ツルゴアXXX

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22 2016

アラン・グラント&サイモン・ビズレー他/BATMAN LOBO / LOBO AUTHORITY:HOLIDAY HELL

バットマンロボ表紙 ロボオーソリティー表紙
「俺様が匂いを知ったら誰も逃げられん!
 手と手のしわとしわを合わせて…
 屍!ナ~ム~」

HOLY FRAGGAROLEY, BATMAN!

ジョーカーがバットマン殺しを$1000万で依頼した!
雇われたのは他でもない、死んでも死なない宇宙の災厄、
みんなのクソ野郎ロボ!!
“世界で最も偉大な探偵”ダーク・ナイトが迎える人生最悪の時!


ロボ・ライター、アラン・グラントと
究極のロボ・アーティスト、サイモン・ビズレーがお届けするオルタナティブ・リアリティ!
この“現実”で、ゴッサムお馴染みの仲間たちの姿は変貌し、
バットマンとジョーカーの関係はかつてないほど捻じ曲がる!
それにしてもどうして大虐殺がこんなにおかしいのか!?


エルスワールドでは―― キーボードの位置さえズレていき、
――ヒーローやその設定の時間や場所も歪んでいく。
「もしスーパーマンが恐竜だったら?」ってなぐあいに。
起こりうるシチュエーションもあれば、絶対ない、イヤイヤあり得ないでしょ、あっちゃダメでしょ、
的なシチュエーションも。
えっと、例えば「もしワンダーウーマンが下着モデルだったら?」とか。
あれ?…ワンダーウーマン、下着モデルじゃなかったっけ?
とにかく、これはそういうヤツ(ほら、あっちゃダメ的なヤツ)だ。


◆収録作品

1991年12月:Lobo Paramilitary Christmas Special
2000年04月:Batman/Lobo
2004年02月:The Authority/Lobo: Jingle Hell
2005年08月:The Authority/Lobo: Spring Break Massacre


◆しょうがなく帰ってきた知る人ぞ知るクソ。宇宙の賞金稼ぎ。
別に映画化とかドラマ化とかそういうフックが皆無にも関わらず唐突に邦訳が発売され、そのイカれた内容と主人公ロボのクソすぎるキャラクター性でアメコミファンを魅了しまくった邦訳『LOBO:ポートレイト・オブ・ア・バスティッチ』の刊行から一年……
まさかのMasscreマサカーな邦訳ロボ第2弾が刊行!
(TPB『LOBO AUTHORITY:HOLIDAY HELL』とワンショット『Batman/Lobo』を合本化した特別仕様)
今回はバットマンやワイルドストームスタジオのヒーローチーム『オーソリティー』とのクロスオーバーエピソードを纏めた一冊だ!
エピソードのイカレ具合もグロテスクな描写も翻訳のぶっ飛びっぷりも全てがパワーアップ!!

まずバットマンとのクロスオーバーエピソードから紹介。正史世界ではなく、色々キャラ設定の異なるエルスワールドが舞台です。
『バットマンが恥を晒し、信用を失い破滅する姿』を拝みたいがため、ジョーカーは自分の生涯をかけて貯めた金である1000万ドルでジョーカーがロボにバットマン殺しを依頼。ロボはバットマンの仮装に身を包み、ゴッサムで大虐殺を起こして彼の権威を失墜させる事から始める。
本物のバットマンもこの事態に気付き、すぐさま事件解決の為に行動に移るのだがロボはあまりにも強敵すぎる相手。ゴッサム市民だけでなく、大事な仲間たちまで喪っていく事になる……

こうやってあらすじとして纏めるとなんだか若干シリアスな雰囲気を感じるのですが、中身はブラックユーモア全開のエピソードであり、登場人物のビジュアルはサイモン・ビズレーの狂気みを感じるアレンジが施されているのが堪らない。
バットマンの中身は厳ついスキンヘッドの大男だし、執事はなぜだかゴードンに、代わりのゴードンのポジションには長官となったアルフレッドが据えられており、バットマンの相棒であるナイトウィングはティム・ドレイクで、初代ロビンのディック・グレイソンはこの世界ではまだ子供でロビンを続けている状況。
ペンギンは異様に鼻が尖っている上に指が四本で多脚という人外染みた外見になっているし、ジョーカーに至っては正史ではまずありえない衝撃的な設定が付与されております。
もうめちゃくちゃなくらいに設定が変わっててまさにエルスワールドって感じだ!この設定改変が本編において重要な意味を持っているかと言われればぶっちゃけそうでも無いというテキトーさもツボ。

最悪のチームアップ
かつてここまで最悪なチームアップが存在しただろうか

次に収録されているのはちょっと古めの90年代のエピソード。
『クリスマスを利用して不当に利益を独占しているクソ野郎最高峰のサンタクロースを殺す』という依頼を受けたロボがサンタの要塞に乗り込んで大虐殺をするという内容。大虐殺ばっかりだな!
「クリスマスがあんま好きじゃないしプレゼントももらったことないや」という理由でエゲツない大暴れっぷりを見せつけるロボが実にクソい。

サンタクロースイズ仮眠永眠
ここで殺されている小人達はサンタに過労死寸前の労働を強いられていた
んでもって突如乗り込んできたロボに撃ち殺されてしまうのだから実に不憫

なんかDCコミックスのサンタいつも殺されてんな。
こんなエピソードですが、最後にはロボがサンタの代わりにプレゼントを配って回るというハートフルなお話になってます。嘘は言ってない。
そして10年以上経過してからこのエピソードがワイルドストームのオーソリティーとのクロスオーバー回の前日譚という設定になっちゃうのだからアメコミって面白い。

そう、本書のもう一つの注目作品が、ラストに収録されているこの『The Authority/Lobo』!!
DCユニバースではなく、ワイルドストームユニバースを舞台としたクロスオーバー。
といってもこの頃はまだワイルドストームの世界がDCユニバースの並行世界の一つであったという設定は無いんですけれどもね。純粋にDC傘下であるワイルドストームレーベルの『オーソリティー』とDCコミックスの『ロボ』がコラボしたというエピソードです。
(そういう設定に変更されたのは2006年のクロスオーバーイベント『インフィニットクライシス』にて多元宇宙設定が復活し、その続編『52』にてワイルドストームの宇宙がDCコミックスの多元宇宙世界の一つと判明してから)

オーソリティーは今回が初邦訳なので、クロスオーバー回のレビューの前にちょっと解説。
まず1992年に設立されたワイルドストームスタジオという会社から『ストームウォッチ』というコミックが刊行されており、1997年に第2シリーズが新創刊。#11でこちらは終了したのですが、その後1998年の『ワイルドキャッツ/エイリアンズ』という作品内で当時の担当ライター、ウォーレン・エリス期以前のストームウォッチのキャラの大半が戦死。
その後エリスは自分が生み出したジェニー、アポロ、ミッドナイター、ジャックといったキャラクターを中心とした新シリーズ『オーソリティー』を立ち上げたのでした。
(この頃はもうワイルドストームスタジオはDCの傘下に入っていたため、『ワイルドストームレーベル』として作品が刊行された)
“大人向けのジャスティス・リーグ”とも言える内容らしく、オーソリティーのメンバーが地球規模の大事件や大災害に立ち向かっていくというストーリーであり、#13からはライターにあのマーク・ミラーが就任。悪趣味な暴力描写に加え、オーソリティー壊滅といった衝撃展開もあってさらに人気を集め、#28で完結。
これ以降もライターを変えて第4シリーズまで刊行が続いたのでした。

オーソリティーのメンバーは同性愛者のカップルやその養女、元ジャンキー、全裸の女性型ロボットなど尖り過ぎな設定が多く、是非このコラボ回だけで終わらず本編の邦訳も出てほしいほどに魅力に溢れてるメンツが揃っております。
邦訳ロボ公式サイトのキャラ解説が簡潔かつ的確なのでもうそのまま貼る。

公式サイトオーソリティー解説

オーソリティーの翻訳は現状この本しか無いけれども、ストームウォッチは1話だけ『NEW52:エッジ』で、あとミッドナイターとアポロの姿は『グレイソン』でもちょっとだけ拝めたり。

前置きが長くなりましたがオーソリティーとロボのクロスオーバー回の内容ね。
現実改変能力を持つジェニーが先程紹介した『ロボがサンタを殺害するコミック』、“Lobo Paramilitary Christmas Special”を発見し、「ロボという男がサンタクロースを殺してしまった」と思い込み、オーソリティーのメンバーが「サンタなんてのは作り話だ」という真実を伝えるべきか否か議論している間にジェニーは感情を暴走させてあのコミックの世界を現実に引き込んでしまったというストーリー。
一方ロボは異星人からオーソリティー殺害を依頼され、彼らの前に姿を現す!!
ちなみに“Lobo Paramilitary Christmas Special”DCユニバースで実際に起こった出来事ではなく、昔ロボがライセンス契約して刊行してもらったコミックなんだとか。展開が自由過ぎる。

この翻訳センス
アポロのセリフがいちいちアレなのに吹く

◆感想
最高だった!!最高にクソだった!!(褒めてる)
クソな登場人物が多く、グロテスクな表現やエゲツない展開が多く、とにかくアナーキーでブラックな内容なんで人は選ぶかもしれないけれど、パンチの効いたコミックを求めている人には超オススメ。
収録作品はどれも元々読み切り作品なので事前知識がほぼ不要で読めるのも大きい。

そして前巻以上にセンスに溢れてる翻訳ね!
もう「絶対原書でこんな事言ってないだろ!」な意訳っぷりが目立つのですが、作品の雰囲気や登場人物のキャラクター性に非常にマッチしていて全然気にならないし、邦訳でちょくちょく見るクドい台詞回しってのが皆無なのがスゴイと思う。読みやすいわ~。
あとロボの普段は荒々しい口調なのにちょくちょく丁寧語になるふざけた喋りがもう大好き過ぎる。邦訳特有のキャラ付けなのかなこれ。

喰われノンケ!
「ノンケ!」「食われノンケ!」なんて罵倒コミックで初めて見た

収録エピソードの殆どがクリスマス関係のお話だし、今年のクリスマスプレゼントはコイツで決まりやね!

◆関連リンク
【BATMAN LOBO/LOBO AUTHORITY:HOLIDAY HELL公式サイト】
【邦訳ロボ監修者PUNPEE氏ブログ】

◆椎名ゆかり × PUNPEE「LOBOトークショウ」

2017年1月15日に下北沢「B&B」で開催されたトークイベントの様子。
翻訳裏話がたっぷりだ!
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4 Comments

バッツ  

No title

こんにちわ 初めまして

20代のアメコミ好きです

ロボはバスティッチも大好きでしたが、今回発売された奴はもっと好きです

なんというか、キャラが生き生きしてるし グロいし ハチャメチャだし...

最近の日本よりのアート ダラダラしたストーリー ではなく ロボこそ求めていた theアメコミ!!

2016/12/31 (Sat) 08:01 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>バッツさん
はじめまして!確かに本作はキャラが生き生きしてますねー。
というかロボがそもそも悩みとは無縁な感じのキャラという。だからこそそういう描写に尺を割く必要が無く、大暴れにたっぷりページを使えるのが強い!
今後もロボの邦訳出版が続いてくれると良いなぁ。

2016/12/31 (Sat) 23:06 | EDIT | REPLY |   

久仁彦  

ようやく読みましたがメチャクチャ面白かったですねー。
僕もロボが時々丁寧語になるシーンで例外なく吹きました。
「では失礼して…仕事にかかります…」

先日のロボトークイベントにて監修のPUNPEEさんが
「地元で流行ってたネタを入れた」「弟の持ちネタを入れた」「時々丁寧語を入れて台詞に緩急をつけた」と
裏話を語ってくれていたのも面白かったです。
もはや21世紀の『月刊スーパーマン』と言っても過言ではありませんね…(最大級の褒め言葉)。

2017/01/16 (Mon) 23:40 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>久仁彦さん
>裏話を語ってくれていたのも面白かった
はぇ~すっごい自由……
「翻訳で大事なのは忠実に訳す事ではない」という事がよく分かる一冊でしたね本書は……
「LOBOトークショウ」はまだ見れるみたいだしあとで見ておこうかな。
https://www.youtube.com/watch?v=MZEEZ9Fv8J0

2017/01/19 (Thu) 16:32 | EDIT | REPLY |   

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