ツルゴアXXX

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28 2020

コリアタウン殺人事件

コリアタウン殺人事件予告編コリアタウン殺人事件
【原題】Murder Death Koreatown 2020年【米】


殺人事件の調査に迫る奇妙なファウンド・フッテージ。隣人の実生活での殺人事件に対する男の好奇心は陰謀への狂気と落ちていく。

***

2020年3月頃(?)にAmazonプライムビデオ限定で突如配信された謎の映画であり、監督の名前も出演者情報も「わからない」と公式に記述されているファウンド・フッテージ作品。
ファウンド・フッテージとは『さも実際に起った出来事』のように描くモキュメンタリーの一つであり、撮影者が失踪し埋もれていた映像……という設定の作品を指す言葉です。

2017年にロサンゼルスのコリアタウンでタエ・クゥアン・サンという男性が自分の妻に殺害されるという殺人事件が起こり、事件に不可解な物を感じた失業中である主人公の男性はスマホのカメラを片手に近所で聞き込み調査を続けていく。
いわゆるサスペンス映画のような作りですが、物語が進むにつれ主人公は何故かこの殺人事件に強く固執するようになり、上映20分を過ぎたあたりから街のラクガキを見て「これは自分に向けられたメッセージだ」と本気で思い込んだり、事件の被害者であるタエがそもそも無関係であるはずの主人公に夢で介入してきていると主張しだしたりと、主人公の聞き込み調査に答える通りすがりの人たちもその異様さに心配な顔を向けたり、失業中の主人公を支えるパートナーもこの殺人事件に何故か入れ込む姿にだんだん愛情を失っていく始末。
この『コリアタウン殺人事件』はサスペンス映画ではなく、一人の人間が突如として精神のバランスを欠いていく怖さをじっくりと描いていく映画なのであります。

一個人が手軽に動画配信が可能になったこの現代。現実にも探してみると明らかに統合失調症を患っている零細youtuberが支離滅裂な陰謀論などを一人で呟きながら街に繰り出していくような動画も普通に存在しているため、本作のコンセプトは着眼点としても新鮮で、かつかなりリアリティがある。
ネット上には統合失調症を患った人の文章や動画がそこかしこにありますが、それを覗いてしまった時の薄気味悪さと不気味さに近い作りです。

でも本作の怖い点は「一人の人間が壊れていく」という部分だけではありません。
まず本作が公開される以前、2019年の5月頃に海外の画像掲示板『4chan』にて「連絡が途絶えた大学時代の友人から小包が届いた」という謎のスレッドが立てられたという出来事があり、これがまた本作の恐怖感を煽っています。
POVホラーの名作『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』でも公開前、まるで実際に失踪者が出ているかのような広告を打ち出して話題作りを行っていましたが、こちらは後で鑑賞した人に見つけ出してもらう&気づいてもらう事に期待した手法なのが独特。
【/x/ - Paranormal » Thread #22642318】

そして一番怖いのが、本作で扱われている殺人事件は『2017年に実際に起こったもの』という点です。
もう被害者や加害者の名前でちょっとググるとワラワラ出てくる。事件当時の2017年のニュースや、その後2018年に裁判が行われたニュースが確認できます。これらは話題作りのためのフェイクニュースかと思いきや、普通にちゃんとしたニュースメディアで扱われているのだから訳がわからない。
【Wife Murders Husband in Koreatown | The Korea Daily】
【Prosecutors Argue Newlywed Killed Husband for Playing Video Games, Working Too Much – NBC Los Angeles】
【Woman convicted of husband murder in LA's Koreatown】
【Woman Sentenced for Killing Husband in Koreatown | Los Angeles County District Attorney's Office】

本作にはわざわざBGMが用意されていたり、「映画としての盛り上げどころ」みたいな作りもあってフィクションである事は明白なはずなんですが、他のモキュメンタリー作品のようにリアル感を出しているとかじゃなくほんの3年前に起こった実在の事件を取り扱っている事と、低予算な作りを逆手に取り、映像としての構成が雑でなおかつBGMも用意しちゃってる作りがむしろ「本当に頭がおかしくなった素人が生み出した産物」という感じを醸し出しており、鑑賞後に「これってひょっとしてガチなやつなんじゃ……?」という不安感を抱かせる事に成功させています。
「でもこれって結局はフィクションだからね」という感想を持たせず、どうしても「本物」という疑念が拭えなくなるのが実に怖い。
ファウンド・フッテージもので、ここまでフィクションと現実の境界を曖昧にさせてくるその手腕は凄まじい。

ちなみに物語の終盤にはもう一捻り展開が起こり、壊れているように見える主人公が実は核心に近づいていると思わせる描写が挟まれていきます。
とにかくホラー映画としては新感覚の作品でした。ファウンド・フッテージ作品の例に漏れず低予算にもほどがある映像だし、雰囲気にノレなければ退屈の極みかもしれないので人を選ぶ映画ではあるかもしれませんが、「新しいタイプの恐怖」を味わいたい方には是非おすすめしたい一作です。

バットマンラストナイト・オン・アース表紙

「いい加減にしなさい!まったく…現実を直視しなさい!
 よく見なさい!あなたが傷つけた人々の姿を!」

「…」
「あなたを助けている人々のありのままの姿をよく見なさい」
「嘘だ…これは真実じゃ…」
「これが真実です。
 ここの医者は…認知行動療法士も理学療法士もあなたの味方です。
 彼らは日々あなたの身を案じているのに、
 あなたは「バットマン」という妄想劇の中で彼らをヴィランとして認識している。
 でも、あなたはバットマンじゃない。ハッド先生はジョーカーじゃない。
 お願いです。真実を見てください」


宿敵に導かれ、バットマンの最後の旅が始まる……

20年後の未来、アーカム・アサイラムで永い眠りから覚醒したブルース・ウェイン
目覚めた彼は若いままで、一度も“バットマンになったことがなかった”
失われた自身の過去の謎を解き明かすために、闇の騎士は未知の世界へ旅立つ。
宿敵ジョーカーに導かれながら……。
長年『バットマン』を手掛けてきた名コンビ、
スコット・スナイダーグレッグ・カプロが贈る、バットマンの最後の物語

この奇妙な旅路の果てに待ち受ける、想像を絶する強敵とは……


◆関連作品過去記事
【バットマン:梟の法廷】
【バットマン:梟の街】
【バットマン:梟の夜】
【バットマン:喪われた絆】
【ジョーカー:喪われた絆〈上・下〉】
【バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街】
【バットマン:ゼロイヤー 暗黒の街】
【バットマン:エターナル<上>】
【バットマン:エターナル<下>】
【バットマン:真夜中の事件簿】
【バットマン:エンドゲーム】
【バットマン:スーパーヘヴィ】
【バットマン:ブルーム】
【バットマン:エピローグ】
【オールスター・バットマン:ワースト・エネミー】
【オールスター・バットマン:エンド・オブ・アース】
【オールスター・バットマン:ファースト・アライ】

◆収録作品

2019年07月:Batman: Last Knight on Earth #1
2019年09月:Batman: Last Knight on Earth #2
2020年02月:Batman: Last Knight on Earth #3


◆ And... he's never been Batman.
アメコミの人気ヒーローの物語は、真の意味での最終回が描かれることはない。

シリーズが完結した際には物語の一つの区切りが描かれたりはするけれど、後任のライターに引き継げるように新たな伏線を用意したりだとか、後任が新たなエピソードを書く際に大きな制限が出すぎないようシリーズ内で作られた設定をある程度元に戻したりだとか、兎にも角にも次の担当にバトンを渡しやすくして半永久的にストーリーが紡がれていく代物なのです。

しかし、そんなアメコミのシリーズでも時系列を大きく進めたり、『最後の冒険』を描いたりする方法があります。
それは……エルスワールド物という体を取ること!!
本作『バットマン:ラストナイト・オン・アース』DCブラックレーベルからの刊行でエルスワールドという設定で描かれてはいるものの、バットマン第2シリーズを手掛けてきたスコット・スナイダー&グレッグ・カプロコンビによるバットマンサーガの要素を盛り込んでストーリーが展開されていく“最後の物語”なのです!!!

ちなみに本作、当初はスナイダーが第2シリーズ完結後に全3巻で展開した『オールスター・バットマン』の最後のエピソードとして予定されていたものであり、また2017年時点での発表ではアートはカプロではなくショーン・マーフィーを起用する予定だった模様で、タイトルも『バットマン:ラストナイト』というものでした。
【SNYDER & MURPHY Reunite for BATMAN: THE LAST KNIGHT】

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それではそろそろ本作の内容を紹介。
とはいえ掴みがインパクト大で、この後も「そういうことだったのか……」という展開が目白押しな本作。
物語が進むたびに少しずつ謎が判明していく構成なのもあって序盤の展開だけでもあらすじを書きすぎるとネタバレだらけになっちゃうので、触れるのは物語の冒頭も冒頭な部分だけにしておきます。

『バットマン:ラストナイト・オン・アース』は、これまで続いてきたバットマンの戦いの日々の全てが、精神病院アーカム・アサイラムに収容された一人の青年……ブルース・ウェインの妄想だったという衝撃的な掴みからスタート。
ブルースが長く囚われていた妄想から数年ぶりに正気に戻った事を喜び、主人を出迎えるアルフレッド。
アルフレッドはブルースが「バットマン」という妄想劇に囚われて自分の両親を殺害し、また己を救おうとしている医師たちを「ヴィラン」と認識し、今日まで周囲の人々を傷つけ続けていたという真相を滾々と説明するのであった。

精神病患者ブルース・ウェイン

しかしブルースには、自分の見ている本当の世界が精神病院の中でしか無かったことを受け入れられない。
「バットマン」としてこの世界のどこかに綻びが無いか必死にヒントを探すが、これまでのバットマンの日々が自分の妄想であった事を裏付ける証拠が見つかるばかりであった。
そしてあくる日、面会に来たアルフレッドが、ブルースが身に付けていたというカウルを見せる。
そのカウルは最新技術がそこかしこに用いられた戦闘用スーツなどではなくただの拘禁服。マスクもショック療法に使用されていた拘束道具でしかなかった……。

***

どういう話の流れかの詳細は省きますが、この後バットマンは生首だけになって生存していたジョーカーと運命の再会を果たし、自身の記憶とこの世界の謎を解き明かすための冒険の旅を二人で始めるというストーリーにシフトしていきます。
スナイダーはバットマン第2シリーズを終始『バットマンとジョーカーの物語』に費やしていましたが(やや誇張)、この最終章ではとうとうバットマンとジョーカーにチームアップさせちゃうというあたり、氏のバトジョに対するアツい想いと本気度を感じる。

本作のジョーカーはバットマンの「ロビン(漏瓶)」になれてずっとウキウキしてますし、自分が実質現ロビンなことを事あるごとにアピールしていて、過去作のような狂気感溢れるセリフ回しはやや控えめ。本作のエグいくらいのシリアス展開の中で、ユーモラスな言動をしまくるコメディリリーフ的な立ち位置を獲得しております。もはや『ラストナイト・オン・アース』中の一服の清涼剤。

もうとにかくバッツ好き好きムーヴが全開になっていて、『バトジョは公式が最大手』なのを再確認できましたね……。
っていうか本作で出てくるルーサーとスーパーマンの話もそういう目で見るとそういう感じに見えてくるからヤバい。尖ったシチュエーションの高品質BLしかない……。
とはいえ終盤にジョーカーの口から語られる、ある事件の真相は相変わらず「最悪!」の一言ですが。

相棒になれてウキウキのジョーカー
「バットマンと俺は未知の領域へと旅立つ…二人で一緒に最後の冒険へと…」

◆感想
めっちゃくちゃ面白かった……!!!!!

正史世界だとまず描けない、大胆すぎる衝撃展開ラッシュには本当にクラクラさせられました。
本作の黒幕である謎の人物『オメガ』の正体は、エルスワールド物なんで正史ではまずありえない人選なのは想像が付きますし、誰が来ても「なるほどそう来たかー」という感想になると思うのですが、パラレルな世界観な事を差し引いてもその正体にはかなり驚かされると思う。
でもスナイダーの『バットマン・メタル』を読んでると、『オメガ』の正体がアイツというのも納得ではある……。
※正体の目星が付くかも知れないので一応反転。

ジョー・チルとバットマン

関連作品過去記事にスナイダーが手掛けたバットマン第2シリーズ全巻(+エターナル)と、実質第2シリーズの続編である『オールスター・バットマン』全3巻を挙げていますが、一応言うとこの過去作を全部読んでいないと楽しめない……というわけではないです。
ただ、それでも本作は過去のスナイダーバットマンの要素をそこかしこに散りばめている作りであり、読んでおくと過去作の展開をいかに丁寧に混ぜ込んでいるのかが把握しやすい内容。

第2シリーズが未見であってもシンプルに衝撃展開のエルスワールド物として楽しめますが、事前に読み込んでいれば『真の意味でのスナイダーバットマン最終回』としてより深く物語に没頭できる一作となっているのです。実際中盤からの展開は『バットマン:ブルーム』以降で登場した、スナイダーバットマンサーガの重要な要素である「装置」の話を知っていないとやや唐突に感じるかも。
だから個人的にはスナイダーバットマンを全部履修した上で本作に臨んでほしい……!

あとついでに言うと、本作は現在邦訳版が刊行中のスナイダージャスティス・リーグの物語が『最悪な方向に進んでしまった場合の世界』といった側面もかなり強いので、こちらも事前に読んでおくと絶対面白くなります(どんどん鑑賞ハードルが上がっていく)
【ジャスティス・リーグ:ノー・ジャスティス】
【ジャスティス・リーグ:新たなる正義】
【ジャスティス・リーグ:神々の墓所】
【ジャスティス・リーグ:偽りの帝国】
【ジャスティス・リーグ:正義の代償】