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13 2015

ポール・ジェンキンス&ラモン・バックス他/フロントライン:シビル・ウォー BOOK1

フロントラインシビルウォー表紙
『期限の日の午前零時、
 私を含めた少数のニューヨーク市民は内戦の開幕を目撃する事になった。
 多くの人々はまだ認識していないようだったが。
 登録法には支持する声と、反対する声との両方があった。
 そしてその全員が、最新の法律が厳格に暴力的に執行される様子に畏怖を抱いた。
 この状況に至った理由は活発に議論されるだろう。
 だが執行者に疑問を呈する者は誰もいない。
 手遅れになる時まで。
 バンシーのように叫ぶサリー・フロイドの姿が印象に残っている。
 そして、火薬とオゾンの臭いと、救急車のサイレンが響く中…
 空挺隊員は音もなくてきぱきと作業を進め、蝙蝠の様に飛び去った。
 私は考えていた。“この代償を支払うのは誰なのか?”
 “我々だ”』

WHOSE SIDE ARE YOU ON?

スタンフォードを見舞った未曾有の悲劇に、人々は“超人”と共存する事の意味を改めて思い知った。

“我々は歩く大量破壊兵器と共に暮らしているのだ”

人々を包む不安はやがて「超人登録法」へと結実していく。

超人と常人に新たな境界線が引かれた今、合衆国は如何に変容していくのか…。

「シビル・ウォー」をジャーナリストら、一般人の視点から描いた意欲作、第一部スタート!

君はどちらに付く?


◆収録作品

2006年08月:Civil War: Front Line #1
2006年08月:Civil War: Front Line #2
2006年09月:Civil War: Front Line #3
2006年09月:Civil War: Front Line #4
2006年10月:Civil War: Front Line #5
2006年11月:Civil War: Front Line #6


◆関連作品過去記事
【シビル・ウォー】

◆SHOW THE FLAG
シビル・ウォー:クロスオーバーも第1期から数えて本作でとうとう11冊目……
今回邦訳されたタイインは、全11話とシビル・ウォー:クロスオーバーの中でも最長のエピソードとなる『フロントライン:シビル・ウォー』、その第1巻となります。

主役となるのはヒーローではなくあえての一般人
スパイダーマンなどでよく登場する新聞社、デイリー・ビューグルに勤める辣腕記者ベン・ユーリックと、左翼系アングラ紙『オルタナティブ』にて「元ミュータント日記」を連載している若手コラムニスト、サリー・フロイドの2名。
ベンはデアデビルの盟友であり、『デアデビル:ボーン・アゲイン』という作品での活躍が印象的な人物ではありますが、単なる一般人をヒーローコミックの主役に据えるにはどうしても地味な印象を受けちゃいます……
ですが本作、個人的にはシビル・ウォー:クロスオーバーの中でもトップクラスに面白いタイインだと思います。

本作では派手なバトルシーンはほぼ存在しないのですが、それを補って余りあるのが、二人の記者の目を通して描かれる超人登録法と内戦に振り回されるヒーロー達の秀逸な人間ドラマ。
それに加えて他にも3本のエピソードが並行して展開していき、シビル・ウォーのストーリーを大きく肉付けしております。
特に注目なのが、「シビル・ウォー」のきっかけを作り、なおかつ多大な犠牲者を出しながら一人だけ生き残ってしまったヒーロー、スピードボールのその後のエピソード。
さっそくストーリーを紹介!

◆EMBEDDED(組み込まれたもの)
微力ながら記者として、超人登録法の不当性を世界に訴えかける記事を制作する覚悟を決めた記者、サリー・フロイド。
一方、上司ジョナ・ジェイムションが登録法支持者であるために、サリーと同じく登録法の危険性に気づきながらも法案の通過を支持する記事を執筆しなければいけない立場にある記者、ベン・ユーリック。

上司の命令は絶対

ベンは会社の指示に従い、登録法の強力な推進者であるアイアンマンの記者会見に参加、またリード・リチャーズに対するインタビューも行っていた。
リードによれば、登録法こそがアメリカの自滅の道を防ぐ唯一の道であるのだという。
ベンは彼がこれまでのデータから予測した5年後の犯罪数の状況を見せてもらい、様々な統計を絡めて登録法による平和への道を滾々と説明されたのだが、それでも懸念が晴れることは無かった。

「あなたにこんな事を言うのも滑稽ですけど、野球をご存知なら統計もご存知ですよね?
 私には今この国が、統計だけを根拠に動く野球チームに見えるんです。
 勝てるわけがないでしょう?
 状況によって世論は揺れ動くし空気も変わります」

「単純化し過ぎだよベン」
「あなたが正しい事を祈ります。私自身は、世論を数値化できるとか、数字は嘘をつかないとかいう言葉は…馬鹿げてると思ってますけどね」

一方サリーは独自に地下に潜伏するレジスタンス組織「反登録法アンダーグラウンド」のメンバーに接触し、個人を特定する形では使わないこと、そして公平な立場から意見を発信することを約束してインタビューを行った。

しかしマイナーヒーローだらけな光景だ

こうしてレジスタンス組織の活動を見守りつつ、自分なりに登録法を批判する記事を執筆し続けるサリー。
登録法によりヒーロー達の状況が悪化していくのを見てみぬ振りができない彼女は、今度は“この法案で現状得をするのは誰なのか?”という線を辿り、登録法を巡る事態の核心に迫ろうとするのだったが……

◆THE ACEEUSED(非難を受ける者)
コネチカット州スタンフォードに潜伏しているビランを一網打尽にするため、若きヒーローチーム「ニューウォリアーズ」はそのアジトを急襲、さらには自分たちが活躍しているその光景をTVのリアリティ番組で放映していた。
しかし焦ったビランの一人、ナイトロが自らの能力を使って大爆発を起こし、付近の小学校の自動を含む612人の犠牲者を出す大きな悲劇を引き起こす結果となってしまった。

ヒーローチーム「ニューウォリアーズ」の面々もこの爆発に巻き込まれ、全員が死亡したと思われていたのだが……メンバーの一人であるスピードボールことロバート・ボールドウィンだけが自分の持つエネルギーフィールドの効果で遠くにふっ飛ばされ、かつ爆発の衝撃を体内に取り込んで変換……その結果スーパーパワーは失ってしまったものの、奇跡的に命を落とさずに済んでいたのだった。

だが、かろうじて生存したスピードボールを待ち受けていたのは死よりも辛い過酷な運命だった。
唯一生き残ったヒーローとなったことで、世間の非難はスピードボール一人に集中してしまっていたのだ。
今の彼は人気ヒーロー、スピードボールではなく、罪のない小学校の児童60人を死亡させた、子供殺しのロバート・ボールドウィンなのである。

シールドに逮捕され、「超人登録法に従って登録を行えば君と仲間達がスタンフォードで行った犯罪への処罰を免除される」という取引を持ちかけられるスピードボール。
だが彼は「自分の活動は合法的なものであり、あれは単なる事故だったんだ」とこれを拒否。
登録をするという事はあの悲劇が事故ではなく、自分が原因で612名もの犠牲者を出してしまったのだと認めてしまう事になるからだ。
政府からの妥協案を蹴ったスピードボール。
こうしてかつての人気ヒーローは、今やただの犯罪者として合衆国刑務所に収監されてしまう……

子供殺しのスピードボール

◆感想
本作はこれまで刊行された邦訳シビル・ウォー:クロスオーバーの中でも、最も本編ストーリーを丁寧に補完している作品だと思う。
そもそも本編はヒーロー同士の殴り合いがメインすぎて超人登録法や内戦と向き合っていく描写が弱すぎる為に基本タイインの方が面白くなっちゃってるんだけども(小声)

上記で紹介した他にも現実の戦争の歴史をシビル・ウォーの展開に擬えて描いた短編(タイトルは未設定)、シビル・ウォーの影で人間社会に潜伏していたアトランティス人の行動を描く「SLEEPER CELL(潜伏分子)」という短編も収録。
この両方も少しつづストーリーが進行していくため続きが気になる……

本編以上に政治色を強めた、アクション要素薄めという一見地味なコンセプトの作品だけどここまでグイグイ引き込まれるとは。
ヒーローという立場から一気に転落したスピードボール編は是非読んて欲しい。本編では超人登録法施行のきっかけを作った重要人物の一人なのに、作中では一切彼の動向について触れられていませんでしたからね。
面白いアプローチな一作だし早く2巻を発送して欲しいな!
(2巻の発送は来年2月予定)

フロントラインシビルウォー裏表紙
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