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10 2011

アラン・グラント&サイモン・ビズリー他/バットマン/ジャッジ・ドレッド

バットマン&ジャッジ・ドレッド表紙
「また法を破ったな。数えてるぞ」
「お前の法など知った事か」

ジャッジ・ドレッドはイギリス生まれのヒーローである。1995年公開のシルベスター・スタローン主演の映画でその名を知った人も多いだろうが、その誕生は映画公開の実に18年も前、1977年の事であった。意外に思えるかもしれないが、映画化まで18年もの時間を要したのには、イギリスのコミック界特有の事情がある。

アメリカで誕生したコミックブックは、第2次大戦を契機に世界中に広まり、それぞれの国で独自のコミック文化を育んでいった(もちろん日本も例外ではない)。中でもイギリスは同じ英語圏という事もあり、大量のアメリカンコミックスが流入、スーパーマンやバットマンは子供達のアイドルとなった。しかし一方では、イギリス独自のコミックスを作ろうにも、アメリカンコミックスの質と量の前に圧倒されてしまう現実があった。19世紀末の大衆紙『パンチ』に掲載された一コママンガからマンガが始まったと自負するイギリス人にとって、それは由々しき事態であったが、強力なキャラクターと世界的な配給網を誇るアメリカンコミックスにかなうはずもなかったのである。

こうしてイギリスのコミックスは、イギリス国内だけを市場に、生き長らえてきたのだが、そんな状況を変える事態が起きた。1976年、アメリカ最大手のマーヴルコミックスがイギリス進出を計画、イギリスの現地法人マーヴルUKを設立し、独自のコミック出版を始めたのである。当然ながらイギリス人作家が必要となり、マーヴルUKには、アラン・ムーア、アラン・デービスなど、後の人気作家が集結していった。そして、このマーヴルのイギリス進出がきっかけとなり、翌1977年、久々のイギリス独自のコミック誌『2000A.D.』が、新興出版社フリートウェイより創刊され、その創刊2号に登場したのがジャッジ・ドレッドだったのである。

荒廃した未来社会で、犯罪者を平然と射殺するバイオレンスヒーローが活躍するというジャッジ・ドレッドの図式は、まだ『ブレードランナー』も『マッドマックス』も登場していない当時では極めて斬新であり、アラン・グラントら作家たちの力量もあって、ジャッジ・ドレッドは『2000A.D.』の看板キャラクターに成長してゆく。一方、『Xメン』の人気によってマニア度を増していたアメリカンコミックス界は、新たな才能を求め世界に目を拡げるようになっており、イギリスのコミック界からも多くの人材がアメリカに流れていった。1980年代前半に起きたこの「ブリティッシュ・インベージョン(イギリス人の侵略)」は、アメリカンコミックスの世界に大きな刺激を与え、マンガ発祥の地の誇りを示したのである。

かくして両国の活発な交流が行われるようになった結果、ついにアメリカとイギリスのヒーローが激突する事となり、バットマンとジャッジ・ドレッドの夢の競演が実現したのである。それは、常にアメリカの後塵を拝してきたイギリスコミックス界の雪辱の瞬間でもあったのである。

現在もイギリスコミックス界の中心が『200A.D.』である事に変わりはないが、今回の『ジャッジメント・オン・ゴッサム』で大スターとなったサイモン・ビズリーを始め、ニール・ゲイマン、グラント・モリソンなど、イギリス出身の作家達は、アメリカンコミックス界の中心となって活躍しており、現在のアメリカンコミックスは彼ら抜きでは成り立たないと言っても過言ではない。マンガ発祥の地の伝統は、確かに守られているのである。


◆収録作品

1991年12月:Batman/Judge Dredd: Judgment on Gotham
1998年   :Batman/Judge Dredd "Die Laughing" #1
1999年   :Batman/Judge Dredd "Die Laughing" #2


◆I AM THE LOW!
アメリカのダークヒーロー、バットマンとイギリス産のヒーロー、ジャッジ・ドレッドとのクロスオーバー作品。
それが本書、「バットマン/ジャッジ・ドレッド」です。

「ジャッジ・ドレッド」は、犯罪者を平然と射殺するというダークヒーローであります。
荒廃した未来世界、「メガシティ1」を守る法の番人、「ジャッジ」という存在で、
己の全存在を治安維持に捧げるというバットマンとは似て非なるキャラクター像となっています。

本書では初共演となる『Judgment on GOTHAM』(絵:サイモン・ビズリー)
そして『DIE LAUGHING』前編(絵:グレン・ファブリ&ジェイソン・ブラッシル)
後編(絵:ジム・マーレイ)の3編を収録。

『Judgment on GOTHAM』ではゴッサムにドレッド世界のヴィランが来訪し、
スケアクロウと組んで大暴れしているのを、
バットマンがドレッド世界にワープして知り合ったジャッジ・ドレッドと手を組み事件の解決を試みるというお話。

共闘するのだ_convert_20110610172652
ちゃんと停まるタクシー

無差別に人を襲いまくる狂気のジャッジ、「ジャッジ・デス」
だがスケアクロウは人の身でありながら恐怖ガスで対抗し、ジャッジ・デスを服従させる事に成功する。
さっそく人の多い場所に向かい大虐殺を起こそうと企てる二人。
普通にタクシーでその場所に向かう。

『DIE LAUGHING』はその逆で、
バットマンがドレッドの世界(メガシティ)に赴き、世界の危機をジャッジ・ドレッドと共闘し解決するという展開に。
こちらではジョーカーが登場するのですが、ストーリー展開はかなりぶっ飛んだものになっています。

不老不死ジョーカー_convert_20110610174348

メガシティへの次元跳躍ベルトを入手したジョーカーはさっそくコレを使用してメガシティへ。
そこでダーク・ジャッジと接触し、不老不死の力を得たのだった!
コスチュームまで世紀末風の感じになっとる。

現在のバットマン作品では自分との葛藤を描くモノが多い印象ですが、
本作品ではその辺の描写はかなり薄く、とにかくヴィランとの戦闘シーンが多いのです。
もう基本どのページも暴力描写ばっかり。
一般人の被害者も続出しまくりでちょっとしたスプラッタアクションものになってます。
これがジャッジ・ドレッドの作風なのかなあ(間違ってたらスイマセン)

笑い死に_convert_20110610170929
半端ない戦闘力

『DIE LAUGHING』後編よりジム・マーレイが描くスプラッタシーン。
ジャッジ・ドレッドの世界で向こうのヴィランと手を組み、
ダーク・ジャッジとなったジョーカー。
笑うだけで人の頭を吹っ飛ばす事ができるというトンでもない力まで手にした。

◆BATMAN, HERO OR VIGILANTE?
対立_convert_20110610175156

一話目として収録されている『Judgment on GOTHAM』では、
必要以上にグロい(というかスプラッタホラー的)なシーンがちらほらあったりはするのですが、
互いの正義のあり方の違いから対立するシーンが見られたり、
スケアクロウが人の身でありながらジャッジ・デスを手玉に取ったり、
サイモン・ビズリーの強烈なペイントアートを楽しめたりと見所が多いです。

ゴッサムよ!_convert_20110610175759
女性キャラの顔は濃ゆい

しかし二話目として収録の『DIE LAUGHING』からはそのスプラッタぶりが顕著になりすぎて
もうバットマンの雰囲気が皆無なのがちょっとなじめませんでした。
ジャッジ・ドレッドの世界に舞台が移るというのもあったのですが。

モブ1_convert_20110610181214 モブ2_convert_20110610181224

後編でのモブキャラの絵が妙にコミカルなデザインなのが特徴的
ジム・マーレイの絵は主要人物は格好良く描かれているんですが、
ことモブキャラとなるとこんな感じの顔つきになります。

◆〆
映画
95年に公開の米映画

ジャッジ・ドレッドそのものは僕、シルヴェスター・スタローンが主演の映画版ぐらいしか知らないんですよね。
しかも未見。
話によるとマスクヒーローなのに映画では序盤以降素顔丸出しで闘うとかなんとか。
この時点で原作レ○プとかなんとか言われてあまり評判はよろしくないようですが・・・

ジャッジ・ドレッドという作品はかなり過激なバイオレンス作品であり、
万人受けするとは言いがたい内容だそうです。
本書もその作風を受け継いだような印象を受けました。
とにかくバイオレンスアクションが好きなら割と楽しめるでしょう。

普段のバットマン作品のようにストーリー性を求めるとアレですけど。

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「(ジャッジ・ドレッドが好きな人向けの作品だったかもしれない・・・)」

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1 Comments

ヒドラ  

自分もスタローン版を昔見た程度でジャッジ・ドレッドは良く知らないんですが、
ここの紹介を拝見して前々から気になっていたので最近入手しました。
妙にコミカルなヴィラン達(ジャッジ・デスを脅かしてはしゃぐスケアクロウ、若本声で脳内再生されそうな口調のダーク・ジャッジの面々など)の所為か、
はたまたデフォルメの効いた画風の賜物か、不思議とライトなノリで陰惨な感じはしませんでした。
…いや人がバンバン死んでるんですけどもw
最近のシリアスなバットマンの後に読むといい息抜きになる様な、そうでない様なw
噂のスタローン版ですが…
速攻でランニングシャツのスタローンスタイルになってしまうので、原作に思い入れのある方には引っぱたかれても文句言えないかとw
原作を良く知らない身としてはB級SFアクションとして結構楽しめたんですけどね。
当時としては荒廃した未来都市やらゴツいロボットやらのSFXも頑張ってたと思います(ジャッジのコスのダサさから目を逸らしつつ)。
あ、本書にも登場したミーンマシン(額にダイヤルが付いてる人)も出てましたよ。

2015/02/18 (Wed) 00:21 | EDIT | REPLY |   

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