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28 2016

ゴッド・ブレス・アメリカ

ゴッド・ブレス・アメリカ予告編ゴッド・ブレス・アメリカ
【原題】God Bless America 2011年【米】


夢も、希望も、失うものも何もない、くだらない世の中。
彼には、死ぬ前にやるべきことがあった…。


離婚してアパートで一人暮らしをする40代後半の中年男フランク。彼は身の周りの人や物、すべてが気に入らなかった。夜な夜な隣人の騒音に悩まされ、テレビを見れば流れてくるのは低俗な番組ばかり。バカな奴らを全員銃で撃ち殺したらどんなに気分がいいだろう。彼はいつもそんな妄想ばかりしていた。そんなフランクをさらなる悲劇が襲う。元妻と暮らす娘は面会の日にも自分と会いたがらず、元妻は若い警察官と再婚、さらに善意を勘違いされてセクハラで会社を解雇され、病院の医師からは手の施しようのない脳腫瘍で余命わずかと宣告されてしまう。
その夜、フランクは、拳銃自殺を思い立つ。だが、裕福な家庭でわがまま放題に育った生意気なティーンエイジャー、クロエを主人公にしたリアリティ番組を目にし、フランクの中で何かがはじけた。フランクはおもむろに家を飛び出すと、隣人が大切にしていた黄色い高級スポーツカーを盗み、アクセルを吹かして夜の町を駆け抜ける。彼はもう家に戻る気はなかった。翌日、フランクが向かったのはクロエが主演する番組の撮影現場だった。彼は彼女を手錠で拘束すると、ためらうことなく射殺した。その一部始終を一人の女子高生ロキシーが見ていた。世の中にうんざりしていた16歳の彼女は、かつてなく痛快な出来事を目の当たりにして興奮し、車で走り去ったフランクの後を追うのだった。
我に返ったフランクは、あるモーテルで再び自殺しようとしていた。そこにロキシーが現れ、殺すべき人間がまだまだたくさんいると力説する。フランクは彼女の妙に説得力のある言葉に圧倒され、自殺を思いとどまる。そしてアメリカに巣食うバカども――映画の上映中にケータイで話す奴、テレビで暴言を吐く過激な差別主義者や排他的な宗教指導者、くだらないテレビに出る奴、作る奴――を次々とブチ殺していくのだった。

***

本作は、現代社会のどこにでも居る『ちょっとムカつく奴ら』を、中年男と女子高生のコンビが容赦なくぶち殺していくというなんともバイオレンスなロードムービー。
それに加えてセレブや向こうの有名なバラエティ番組などを実名で批判しまくるという、実に怖いもの知らずな作風です。

その作風から一見するとブラック&シュールなユーモア満載の映画なように思えますが、本作は決してコメディ映画ではなく、むしろ結構暗めというか憂鬱な感じのお話。
上記のあらすじではぶっ飛んだ感じのストーリーが堪能できそうな雰囲気がありますが、主人公フランクが世間に対して苛立ちを募らせていく様とか、とうとう何かが弾けて衝動的に殺人に走り、同じように世間にうんざりしている女子高生のロキシーと出会って行き当たりばったりの殺人旅行に至るその展開は妙に生々しかったりします。
まあ主人公フランクの射撃の腕がやたら高かったり、殺人事件を繰り返しておきながら最後の大事件を起こすまで二人が警察に全く追われないというのはややファンタジー染みてるけれども、それを差し引いてもどこかリアリティのある描写が多いのが怖い。

そもそも作中で殺される人々はたしかにちょこっとムカつく部分はあっても殺されるような悪人ではないんですよね全然。
どう考えてもフランクに義は無い。彼だってただの自己中心的な人間でしかない。
それでもフランクの不器用な生き様とか日常生活の中でどうしても遭遇してしまう嫌な人間に対する苛立ち、フランクの主張する社会に対する違和感とかには少なからず共感できるし、彼に感情移入もしてしまうから絶妙な作りだと思う。
ラストも虚しい雰囲気で、鬱々とした感覚を残したまま終わる。パッケージのノリの軽そうな雰囲気からは想像できない、良い意味で裏切られた一作でした。

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