ツルゴアXXX

ひっそりと運営しているチラシの裏ブログ。

バットマンブルーム表紙

「僕は…僕はバット…」
「あの…ここに座っても?」
「は、はい、どうぞ。すみません。ちょっと…」
「一人で考え事を?時々ここに来るのを見かけましたよ」
「ええ…この近くで事故に遭ったもので」
「へぇ、偶然ですね。僕もなんです」


ジム・ゴードンが追い詰められるとき、
ついにコウモリの翼がゴッサムに舞い戻る!

ジョーカーとの決死の戦いのあと、記憶を失ったブルース・ウェインは、かつてない幸福のなかで過ごしていた。美しい女性の傍らで、ゴッサムの愛すべき子供たちを支援する活動に従事していたのだ。
しかし、時折もう一つの人生が脳裏をよぎる。暴力と暗黒に覆われながらも、市民から称えられていた過去の自分の姿が――。今、“バットマン”がブルースを呼ぶ声が聞こえる。果たして彼は、過去の姿を取り戻すのか?愛する女性と築き上げた、完璧な、そして幸福な自分の人生を捨ててまで。


◆関連作品過去記事
【バットマン:梟の法廷】
【バットマン:梟の街】
【バットマン:梟の夜】
【バットマン:喪われた絆】
【ジョーカー:喪われた絆〈上・下〉】
【バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街】
【バットマン:ゼロイヤー 暗黒の街】
【バットマン:真夜中の事件簿】
【バットマン:エンドゲーム】
【バットマン:スーパーヘヴィ】

◆収録作品

2014年03月:Detective Comics Vol.2 #27
2016年01月:Batman Vol.2 #46
2016年02月:Batman Vol.2 #47
2016年03月:Batman Vol.2 #48
2016年04月:Batman Vol.2 #49
2016年05月:Batman Vol.2 #50


◆This city is about to die. Happy Tuesday!
記憶を失った事でバットマンとしての使命感もなくなり、一人の人間としての幸せを掴んだブルース・ウェイン。
だが、“バットマン”になれるのはやはりブルース・ウェインただ一人なのだ。
心に迷いが生じ、ジョーカーとの最終決戦の場となった広場のベンチで思い悩むブルース。
そこに、あのジョーカーとの戦いに巻き込まれた被害者だという『見知らぬ白スーツの男』が現れ、ブルースに声をかける……

白スーツの男との会話

『スーパーヘヴィ』編完結となるスナイダーバットマン第9巻『バットマン:ブルーム』。
スナイダーバットマンのストーリーもいよいよ本巻でクライマックスです。

犯罪者に“種”なるスーパーパワーを与える装置をばら撒き、ゴッサムを混乱の渦に叩き込みはじめた謎のヴィラン、ミスター・ブルーム。
新バットマンとなったゴードンは長い調査と戦闘の末、ようやくブルームを捕らえることに成功した……と思われたが、彼の撒いた“種”は想像以上に街に広がっていた……彼は単独で動いていたわけではなく、同じようなマスクをした仲間が複数存在していたのだ。
さらに力を与える“種”を1000個街に隠した事を、ミスター・ブルームはゴッサム市民に触れ回る。

「隣人を愛しているか?いや、憎んでいるだろう?向こうも同じだ。あいづちにお追従……違うだろう?悪態を付け!ののしれ!
そうだ。言ってやれ。罵倒しろ。不法にここに住む連中のおかげで、税金が跳ね上がるんだ。もしお前が不法にここに住む者なら、祖国を台なしにしたうえに、追い出そうとする奴らを毒づけ。
こう言ってみろ! “自分以外、地獄に落ちればいい” どうせこの街はあらかじめ階級で分けられている。枯れゆく花々が肥やしだ。だからこれ以上、人生をムダにするな。はした金で満足するな。巨人の世界に足を踏み入れて、自分の取り分をいただけ!
滅ぶべきものは滅びるに任せろ。代わりにすばらしい何かを育てればいい」


ブルームの演説は、ゴッサムでの人生に不満を持つ市民の心を大きく揺さぶった。
ゴッサムは“種”の力を求める市民らの奪い合いで荒れはじめ、種の力を得た市民が暴れまわる地獄と化した。
街の危機を知り、急いで恋人のジュリーや大切な子どもたちのいる児童館に戻るブルースだったが、子どもの一人がブルームの種の力を使ってしまい……

『ヒーローの復活』というのは元来“熱いもの”だと思うのだけれど、こと本作のバットマンの復活譚は切なさも大きい。

“バットマン”であれば食い止められたはずの悲劇が目の前で起こった事で、ブルース・ウェインはバットマンに戻る事を決意する。
しかし執事のアルフレッドは“バットマン”が死に、「犯罪通りに足を踏み入れなかった」ブルース・ウェイン……自分が待ち望んていた姿となった主の新しい人生を壊させまいと、必死に考え直すよう説得する。

ブルース・ウェインを殺させるわけにはいかない

アルフレッドに感情移入すればするほど辛いシーンなので非常に涙腺に来る……
この画像のアルフレッドの台詞にある“機械”ってのがブルースが『もしもの時』を想定して開発しておいた代物なんだけど、バットマンという存在を永遠のものにするためにここまでの準備をしていたのかと思うと、使命感や正義感の強さ云々というよりはもはや狂気に近いものを感じる。

本書の巻末にはスーパーヘヴィ編よりも結構前に描かれた、バットマン75周年記念号である2014年の『Detective Comics Vol.2 #27』収録のスナイダーによる短編が入っているのだけれどこれがその“装置”を題材にした内容になっており、「こんな早い段階からスーパーヘヴィ編の伏線を張っていたのか」と驚かされます。
さすがにストーリーはパラレル的な扱いだとは思うけども。

◆感想
最高だった……
「もはや信者の意見じゃないか」と言われようとも、スナイダーバットマンはこれまで刊行されてきた邦訳アメコミの中でも頭一つ抜けて面白い作品だと断言できる。
もう……もうほんとすっげえよこのコミック……
アルフレッドとの会話も屈指の名シーンだし、「白スーツの男」との会話も素晴らしすぎるし、若干モリソンみのある演出なバットマン復活の流れも最高だった。

ブルームVSバットマン最後の戦い
スナイダーバットマン最後のヴィランであるブルームは、
生活レベルの格差があまりに大きいゴッサムの市民の不満や悪意の代弁者というのが味わい深い
彼の“種”に手を出した市民の多くはブルームの意見に同調したわけで、
ブルームとの戦いはある意味「ゴッサムシティとの戦い」でもあると思う

スナイダーバットマンは来月発売の『バットマン:エピローグ』がいよいよ最終巻。
スナイダーによるバットマンの一大叙事詩がどのように締めくくられるのか、今から楽しみ。
ザ・ボーイズ第2巻表紙

「あいつらを救おうってのか?バカか?ストリッパーに恋するなって言うだろ?」
「そんなんじゃない。僕たちが扱う対象にならないように、
 彼らがあそこから抜け出せる方法を見つけられたらって言ってるだけだ。
 だって他のGチームみたいなクズ野郎じゃない。
 もし僕たちがゴドルキンに手を出すことになっても、ウィズは何も悪いことしてない。
 ねぇ、これは情報収集が目的だよね?僕は探偵じゃないけど…」

「よーくわかってるじゃないか!」
「えっ、なんだよ?」
「からかっただけだ。おまえはテックナイトやスインギングの時、上手くやった。
 直観に従いたいならそうしろ。ただし気をつけろ。
 そして忘れるな。おまえがあのガキどもをいい奴らだと思っても…
 ヒーローはいつだってヒーローだ。いいか?」


THERE WILL BE BLOOD

コスチュームを着たヒーローが空を飛び、マスクをつけたヴィジランテ(自警団)たちが夜を徘徊する世界では、彼らがヤリすぎないよう誰かが見張っていなければならない。そこに登場したのが「ザ・ボーイズ」だ――ビリー・ブッチャー、ウィー・ヒューイ、マザーズ・ミルク、フレンチマン、フィーメール、彼らは今日も“スーパーヒーローどものご乱行”に目を光らせる!

「Good For The Soul」:誰もが言いたいことを胸のうちに抱えている――フレンチとフィーメールはマフィア相手によからぬことを企み、マザーズ・ミルクは母親に会い、アニー・ジャニュアリーは神と話をしたいと思い、ブッチャーはCIAディレクターのレイナーといつものゾッとする密会を楽しんでいた。レジェンドは、ボーイズについてヒューイが知りたがっていることをすべて話そうと申し出たが、ヒューイがまずしなければならないのは、ゾンビとのお散歩だった…

「I Tell You No Lie, G.I.」:秘密が暴露される――第二次世界大戦以降、ヴォート・アメリカンが行ってきたアメリカ国家に対するスーパーヒーローを使った計略が、その汚い手口、怪しげな取引、秘密工作のすべてと共についに明らかになったのだ。一方ボーイズは、スーパーヒーロー・チームのセブンが犯した最悪の失敗の現場で彼らと直接会っていた。あらゆる秘密の中で最も醜い秘密は、それほど遠い昔ではない9月のある朝、ニューヨーク市で起こっていた…

「We Gotta Go Now」:Gメン――それは、追放者、不良、反逆者、アウトサイダー、そして世界で最も利益を生むスーパーヒーロー。しかし謎めいたジョン・ゴドルキンのもとに集うはみだし者たちのチームGメンにとって、すべてが順調というわけではなかった。オリジナル・メンバーのひとりシルバー・キンケイドが、公衆の面前でグロテスクな方法で自殺したのだ。人気商品であるGメンと共に、Gフォース、Gコースト、Gスタイル、Gウィズ、Gブリッツ、GノマドらGメンマンションに探りを入れるのは危険が大きすぎる。マンションの闇の中にどんな秘密が待っているのか誰も知らないからだ…ボーイズは無理をしてでもその闇を探る決意を固める。


◆収録作品

2008年02月:The BOYS #15
2008年03月:The BOYS #16
2008年04月:The BOYS #17
2008年05月:The BOYS #18
2008年06月:The BOYS #19
2008年07月:The BOYS #20
2008年08月:The BOYS #21
2008年09月:The BOYS #22
2008年10月:The BOYS #23
2008年11月:The BOYS #24
2008年12月:The BOYS #25
2009年01月:The BOYS #26
2009年02月:The BOYS #27
2009年03月:The BOYS #28
2009年04月:The BOYS #29
2009年05月:The BOYS #30


◆関連作品過去記事
【ザ・ボーイズ BOOK ONE】

◆RODEO FUCK
映画『アニマル・ハウス』のポスターのパロディになっている賑やかなカバーアートが目を引く、ガース・エニスのオリジナル作品『ザ・ボーイズ』の邦訳第2巻!!

このアートだけ見ると「コミカルな雰囲気のヒーロー物かな?」って印象だけど、中身は露悪的なまでのヒーローアンチっぷりとネジが外れているレベルのブラックユーモアが満載のドギツい内容。他社の(過激すぎる)アメコミパロもたっぷり!それでいて伏線は丁寧に張り、なおかつきっちりシリアスな要素とハードボイルド要素を絶妙なバランスで盛り込んでいる、ガース・エニスの一度ハマると抜け出せなくなる作風の魅力がたっぷり詰まったコミックなのだ!!

「Good For The Soul」は前巻でヒューイが不可抗力で殺してしまったヒーロー、ティーンエイジ・キクスのブラーニーコックがゾンビとして復活するお話。
ヒーロー物のアメコミでは「ヒーローが死から復活する」というのがお約束になってるけども、それをかなりエグい形でパロった一編に仕上がっています。
ヒーローらが摂取している化合物Vは脳に残留する事があるため、その状態で死亡すれば蘇生する事が可能……なのですが、心まで蘇生する事は不可能なため単なるゾンビと化してしまう。
ティーンエイジ・キクスがPRも兼ねて奇跡の復活を遂げた仲間を披露するために記者会見を開こうとしている事を知ったブッチャーは、「ボーイズが殺した者は生き返らない」という事を示すため、ヒューイにもう一度ブラーニーコックを始末する仕事を与えるのだった……

ゾンビ化したブラーニーコック

やっとの思いで加入できた憧れのヒーローチーム、セブンの腐敗しきった内情を知って絶望したスターライトことアニーと、片や恋人をヒーローの手で殺されボーイズに加入するも殺人する側に回って精神的に参りつつあるヒューイの二人の仲がどんどんと深まっていったり、マフィアのボスからとある殺しの仕事を受けたフィーメールがターゲットの家族団欒の様を見て一瞬迷いが生じ、フレンチマンが彼女の暴力衝動を押さえ込む役割を担ったり、マザーズ・ミルクのコードネームの由来にほんのり触れる一幕があったりなど、ボーイズの面々の掘り下げが多いエピソードでもあります。

「I Tell You No Lie, G.I.」はボーイズの協力者であるレジェンドがヴォート・アメリカンの実態について語る、『ザ・ボーイズ』の世界観に深く踏み込む重要回。
ヴォート・アメリカンは第二次世界大戦から存在する企業であり、当時は『コンソリデーテッド・ヴォート・アメリカン』という名でビジネスを優先して粗悪な兵器を売りつけては無駄に兵士の命を散らしてきたクソ会社であった。しかし商談やコネ作りには長けていたのか、調達委員会や合衆国戦争省、議会などとの繋がりは強い。
それでもロバート・ケネディ上院議員の追及によりヴォートの株は暴落、ついに倒産と相成ったのだが……その数年後、ヴォートのチームが化合物Vという薬品を作り出し、『ヒーローを生み出す』という得意分野を開拓。
『ヒーローを武器化する』というビジネスに鞍替えし、マスコミ受けの良い「オリジン」を設定した“偉大なる最強のヒーローチーム”『セブン』を結成、さらに政府側にヴォートの息がかかった人間を潜り込ませることでヴォート・アメリカンは完全に復活したのだった……

こちらのエピソードのエグいところはあの同時多発テロをパロった一幕が盛り込まれている点。
ハイジャックされた飛行機から乗客を救い出すために無理やりセブンを実戦投入したという回想があるのですが、その流れがもうゾッとする。
確かにヒーローチーム、セブンの面々には普通の人間にはないスーパーパワーがある。
しかし彼らはハイジャックや人質事件への対処方法、そして飛行機そのものの知識はまるで持ち合わせていないのだ。

無計画にハイジャック犯を全滅させたホームランダー

飛行機内に入ろうと無理やり窓をこじ開けたために子どもを外に吹き飛ばしてしまったり、四方八方から助けを求める乗客の声に苛立って怒鳴った結果乗客の耳を潰してしまったり、フロントガラスを破ったことで気流が流れ込み機内に暴風が吹き荒れたり、考えなしにハイジャック犯を全滅させた結果操縦できるパイロットが居なくなったりなど地獄のような光景が延々と続く飛行機内。
リーダーであるホームランダーが最終的に取った行動は……是非本編で。なんかもう変な笑いがこみ上げてくる。

「We Gotta Go Now」あからさまにX-MENのパロディキャラが登場しまくるエピソード。
派生チームがやたらめったら多いという点まで共通してる徹底っぷり。
しかし中身はX-MENの悪趣味パロディで終わるような内容ではありません。

今もっとも金を稼いでいる『Gメン』は、ジョン・ゴドルキンという男のアイディアによって作られたヒーローチーム。
家出少年&少女、アウトサイダー、貧民地区出身の子供たちといった面々で構成されており、能力を持った子供たちを権力の迫害から救うことを目的としたチームなのだ。
まあ当然これも大衆向けの設定で実際は金持ちじゃない奴はおらず、権力と戦うというのもやりすぎた時にヴォートの弁護人に保釈してもらうというだけなんだけど。

そんなGメンのメンバーであるシルバー・キンケイドが突如自身のスーパーパワーで自殺を図った。
ボーイズはGメンの闇を探るため、下部チームである『Gウィズ』にヒューイを潜入させ、Gの集まりでゴドルキンの家を訪れる際に盗聴器を仕掛けさせる任務を与えるというお話。
ただGウィズと行動を共にしているうちに気のいい性格のメンバーと親しくなり、「Gウィズはちゃんと育てられてこなったから限度を知らないだけで悪い奴らじゃない」事を知ったヒューイは彼らが他のヒーローチームのようになってしまう前に救えないか模索するようになる。
そして調査を勧めていくうちに、Gメンマンションの闇が明らかになっていく……

Gメンのゴドルキン

『ザ・ボーイズ』世界のヒーローたちは間違いなく変態でかつスーパーパワーを私欲に使うクソなんだけど、ヴォートにいいように利用されている被害者でもあるってのが肝だと思う。
「We Gotta Go Now」のエピローグである「Rodeo Fuck」冒頭のやるせなさは凄い。

◆感想
2巻も面白かった!!!
『ウォッチメン』や『キック・アス』とはまた違う視点からヒーローが現実に存在する世界を描くこの『ザ・ボーイズ』はもうとことん露悪的なお話なんだけど、やっぱり読み始めると止まらない。

ただ前巻から気になってたんだけどザ・ボーイズの世界、ヴィランの影が異様に薄いですね……
1巻の1話やテックナイト回とかを見る限り存在はしてるはずなんだけどいかんせんヒーローのゲスさが際立っててヴィランが台頭してる感がまるでない。本巻の作中でも「ヒーローのほうがヴィランより多い」とは語られてるけども。
ヒーローの方が多いその理由も、「圧倒的な力で世界征服なんかするよりも法律の枠の中で生活した方が快適で、社会の中で旨みを楽しめる現状を維持したほうが得だから」というのが生々しい。
今後のエピソードでヴィランがフィーチャーされる回はあるのかな?

あ、あとこの2巻からはオルタメイトカバーやピンナップギャラリーが収録されているのですが、そのアーティストの中には『ウォッチメン』のデイブ・ギボンズや『X-MEN』のジム・リー、そして『ヒットマン』のジョン・マクリアなどといった豪華な顔ぶれがボーイズの面々を描き下ろしております。これも必見!

ジム・リー画ブッチャー
ジム・リー画ビリー・ブッチャー
どことなくパニッシャーがロキをボコっている場面に見えなくもない

続く第3巻は今年の秋に発売予定だとか。正直かなりニッチ需要な邦訳だろうに順調に続きを刊行してくれるのはありがたすぎる。