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19 2016

マット・フラクション&デイビッド・アジャ他/ホークアイ:リオ・ブラボー

リオブラボー表紙

「…なあ、ケンカくらい誰でもするだろ?
 おれも、君らも、ママだって。
 戦うなんて簡単さ。やることは決まってるからな。
 殴り、殴られるだけ。
 傷つき、傷つけられて最後まで立っていられたら勝ち…
 このバーニーおじさんにだってできる。
 でもな、いいことをするには…ふさわしい…
 いい人間でいなくちゃダメなんだ」


弟……“手話”……そして最終決戦!
常人ヒーロー“ホークアイ”ことクリント・バートンの戦い、ついにクライマックス!

ニューヨークに借りていたアパートの地上げ問題から始まった、クリント・バートンのトラブル続きの日常は、いつの間にか深刻な局面を迎えていた。
友人を殺され、ガールフレンドとは破局寸前、さらに相棒である“もう一人のホークアイ”ケイト・ビショップは(犬を連れて)西海岸へと去った……。
そんな彼の前に、兄であるバーニー・バートンがホームレス同然の姿で現れる。かつて死闘を繰り広げた兄の登場は、何を意味するのか?一方でジャージ軍団は、アパートを奪おうと、最後の総攻撃を仕掛けようとしていた……。
アメコミ史に残る名シリーズ、堂々のフィナーレ!


◆収録作品

2013年09月:Hawkeye Vol.4 #12
2013年12月:Hawkeye Vol.4 #13
2014年03月:Hawkeye Vol.4 #15
2014年05月:Hawkeye Vol.4 #17
2014年09月:Hawkeye Vol.4 #19
2015年04月:Hawkeye Vol.4 #21
2015年09月:Hawkeye Vol.4 #22


◆関連作品過去記事
【ホークアイ:マイライフ・アズ・ア・ウェポン】
【ホークアイ:リトル・ヒッツ】
【ホークアイ:L.A.ウーマン】

◆“RIO BRAVO”
邦訳ホークアイ第4シリーズ、ついに完訳!!
1巻が出た時点では完訳を期待しこそすれ、正直一冊お試し的に刊行するだけで終わるかも……と思っていたのですが、その約一年後に2巻が刊行、そこからあまり間を空けずに3巻と続いて今月ついに邦訳最終巻の発売と相成って、なんかもうこのところシリーズ物の邦訳が最後まで出ることが割りと普通になってきているのが嬉しすぎる。
それではさっそくレビューを。

前巻のレビューでも書きましたが、ホークアイ第4シリーズは#11以降はクリントとケイトのダブル主人公になり、交互に二人の活躍を描いていく作りになっています。
前巻がケイト編を纏めたやや変則的な収録内容だったのと同様に、この最終巻はホークアイことクリント・バートンが主役のエピソードを纏め、最終話までを収録した一冊。

寓話ウィンター・フレンズ
#17が冒頭に収録されているというのもやや変則的
この#17はクリントが子供たちと一緒に「ウィンターフレンズ」というアニメを見るという内容
アニメの中で登場するスティーブという犬のキャラクターがクリントとダブるように描かれており、
色々と味わい深いエピソード

ホークアイ第4シリーズ特有の実験的演出も例によって健在。
1巻『マイライフ・アズ・ア・ウェポン』第2章では独特なスローモーション演出が、2巻『リトル・ヒッツ』第11章の「ピザ犬の冒険」では終始犬のラッキー視点で話が進み、記号的表現や一部だけ聞き取れる台詞など徹底的に「犬の感覚」でストーリーが描かれるという面白いスタイルの演出が盛り込まれていました。

そしてこの最終巻で用いられた実験的演出は「手話」。
作中で聴覚にダメージを受けてしまったクリントが後述する兄バーニー・バートンと会話するために手話を用いるという展開があるのですが、その手話を通常のコマに織り交ぜて台詞として表現するという、これまた実験的な試みがなされています。

本作で手話という演出が用いられた理由ですが、ライターのマット・フラクションには二人の子供がいて、別に聴覚に不自由があるわけではないのですが二人が幼い頃にコミュニケーションとして手話を教えていたらしく、『コミックに近い視覚的な表現』として親しみを感じていたのだとか。
そしてフラクションが活用していた子供向けテレビ番組『サイニングタイム!』の制作者であるレイチェル・コールマンが相談役となって、第19章は完成したとのこと。
勿論手話の翻訳も解説書にキチンと載っているのでそこはご安心を。

◆PICK UP キャラクター バーニー・バートン
バーニー・バートン「バカをやるにゃ、強さも必要なんだぜ」

ホークアイ第4シリーズも終盤に差し掛かった本書で現れた新たな登場人物。それが彼、ホークアイことクリント・バートンの兄、バーニー・バートン。
といっても2巻『リトル・ヒッツ』の第9章で兄の存在に触れられ、第11章「ピザ犬の冒険」ではジャージ軍団に殴られていたクリント似の謎の男としてちらっと登場していたため、ストーリーに関わってくるであろう伏線は張られていたわけなんですけれども。
(ホークアイ第4シリーズはバーニー以外にもさりげない伏線が実に多いので読み返すと発見があって面白い)

初登場は1969年のアベンジャーズ#64となかなか古株。
幼少時代、暴力的な父親と夫に逆らえない母親が交通事故で死亡した後、バートン兄弟は児童養護施設に預けられたものの、その後施設から脱走、サーカスに潜りこむことに。
しかし弟クリントがソーズマンとトリックショットという(後々ヴィランになる)二人に見込まれて芸を仕込まれる一方でバーニーは雑用しか与えられず、結局彼だけはサーカスをも飛び出して軍隊に志願、そしてFBIの捜査官になったのです。

そんなバーニーなんですが、本来は初登場したアベンジャーズ#64で死亡していたキャラクター。
ですが2011年の『ホークアイ:ブラインドスポット』という作品で実は生きていた事が判明し、ヴィランのバロン・ジモに吹きこまれて“2代目トリックショット”としてホークアイと対峙。その後はダークアベンジャーズに参加するもチームが解散、本作でのホームレス同然なみすぼらしい姿での再登場と相成ったのでした。

かつてはFBIの捜査官でありながら、現在は元ヴィランという輝かしいとは言い難い過去を持ったバーニーですが、子どもの頃にクリントに飛び道具での攻撃(第1章で描かれたコイン飛ばし)や喧嘩の仕方などを教えたのもこの兄貴。
暴力的な父だったとはいえ、突然両親を失ったクリントの精神的な支えになったのもこの兄貴なんです。
今また精神的に弱っているクリントの前にタイミングよく現れて、クリントが奮い立つきっかけを与えてくれた男。
ここで前述したクリントの回想が描かれる演出もホロリと来る。
この最終巻ではバーニー・バートンの名脇役っぷりにも是非注目して欲しい。

◆感想
ホークアイ最終決戦

この最終巻で解決したのはあくまで1巻から続いてきたアパートの地上げ問題で、結局ジャージ軍団のボスとの対決には至らず、それどころか最後の最後に新たな戦いへの伏線が張られるため、思っていたほど完全勝利!ハッピーエンド!ってなスッキリした終わり方ではない。

でもまあこの辺は今後他のライターが新しいストーリーを展開できるようにあえて作っておいた“ネタ”であるし、本作でこれまでの巻で描写されてきた様々な伏線は綺麗に回収されて、主役のホークアイだけでなく色々な脇役たちにもカッコいい見せ場が用意されているわけですから、マーベルコミックスが存在する限り半永久的にストーリーが続いていくメインストリームのシリーズとしてはこれ以上ない大団円だったと思います。
ちなみに最終話#22の制作はかなり難航を極めたらしく、何度も何度も発売延期が繰り返されたんだとか。
結果新シリーズの『All-New Hawkeye』が第4シリーズ最終話発売を待たずスタートしちゃったという事実だけでももうその難産っぷりが窺い知れる。

最後の最後まで徹底してスーパーヒーローやスーパーヴィランが殆ど関わってこず、舞台をあえてニューヨークのとあるアパートの周辺に絞った小さめのスケールで人々との交流を描き、常人ヒーロー“ホークアイ”の活躍を見せ続けてくれたスタンスがもうホント良かった。
とにかく完訳おめでとう&ありがとうございました!めっちゃ面白いシリーズでしたよ!
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