想
面白かった!!
一見するとトンデモ展開でしかないのに、これまでのスパイダーマンには無かった……いや中身がDr.オクトパスなんだから無いに決まってるんだけど、とにかく新たな魅力と展開に溢れているシリーズになっていて、思っていた以上に楽しめた一冊でした。
会社が存続する以上半永久的にストーリーを続けなきゃいけない正史世界……アース-616の物語だけど、ただマンネリを打破するために突拍子もない展開にしたってわけじゃあないねコレは。オススメの一冊!

少し前まで小プロがスパイダーマンの邦訳に意欲的で合間のエピソードをがっつりすっ飛ばしつつも#544から#641まで単行本を出してくれてたのですが、まさかヴィレッジからアメスパ最終巻である『Spider-Man: Dying Wish』が出てなおかつスペスパ単行本と合本化しちゃうとは思わなかったよね……
【ジョー・カザーダ&パオロ・リベラ他/スパイダーマン:ワン・モーメント・イン・タイム】

本書の邦訳が刊行されるよりも先に『スパイダーバース』が邦訳されているので知っている人も多い……というかさすがにDr.オクトパスがずっと主役を張るはずもなく、当然というか今はもうピーター・パーカーは元の姿を取り戻していて、アメイジング・スパイダーマン誌も第3シリーズ第2シリーズは90年代に刊行され、後に第1シリーズの号数と合算された)として再スタート、現在は第4シリーズに突入しております。

「すべてを超える」スパイダーマン

現状スーペリア・スパイダーマンの邦訳が続くかどうかはアナウンスされていないのですが、『スーペリア・スパイダーマン』誌の結末は実は先んじて邦訳された『スパイダーバース』キャラ紹介ページでネタバレされているので、気になる人はチェックしてみても良いかもしれない。
……ただ、本書『スーペリア・スパイダーマン:ワースト・エネミー』の帯に『THE SUPERIOR SPIDER-MAN WILL RETURN』って文言があるんだよね……
ひょっとして邦訳スーペリア・スパイダーマン、2巻以降も刊行する気マンマンなんだろうか?期待しちゃって良いのかな!?
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2 Comments

No Name  

No title

個人的に心待ちしていた作品だけに続きは是非とも刊行してほしいですね
ただ続きの出し方が気になります、合本版を翻訳するのかそれともこのまま一巻ずつ出すのか

後これは仕方ないことなんですがスーペリアまでの話が小プロ同様すっ飛ばされてるのが気になりました(spider-menとか色々良作が多かったので特に)

近年のスパイダーマンもあのキャラがまさかの復活したりして翻訳してほしい所ですが、流石にアレ出してコレ出してだとキリがないですね

2017/01/04 (Wed) 20:17 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>No Nameさん
>スーペリアまでの話が小プロ同様すっ飛ばされてるのが気になりました
本書は先んじて邦訳された『スパイダーバース』の関連作というのと、あと『マーベルナウ!』で創刊された作品をとりあえず色々出していくというヴィレッジの流れの中で刊行されたってのもありそうなんで、やっぱ本気で全部拾おうとするのは難しいんでしょうね。
でもまあストーリー自体は本書からでも十分楽しめたので、とりあえずはスペスパ邦訳が続くことを祈りたい!
んでもって最終的にはスパイダーマンの最新シリーズを訳していく感じで……

2017/01/04 (Wed) 22:07 | EDIT | REPLY |   

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