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21 2016

ジェローム・シーゲル&ジョー・シャスター他/DCコミックス アンソロジー

DCコミックスアンソロジー表紙

“ようこそ、多面的にして、多起源、多次元の宇宙ユニバースへ……。
 この宇宙が生まれたのは1930年代、世界恐慌まっただなかのアメリカ。
 初々しい作家たちが老練の編集者たちとともに、
 その基礎を少しずつ作り上げていった。
 この宇宙は、1930年代の世界恐慌から生まれると、
 さまざまな時代を通じて発展を遂げ、
 ついには世界中の大衆文化に深く根を下ろすにいたったのだ”


DCコミックスアンソロジー
映画に登場するDCヒーローたちの起源オリジンがわかるエピソード16選!!
バットマン・スーパーマン・ワンダーウーマンなど歴代キャラクター
そしてジャスティス・リーグの起源オリジンを知る


◆収録作品

1939年06月:Superman #1
1941年12月:All-Star Comics #8
1948年06月:Batman #47
1957年05月:World's Finest #88
1961年09月:Flash #123
1962年02月:Justice League of America #9
1965年10月:Green Lantern Vol.2 #40
1971年06月:Batman #232
1984年10月:Superman #400
1986年   :Tales of the Green Lantern Corps Annual #2
1988年05月:Action Comics #600
1997年09月:JLA Secret Files and Origins #1
2002年   :CASE STUDY
『バットマン:ブラック&ホワイト2』収録の描き下ろし短編。
2007年08月:Green Lantern: Sinestro Corps Special
2010年08月:Wonder Woman #600
2011年08月:Justice League Vol.2 #1


◆CREATING MYTHS(神話の創造)
スーパーマン第1話2014年にパイインターナショナルという出版社から、『バットマン アンソロジー』というフランスで刊行されたバットマン単行本の邦訳本が発売されましたが、DCコミックスの作品を原作とする実写映画がどんどん発表されて盛り上がっているこのタイミングで、またも別のアンソロジーが邦訳される事となりました。
それが本書、『DCコミックス アンソロジー』!!

本書もバットマンアンソロジーと同じくフランスのアーバン・コミックスという出版社から刊行されたものを底本としており、初期作品から現在までに発表された中から様々なエピソードをチョイスし、丁寧なコラムを合間合間に挟んだ構成となっております。
バットマンアンソロジーの時もそうだったんだけど、このコラムがほんと読み応えあって面白いんだ。当時の時代背景とか、DCコミックスの編集方針などといった裏話を絡めつつ、作品解説もしっかり挟んでいて実にスキがない。

ルーサーとジョーカーが手を組むエピソードそして今回収録された16エピソードなんですけど、1939年のスーパーマン#1や、ワンダーウーマンの歴史的初登場となる1941年のオールスターコミックス#8など、DCコミックスを代表するヒーローたちの一回読んでみたかったクラシックな作品や、現在も第一線で活躍している人気ライター、アラン・ムーア、グラント・モリソン、ジェフ・ジョーンズなどといった方々が手がけた80年代~00年代のエピソードなども収録されていてほんとナイスチョイスと言った感じ。
ただ個人的に気になってるアクアマンがメインのエピソードが全然無いのがちょっと寂しかったり(小声)。彼もジャスティス・リーグの一員なんだけどなぁ。
まあそれはそれとして僕、ゴールデンエイジやシルバーエイジの時代に描かれた、ある程度シリアスを含みつつもどこかゆるい雰囲気があるエピソードが結構好きなんですよ。

上で画像を引用した1957年のワールズ・ファイネストコミックス#88は、かたやスーパーマンの宿敵、かたやバットマンの宿敵である「ルーサーとジョーカーが手を組む」という、今でなら恐ろしい事態になる事が容易に想像できるすごいシチュエーションのエピソード。
刑期を終えて釈放された二人は更生した事をアピールするためにメカメノンというロボットを開発して新事業を始めるのですが、どうしても心を入れ替えたとは信じられないスーパーマンとバットマンは警戒してルーサーとジョーカーの行動を逐一チェック。
不審な動きを見せる度に彼らを捕まえようとするのですが、その度にメカメノンの性能テストをしているだけだとのらりくらりと回避され、すっかり面目をつぶされてしまうのです。
どこかでボロを出すのではないかとあれこれ策を練るスーパーマンとバットマンの姿、そしてそれを読んでルーサーとジョーカーが「真の目的」を悟られないようさらに裏をかいていくという、一切血が流れないヒーローとヴィランの化かし合いな一編なんですね。
こんなんシリアスなストーリーが展開していく今の本編ではまずやらない。現在は狂気の殺人者であるジョーカーがこの時期はおどけたキャラの泥棒というのも今見ると逆に新鮮で楽しい。

二人のフラッシュ、二人のグリーンランタンあとこれ、新旧フラッシュと新旧グリーンランタンが共演するこれまたクラシックなエピソードね!
特に1961年のフラッシュ#123は、今では当たり前のように描かれている「パラレルワールド」の人物同士が邂逅するという歴史的にも重要なエピソードで、本エピソードのライター、ガードナー・フォックスによるフラッシュ(バリー・アレン)が別の地球のフラッシュ(ジェイ・ギャリック)と出会うというアイディアが、後にDCユニバースという世界観設定を創りだす事に繋がっていくという超重要回。それもあってこのエピソードは何度も再販されてきたのだとか。
今回収録された新旧グリーンランタンの共演エピソード、1965年のグリーンランタン#40は初邂逅エピというわけではないですが、互いの地球を行き来してクローナというヴィランによる、地球どころか宇宙全体が崩壊するかもしれない危険な計画を阻止するスケールのデカい戦いが描かれていてこれも面白いです。
宇宙崩壊の危機という、普通なら一大クロスオーバーイベントとして数話かけて展開しそうなシチュエーションを1話でやりきっちゃう贅沢さと話のテンポの良さがもうね。堪んないよね。

なんでもかんでも収録エピソードの紹介をしているとキリが無いので、個人的に一番ツボだったエピソードを最後に紹介。
ライターはアラン・ムーア、アートはケビン・オニールの1986年の作品、グリーンランタン・コァ・アニュアル#2です。
ハルにリングを受け渡して死亡した前任のグリーンランタン、アビン・サーを主役としたエピソードなのですがなんか雰囲気がクトゥルフ物の短編っぽいというか……オニールの緻密なアートで描かれる悪魔たちの造形も不安感を煽ってくる。

クトゥルフものっぽい雰囲気

立入禁止区域に指定されている災厄の惑星・イスモールトに難破船が漂着した事を知り、危険を顧みずこの惑星に降り立ったアビン・サー。
悪魔たちはアビン・サーの心をかき乱そうとさまざまな言葉を投げかけてくる……
アビン・サーは宇宙船が致命的な故障を起こしたことで地球に不時着し、ハルを新たな後継者としてパワーリングを受け渡して死亡してしまう、ハルがグリーンランタンとなるオリジンに関わる重要キャラなのですが、そもそも彼は生身で宇宙を飛ぶ事が可能なパワーリングを所持していながら何故それを使わずに命を落としてしまったのか?という疑問に応えるホラーテイストな一編となっています。

◆感想
面白かった!
グリーンランタンやワンダーウーマン、フラッシュ、あと昔はともかく近年は邦訳の数がそんなに多くないスーパーマンなど、様々なヒーローのバラエティに富んだエピソードが堪能できるというのだけでも最高でした。

本記事では全然紹介しきれていないけど、上記以外にも面白いアイディアやシチュエーションのエピソードがてんこ盛りです。
スーパーマンが死亡して2万年の時が流れた世界を描く、どちらかと言えば挿絵付きの短編小説といった構成の1984年作品のスーパーマン#400や、顔に張り付くだけで対象を操ってしまうという宇宙からの恐ろしいヒトデ型の侵略者・スターロと戦うために、万一操られてしまった時のリスクも考慮してスーパーパワーを失った状態で立ち向かうジャスティス・リーグのエピソード、1997年のJLAシークレットファイルズ・アンド・オリジンズ#1など実に様々。

スーパーヒロイン大集合
スーパーヒロイン大集合!なワンダーウーマン#600

まあ案の定というか、過去に邦訳済みな作品もちょいちょい収録されているのですが、訳は別の出版社から刊行された分とは当然異なっているので見比べて楽しむのもアリかもしれない。
ただ今回の翻訳者はヴィレッジブックスでアメコミの翻訳に携わっている石川祐人氏と秋友克也氏なため、最後に収録されている2011年の『ジャスティス・リーグ#1』だけは『NEW52:ジャスティス・リーグ』の時の翻訳がそのまま流用されています。
(でも何故かハルの「コウモリの仮装~」の台詞だけ新しくなってた)
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2 Comments

久仁彦  

ゴールデン・シルバーエイジに興味津々なのでご褒美みたいな一冊でした。
それ以外でも気になっていた話が日本語で読めたのが僥倖でした。
これが画風そのものがコミックス・コードに引っかかったというケビン・オニールの『タイガース』か…。

パイ・インターナショナルさんは小プロともヴィレッジとも違う方向の邦訳本を出してくれるので
これからも応援していきたいですねー。

2016/03/21 (Mon) 16:41 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>久仁彦さん
>これからも応援していきたいですねー。
パイ・インターナショナルさんの公式ツイッターによると「日本でさらにDCコミックスへの理解、人気を高めていきたい」というDC本社の意向で出版された本なんですって。
今後もなにかしら邦訳を考えているっぽいので期待が高まります。
調べてみたら他にも色々アンソロシリーズがあるみたいなんで、この中から出たりするのかな?

http://www.urban-comics.com/collection/dc-anthologie/

個人的にはスーパーヴィランズアンソロジーが読みたい!

2016/03/24 (Thu) 19:41 | EDIT | REPLY |   

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