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03 2016

ゆれる

ゆれる予告編ゆれる
2006年【日】


兄と僕は、どこかでつながっている
思っていました――、これまでは。


東京で写真家として成功している猛は、忙しくも自由気ままな生活をしている。一方、地方に残り実家の商売を継いだ兄の稔は幼い頃から温和で誠実な人柄だが、いまだに独身で父親と2人で暮らしている。母の一周忌で久しぶりに帰郷した猛は、稔と、ふたりの幼なじみの智恵子と3人で近くの渓谷に行った。兄弟が幼かった頃、よく両親が連れてきてくれた場所だが猛はそのことを憶えていない。懐かしい場所ではしゃぐ稔。稔のいない所で、猛と一緒に東京へ行くと言い出す智恵子。だが、渓谷にかかった吊り橋から流れの激しい渓流へ、智恵子が落下してしまう。その時そばにいたのは、稔ひとりだった。兄をかばうため稔が奔走する中、稔の裁判が始められる。事故だったのか、事件なのか。猛の前で、稔は次第にこれまでとは違う一面を見せるようになる。兄は本当に自分がずっと思ってきたような人間なのだろうか。当たり前と思い疑いもしなかった事柄の裏面が見え隠れし、裁判が進むにつれて猛の心はゆれていく。やがて猛が選択した行為は、誰もが思いもよらないことだった───。
兄弟と呼ばれるその絆はどこまで確かで、そして脆いものなのか。一度離れてしまったふたりは歳月を越えて再び出会えるのだろうか。記憶はいかに人をだますものか。人と人が繋がることには、どんな可能性があるのか。7年後、喪失の中で猛は再び「真実」について大きくゆれることになる。

***

監督の西川美和氏が「友人が殺人を犯す」という悪夢から着想したという、かなり暗めな人間ドラマ。
香川照之が演じる兄の稔は一見すると温和な優しい好人物なんだけれども、実際のところは「いい人」ではなく、自分の感情を押し込んじゃうタイプの「人がいい」性格。こういう人間が鬱屈した感情を爆発させた時の演技のリアルさと迫力がもう凄かった。香川照之の演技力は本当に高い。
面会室で稔が猛に長年抱いていた、劣等感や嫉妬といった汚い感情を吐き出す会話シーンは見ていて実に辛かった。
僕は感動展開でボロボロ泣くタイプなんですが、展開の辛さで涙腺が緩んだのは初めてかもしれない。

都会で成功し、自分のやりたい事を仕事にしてそれなりに成功している弟の猛。
一方で「人がいい」性格が災いし、閉鎖的な田舎と親から離れる事が出来ずに本音を押し殺して日々を送る稔。
弟とあまりに差ができて劣等感に苛まれている稔のキャラクターに共感してしまう人も多いんじゃないでしょうか。

重いテーマながら稔や猛たちの「ゆれる」心理描写が本当に丁寧で、稔に容赦ない質問を投げかけてくる裁判シーンなど息が詰まりそうな緊張感が続いていくしんどい作風でありながら一気に見れてしまう。
ラストシーンは、本作を見た人があえて色々な解釈ができるように曖昧にして締めくくられているのも印象的。オススメの一作です。

※ラストシーンの自分の解釈(ネタバレ反転)
ラストシーン。僕は「稔はバスに乗らなかった」派です。
本当はあんなクソ田舎でガソリンスタンドを経営する単調な日々になんて戻りたくなかったんだろうけど、稔は自己主張が弱く、なんでも受け入れてしまう性格でしたから、弟から「家に帰ろう!」なんて言われちゃったらまた本音を押し殺して田舎での生活を選んじゃうんじゃないかなぁと(暗い解釈)。


 
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