ツルゴアXXX

ARTICLE PAGE

16 2019

スコット・スナイダー&ジョック他/オールスター・バットマン:エンド・オブ・アース

オールスター・バットマンエンド・オブ・アース表紙

“違うぞ、お前のために見せてやったのだ。
 世界の終末として起こりうる3つのシナリオを。天変地異。疾病。自己愛。
 いずれかの道で、世界は終わったかもしれん。1年…遅くとも5年以内に。
 だが今夜、私が第4の道で終わらせてやる”


これはバットマンの物語ではない。ヴィランの物語だ!

ミスター・フリーズが太古の恐るべき細菌を解き放った!
奔走するバットマンは、ポイズン・アイビーやマッドハッターといった旧敵との対決を強いられる。
人里離れたアラスカの凍原にある研究施設から、ネバダの砂漠、深南部の沼沢地しょうたくちまで、バットマンはアメリカ大陸を股に掛け、災厄の連鎖を食い止める方法を探す。
やがてブルース・ウェインのたどる糸が事件の元凶を明らかにし、アメリカの首都でバットマンとデューク・トーマスの命を懸けた戦いの幕が開ける。事件の背後に、全人類の運命に関わる恐るべき巨悪の陰謀が隠されていたのだ!


◆収録作品

2017年03月:All-Star Batman #6
2017年04月:All-Star Batman #7
2017年05月:All-Star Batman #8
2017年06月:All-Star Batman #9


◆関連作品過去記事
【バットマン:梟の街】
【バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街】
【バットマン:ゼロイヤー 暗黒の街】
【バットマン:スーパーヘヴィ】
【オールスター・バットマン:ワースト・エネミー】

◆バットマン、アメリカ転戦
バットマン第2シリーズを手がけたスコット・スナイダーがライターを務め、ゴッサムシティではなくアメリカ全土を舞台にし、様々なヴィランが登場する『オールスター』っぷりを楽しめるシリーズ……それが『オールスター・バットマン』!!
その邦訳第2巻『オールスター・バットマン:エンド・オブ・アース』のレビューです。

今回収録の『終末への道』というエピソードは全4話構成で、各エピソードごとに対面するヴィランが異なり、前巻とは違い担当アーティストもエピソード毎に変わるという作り。

第1話のメインヴィランはミスター・フリーズ。戦いの舞台はアラスカ。
『ノーラと幸せに過ごす』という最大の目的を果たすため、冷凍睡眠をしていた人々を無理矢理起こして悪事を働かせ、それで得た資金を元に、現在冷凍睡眠中のノーラの難病を治療する研究を進めていく。
だがこの世界は人間があまりに増えすぎ、破滅に向かおうとしている。
そんな世界に彼女を目覚めさせてはいけないと考えたフリーズは、危険な細菌が眠っている氷柱を解き放ち、自分とノーラ、そして配下となったごく少数の人々だけで新たな世界を生きようと目論むが、バットマンはフリーズの目論見につけ込んだ『別の集団』による策謀がある事を突き止め、まずはフリーズの凶行を止めるために行動する……というお話。

フリーズが解き放った冷凍睡眠の人々は実際は冷凍睡眠には失敗してゾンビのような存在と化しており、呻きながらバットマンを襲うその光景はなかなかのホラー。ジョックによるセンスフルなアートがまたそのストーリー展開に非常にマッチしております。

冷凍睡眠していたゾンビたち

ちなみにミスター・フリーズのニュー52以降の新オリジン、そして『妻の』ノーラについては『バットマン:梟の街』収録の短編『FIRST SNOW』で語られており、コレがまた狂気を感じる怖くて面白いエピソードに仕上がっているので、気になる方は是非こちらもチェックしてほしい。

第2話のメインヴィランはポイズン・アイビー。物語の舞台となるのはデスバレー、ネバダ州境。
アートを担当するのはテュラ・ロテイという方。
フリーズがばらまいた太古の細菌に感染した少女、リリス・セグロを救うため、バットマンはアイビーに協力を仰ぐというエピソードなのですが、アイビーは自身の化学知識ですぐさまバットマンの真意を見抜く……という内容。
シンプルにアイビーとの共闘展開も見どころなんですが、それ以上にもの悲しさを感じさせる展開、そしてバットマンがアイビーからの最後の言葉を受けて、今回の大事件の解決を改めて決意したと思わせられる締めくくり方が秀逸な一編です。

第3話のメインヴィランはマッドハッター。戦いの舞台はミシシッピ・デルタ。
アートはジュセッペ・カムンコリが担当。
フリーズの事件を引き起こし、そして今は存在しない部隊『ブラックホークス』を用いて調査を妨害する黒幕はマッドハッターと推理したバットマンは、ハッターの屋敷に乗り込んで事件の真実を吐かせようとするが、彼は武器である特殊な帽子を用いて精神を操作。バットマンは狂気の世界に飲み込まれてしまう……というエピソード。

マッドハッターが見せる狂気の世界
マッドハッターの帽子による狂った脳内世界で使われているフォントは、
全体を通して原書で使われているものに寄せられておりなかなか凝っている

ここで描かれるシーンはあくまでハッターに見せられている幻覚なんですが、『これまでのバットマンの活躍は精神を病んだブルース青年の妄想だった』というシーンは嘘とわかっていても結構ショッキングな描写だったり……。

ところで作中の描写では、『マッドハッターはバットマンの正体がブルース・ウェインであると知っている』かのように取れるんですが、これ実際のところどうなんでしょうね?マッドハッターと対面してすぐ精神操作されたからバットマンの脳が混乱していただけなのか、本当にハッターは正体を知っているのか……。マッドハッター有識者の方がいたら教えて欲しい。

そして最終話である第4話では、舞台をワシントンDCに移していよいよ事件の真の黒幕が判明、前3話の展開を的確に絡めてラストバトルを盛り上げてくれます。
黒幕との決着の付け方が実に秀逸で、『これはバットマンの物語ではない。ヴィランの物語だ!』という本書の帯の宣伝文句を逆手に取った展開とバットマンのセリフが最高にアツい!!

◆感想
第1話、第3話はセリフの多くがモノローグで構成されており、コミックというよりは『絵のついた小説』というべき構成なのが印象的。
スナイダーが書く物語はカッコいいアクションなどといったわかりやすいエンタメでなく、各登場人物同士の秀逸な掛け合いや人間ドラマを全面に押し出していくタイプの作家なのだと改めて思いました。

ちなみに本書後半は前巻に引き続き、『オールスター・バットマン』誌のバックアップ連載となっていたデューク・トーマスメインの短編『呪われた輪』が最終話まで収録されています。
アートはフランチェスコ・フランカビラが担当しており、ヴィランとしてリドラースーパーヘヴィ編の『アイツ』が登場。バットマン第2シリーズの『ゼロイヤー』編、そして『スーパーヘヴィ』編のアフターストーリーともいえる物語に仕上がっています。

デュークとリドラー

この第2巻では各ヴィランの掘り下げだけに終わらず、デュークの成長譚、そしてスナイダーが手がける作品の伏線やDCユニバース全体に関わる展開の伏線も色々張られています(本作では正体不明の特殊部隊だった『ブラックホークス』に関しては『バットマン・メタル』で回収済)
そして最終巻となる第3巻『オールスター・バットマン:ファースト・アライ』は5月23日に発売とのこと。今から期待が高まる……!!
関連記事

2 Comments

No Name  

ファースト・アライは五月に邦訳出ますよ

2019/03/16 (Sat) 15:44 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>No Nameさん
あ!?ホントだいつの間に告知が…!文章を修正しました。ありがとうございます!!
http://books.shopro.co.jp/?news=shopro-books-2019-%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97

2019/03/16 (Sat) 16:21 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment